いろんな意味で見逃せない作品 劇団桟敷童子『その恋、覚え無し』

2018.11.14 Vol.712
 桟敷童子は演出を務める東憲司が描く社会の底辺で生きる人々による骨太で猥雑な群像劇を、1週間から半月ほどの時間を費やし劇団員で作った大掛かりな舞台セットで“魅せる”劇団。  かつては東の生まれ育った炭鉱町や山間の集落をモチーフにしたごつごつとした作品が多かったのだが、最近は時には舞台を現代に置いたり、社会問題を扱ったりとさまざまなバリエーションの作品を発表。来年で結成20周年を迎えるのだが、常に進化し挑戦し続けている。  今回は劇団では初めての試みという「恋物語」に挑む。松本紀保、石村みか(てがみ座)という実力派の2人の女優を客演に迎え、劇団の看板女優である板垣桃子と3人の女優による華やかな競演が繰り広げられるのだが、果たしてどんな「恋物語」を見せてくれるのか。  ただその一方で劇団の真骨頂である「本水」を使った舞台美術は今回も健在。  パッと聞くとミスマッチにも聞こえる「恋物語」×「本水」の組み合わせ。これをしっかり融合させられるのは多分、桟敷童子だけかもしれない。いろんな意味で見逃せない作品。

【編集部オススメ舞台】劇団桟敷童子『標〜shirube〜』

2017.12.11 Vol.701
 劇団桟敷童子は手作りの大掛かりなセットと骨太で猥雑な群集劇に定評がある。  その物語は演出の東憲司が生まれ育った炭鉱町や山間の集落を舞台としたものが多く、絶望や陰鬱とした出来事に直面しながらも「それでも生きていく」という人間の強さだったり、性といったものを描き切る。  今回は東の得意とする因習・風習といった非現実的な要素に、戦争によって引き裂かれた愛する人を待ち続ける人々という現実的な要素を融合。戦争のもたらした悲劇にもがき苦しみながらも一縷の望みを残し懸命に生きる人々の姿を怒り、悲しみ、喜び、そしておかしみといったさまざまな感情を交えながら描く。  東はこれまで演劇集団円で2作品の作・演出を担当。そのときに主演を務めた朴璐美が今回は東のホームに参戦。朴の繊細さ、可憐さが桟敷童子の世界観とどう融合するのかも見もの。
【日時】12月12日(火)〜25日(月)(開演は12〜14・21日19時、15・19・22・25日14時、16・23日13時/18時、17・24日13時、18・20日14時/19時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】すみだパークスタジオ倉(錦糸町) 【料金】指定席 一律3800円/自由席(予約番号順に入場)前売一般3500円、前売学割3300円(要・学生証)/墨田区民割引3300円(要・証明書)/当日券 一律3800円/割引day(12・13日19時の回)2800円(全席自由。前売り当日とも一律2800円) 【問い合わせ】劇団桟敷童子(TEL:03-3375-8288 [HP] http://www.sajikidouji.com/ ) 【作】サジキドウジ(東憲司) 【演出】東憲司 【出演】朴璐美/板垣桃子、原口健太郎、稲葉能敬、鈴木めぐみ、外山博美、川原洋子、もりちえ、新井結香、大手忍、深津紀暁、升田茂、内野友満、丹野奏恵、柴田林太郎、三村晃弘/石原由宇(演劇集団円)、平野潤也(演劇集団円)、山本亘

劇団初の平成が舞台の現代劇 劇団桟敷童子『夏に死す』

2016.07.25 Vol.671
 これまで社会の底辺で生きるような人々を描いた群像劇を多く発表してきた劇団桟敷童子。舞台は演出の東憲司自身が生まれ育った炭鉱町や山間の集落、荒々しくもちょっと気の弱い男たちに、耐え忍びながらも芯の強い女たちといった登場人物が織りなす物語は、昭和の日本の原風景を見るようなノスタルジックさを漂わせながらも、時代が変わっても変わらない人間の本質を映し出す。  そんな彼らの世界観はそのままに、今回は劇団公演初めての平成が舞台の現代劇に挑む。テーマは家族。  病院から失踪していた痴呆症の父親が自宅から20分ほどの山の中で2年ぶりに見つかった。父親は自然農園で保護されており、そこに向かった三兄妹は物乞いのように別人となっていた父親と出会う。しかし三兄妹には、痴呆を患っているのになぜ2年間も山の中で生活できたのか? なぜ家に帰ろうとしなかったのか? 本当に痴呆症だったのか?といったさまざまな疑問が浮かぶ。そしてやがて兄妹たちが知らなかった父親の別の一面が見えてくるのだった。  人はその終焉をどのように迎えるのか。そしてその時の家族の振る舞いは…。演出の東憲司の実体験を基にした、どこの家庭にでも起こりうる身近で切実な家族の物語。

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