最高のキャストが揃ったKAAT神奈川芸術劇場プロデュース『セールスマンの死』

2018.10.18 Vol.711

 KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督を務める白井晃が最も信頼する劇作家・演出家の一人である長塚圭史が同劇場プロデュース公演で2作目の演出作品を手掛ける。長塚は自らの作品はもちろん、三好十郎、ハロルド・ピンターといった近代戯曲を取り上げることも多く、昨年は同劇場でイタリアの作家ルイージ・ピランロッテの『作者を探す六人の登場人物』を上演し、好評を得た。  今回、長塚が手掛けるのはアーサー・ミラーの『セールスマンの死』。テネシー・ウィリアムズとともにアメリカ現代演劇の旗手と呼ばれるアーサー・ミラーの地位を確立した代表作だ。  主人公に風間杜夫、その妻に片平なぎさ。長塚は「風間さんが出演してくださらなかったら、今『セールスマンの死』を上演することはなかった」といい、片平についても「前からお仕事をご一緒したかった」と最高のキャストが揃ったという印象。  風間もこれまで演じてきた役とは大きく異なることから「役者としての力量だけではなく人間そのものが問われる時に来たような気がして、いささか身が震える」とこの作品に臨む決意を見せている。

演劇界の次世代をリードする2人が奇跡の邂逅 ーー前川知大(作)× 長塚圭史(演出)

2017.07.29 Vol.695
この夏、Bunkamuraシアターコクーンで上演される舞台『プレイヤー』で作・前川知大、演出・長塚圭史というとても興味深い組み合わせが実現する。ほぼ同い年で次代の演劇界をけん引するであろう2人に作品のこと、お互いのことについて聞いた。
演劇界は出身校やワークショップでのつながりといったさまざまな要素で関係の近い劇団とか濃い人間関係というものがあったりする。そういったことがきっかけで思わぬ客演が実現したり、というのも演劇ファンのひとつの楽しみだ。そういう観点でみると、この2人がタッグを組むと聞いて「ああ、こういう組み合わせがあるんだ!」と思った人も多かっただろう。

