
吉川晃司は路地が好きだ。例えば表参道を例にとっても、「あれってキレイなの? 俺からすると全然そうは思えない。なんかハリボテが服着てる感じがして、自分が歩くなら絶対その裏がいいね」。裏道や路地には、表通りにはない独特の匂いがある。坂につけられた名前ひとつ、看板ひとつ。無言のうちに何かを語っている雰囲気が吉川の興味をひきつける。吉川と場所の話をすると、「あそこの裏の道知ってる? すごくおいしいコーヒー豆を売ってる店があって、最近はずっとそこで豆を買ってる。うまいよー。今度、教えるよ」「あそこの商店街に魚屋があるでしょ。豆腐屋の並びに。そこに住んでるなら魚はそういうとこで買わなきゃ。いい魚売ってるよ。俺、何度も見てるから知ってる」など、本当の旨さにこだわる食情報を教えられることもある。「あそこの川でザリガニが捕れるの。ほんとだって、これ、見て」と、携帯の写メールで撮ったザリガニの写真を見せてくれたりもした。ザリガニ捕りの方法は伝統的な「サキイカで釣り上げ」方式。吉川のこだわりは細かい。「この河童(銅像)、なんか背中に哀愁があっていいんだよね。この河童が好きで親水公園には何度も行ってる。ここから歩いて行ける所にうまいコーヒー屋があるの、俺にとっては東京で一番くらいにうまいコーヒー屋」「東京にもお地蔵さんがたくさん残ってるの知ってる? 歩いてると結構見つけるよ。ビルの間に挟まれたりしちゃってるけど、見つけたら5円玉の賽銭を置いてしまうよ、たぶん間違ってるとは思うんだけど。それから神社を見つけたら必ず寄ってみるんだ。そういうとこって、なんか違う風が吹いてるような気がして、そこに立ってから例えば1週間、自分に猶予をもらえるような気がする」。吉川が歩いた路地裏に印をつけたら、きっと面白い東京地図ができるに違いない。題して『東京路地裏ダイヤモンド』マップ!
「都内だけでも1万キロはゆうに越えてるからねえ〜穴場知ってるぞー! 乞うご期待!」
作家・中上健二は、路地にこだわり、路地から見えるものを探し、すぐれた文学を残した。路地には個性があり、人情があり、反骨がある。次回からこのコラムでは『蘭心竹生・第2章』として、東京の原点に戻り、吉川晃司の“路地歩き旅”エッセイを掲載します。東京23区の1区1カ所をめぐっても合計23カ所。しかし東京は広く、場所によってさまざまな顔があり、まだまだ知らない魅力的な路地もあるはず。
TOKYO HEADLINEでは、吉川の路地歩きスタートに際し、東京の路地情報を募集します。すべての場所をカバーすることはできませんが、寄せられた情報を参考にさせていただき、別途『東京路地情報』も提供していければと考えています。未開拓の情報、吉川に見せたい景色など、とっておきの情報を提供してください。第一回は港区を予定しています。
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