■前川「他人の演出している現場は行く機会がないので興味深い」
ーーもともと2人の接点というものは? 前川知大(以下、前川):作品を見て、楽屋に挨拶にうかがう、というくらいしかありませんでした。それをするまでも随分時間はかかっていますけど。でも長塚さんの作品はずっと見ていました。 ーー具体的にはどのへんの作品から? 前川:僕が劇場に見に行ったのは再演の『イヌの日』からかな。そのころは長塚さんは阿佐ヶ谷スパイダースばかりではなく、プロデュース公演もがんがんやっていた時でした」 長塚圭史(以下、長塚):僕がイキウメの作品を見るようになったのは小島聖さんが出演していた『眠りのともだち』という作品から。あれはいつごろですか? 前川:2008年ですね。 長塚:『イヌの日』の再演は2006年だから、だいたい10年くらい前ですね。 ーーこうやって1つの作品を作ることになった2人だが、長塚は1996年、21歳の時に阿佐ヶ谷スパイダースを旗揚げ。前川は2003年、29歳の時にイキウメを旗揚げとスタートにはずいぶんタイムラグがある。 前川:旗揚げが29歳の時。演劇自体はその2年前くらいから始めていたんですが、それまではあまり演劇活動はしていなかったんです。だから演劇界にあまり友達がいない (笑)。 長塚:そんなことないでしょ(笑)。 前川:いや、本当にあまり付き合いがないんですよ。ハイバイの岩井(秀人)君くらいだと思う。同じ2003年に旗揚げで同い年。なんとなくお互いに作品を見る機会があって、うちの浜田(信也)がハイバイの初期によく出させてもらったこともありました。本当にそれくらい。 ーー2人はその後、特に接点を持つこともなく今回まで? 長塚「僕はイキウメ自体は、最初に見たときはそんなに繰り返し見るようにはならなかったんですが、この5〜6年は7割くらいは見ていると思います。年に2本くらいやっていますよね。公演数が多いので全部には行けていないんですが、年に1回は見ています。好きなので」 ■長塚圭史を演出に選んだワケ
ーー今回は、同世代の作家・演出家の顔合わせというのが企画の始まりだったとのことだが…。 長塚:僕の印象だと前川さんの作品でというのが先に決まっていたと思います。 前川:そうだったかもしれないです。作・演出ではなく作だけでという話をいただいて、そして誰と組みたいかという話があって、“では長塚さんにお願いしたいです”という流れでした。 ーーどういう理由で長塚圭史の名を? 前川:ここ最近、いろいろな作家さんの作品の演出をやっていらっしゃるんですが、そういう作品を見ていて面白いと思いました。それで自分の作品を委ねてみたいと思いました。 長塚:前川さんは明らかに作家性の高い演劇人だと思うし、最近の僕はどちらかというと演出をする率が高いから必然的にこうなったという気はします。 ーー前川は2014年に『太陽2068』という作品で蜷川幸雄さんの演出を経験したことがある。あの時とはやはりプレッシャーといったものは全然違う? 前川:そういうところはあります。脚本の準備段階から長塚さんとはディスカッションをしてきましたし、稽古に入ってからも意見交換をしながらやっていますので。 ーー準備期間が1年間あったという。 前川:いろいろなアイデアが出て、いろいろ変わっていきましたよね。 長塚:そうですね。変化していきました。 ーーその中でイキウメで初演した『PLAYER』をやろうということになったのは? 前川「夏だから怖い話をしようということになって(笑)。最初はそれくらいの発想でした」 ■『プレイヤー』は“怖い話以上の怖さ”を描いている
ーーこの作品を劇中劇にという発想は? 前川:これは長塚さんから出てきたアイデア。台本を読んで、これをどう伝えるか。伝え方という部分、演出に直結するアイデアなんかは打ち合わせの中からですね。 ーー話していく中で響きあうものがあった? 長塚:『PLAYER』は作品自体が死者を演じるというか、プレイする、再生するというお話だったので、演劇との直結を感じました。一般人の人たちが巻き込まれていくという要素がこの作品にはあるんですが、その物語性だけで押そうとするとシアターコクーンというサイズになると難しいような気がしたんです。演出家というのはそのための装置を投げかけるのが役割。その装置の規模をどれくらいにするかということなども含めてですね。 それで劇中劇というアイデアを出したら、前川さんがすぐに乗ってくれたし興味を示してくれたので、そこからどんどん話が進んでいきました。でも別に劇中劇をどうしてもやりたかったというわけではないんです。プレイヤーという作品に最適なものを探っていくという作業の中で劇中劇にたどりついたということでした。 ーー前川は劇中劇というアイデアを聞いてどう思ったのか。 前川:もともとあるオカルト話みたいなものに、演劇的な手法によって、お客さんが何を見ているのか分からなくなるような、そういう不安感のような怖さがもう一つ乗っかるので、それはすごく面白い構成になるなと思いました。怖い話以上の怖さ、本当に不安にさせるようなものが出るんだろうな、と思って、すぐに乗りましたよね。 ーー死者の言葉が、生きている人間を通して「再生」されるという設定。こう文字にすると、「ん?」と思う人も多いだろう。それくらい演出は大変そうだ。 長塚:みんなに言われます。“これどうやってやるの?”とか“このシーン、どうするの?”って(笑)。 前川:そんなに?(笑)。 ーー初演時もそういう苦労はあった? 前川:それはね…確かにめちゃくちゃ大変でした。でもその時よりはうまく書けているんじゃないかなって思っているんですけど(笑)。 ■良い脚本を描くために集まったキャスト陣
長塚:全体的にいいチームが集まったと思います。稽古も面白くやれている。僕自身は一緒にやったことのない人たちばかりなんですが、わざとそういう人たちを集めたところもあります。フェアな感じにしたかったから。前川さんの作品に慣れている仲村トオルさんと安井順平さんも面白いキャスティングです。2人が直接、前川さんとやりとりすることはあるだろうけど、基本的には演出の僕を通すわけだから、まあちょっと奇妙でユニークなバランスが生まれるんじゃないかと。 ーーキャスティングに関しても2人の希望が通ったという感じ? 長塚:キャストに関しては僕のほうが候補をあげて、前川さんに話をするという形で進みました。前川さんは“気の合う人でやっちゃっていいですよ”と言ってくれたんですが、前川さんが面白く脚本を書けるかどうかということが重要だったので、わりと細かく“これでいい?”ということは聞いたりしていました。そうすると“それだとイメージが広がるね”とか言ってくれて、ストーリーの軸自体はどんどんできていった。またそこにはまっていく俳優さんを制作側と僕が提案していった。 ーー仲村と安井の起用は、やはり前川作品を知る人が何人かいたほうがいいという考えから? 長塚:負荷がどちらにもかかっていいんじゃないかと思いました。僕自身の緊張感も高まるし、うまい関係性が取れれば2人からいろいろな話も聞けるし。

あの男たちが12年の時を経て帰ってきた 阿佐ヶ谷スパイダース『はたらくおとこ』

2016.10.22 Vol.677
 長塚圭史が主宰を務める「阿佐ヶ谷スパイダース」が今年で結成20周年を迎えた。  2009年の英国留学以降、長塚が外部のプロデュース公演を手掛けることが多くなり、また葛河思潮社という別のユニットを立ち上げ頻繁に公演を行っていたこともあったことから、阿佐ヶ谷スパイダースとしては3年ぶりの公演となる。  その英国留学を経て、長塚の作風が少々変わったこともあり、古いファンの中からは「たまには昔の作風のものも見たい」という声がかねてから上がっていた。そんな声に応えたのかどうかは分からないが、再演の声が最も高かった『はたらくおとこ』を今回再演することとなった。  初演は2004年。あれから12年経ったが、当時出演した8人の男たちがそっくりそのまま集まった。もっと言うと、印象的だった音響さんも一緒。物語も脚本を少々書き直した部分もあるが、基本的には一緒。  12年前をなぞるものになっても、あの時の面白さは色あせないだろうし、12年経った分の変化がコクとか味とか、俳優によってはアクとなって乗っかってくればそれはそれで刺激に満ちた作品になるだろうし。  どっちに転ぶにしても見応えのある作品。

長塚圭史×北村有起哉 『十一ぴきのネコ』が3年ぶりの再演! あのネコたちが劇場に帰ってくる!!

2015.09.14 Vol.650
2012年に長塚圭史の演出で上演された『十一ぴきのネコ』は井上ひさしが描いた子どもも楽しめる登場人物がネコだけのミュージカル。当時は長塚が初めて井上作品を演出する、ミュージカルを手掛けるのも初めてということも話題となった。3年の時を経て、あの11匹のネコたちが帰ってくる。長塚とリーダー格のネコ、にゃん太郎を演じる北村有起哉に話を聞く。

ピンターの作品を長塚圭史が手がける

2014.08.31 Vol.625
 阿佐ヶ谷スパイダースの長塚圭史のソロプロジェクトである葛河思潮社。立ち上げ以来、三好十郎の戯曲を上演してきたのだが、今回はハロルド・ピンターの『背信』を上演する。  ピンターはイギリスの劇作家で、映画の脚本も手がける。『フランス軍中尉の女』『日の名残り』と聞けば、ちょっとは身近な感じがするかもしれない。  彼の作品は表面上はシンプルな劇構造を取りながら、その内側に凝縮された強い圧力を持つ感情が秘められているといったもの。その作品を多く手がけるデヴィッド・ルヴォーに言わせると「ピンターの作品は日本で上演するのに適している」のだそうだ。 『背信』は1人の女と2人の男による不倫劇。劇が進むにつれて時間が逆行していくという構造を取る。観客には劇が進み、時間がさかのぼるにつれ結果に対するプロセスが提示されるのだが、その過程で「背信」という言葉の意味が揺らぎ始める…。

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