SearchSearch

2020年を控えた今の東京に微妙にシンクロ シアターコクーン・オンレパートリー2017+キューブ20th,2017『陥没』

2017.01.22 Vol.683

 Bunkamuraシアターコクーンで2009年に『東京月光魔曲』、2010年に『黴菌』と昭和の東京をモチーフとした作品を発表し、「昭和三部作」を目指したケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。なにしろ多忙の身とあって7年の月日が経ってしまったが、このたび待望の完結編となる3作目が上演されることとなった。

 第一弾では昭和初期、第二弾は昭和中期ときて、今回は昭和の東京オリンピックを目前に控えた時代が舞台。

 敗戦からわずかな年月で復活を遂げた日本にとって、東京オリンピックはその輝かしい成果を世界に示す晴れの舞台だった。スポーツ競技とは別のところで道路、さまざまな施設やビルの建設、新幹線など発展していく街の様子を誇らしく眺め、これを機に一攫千金をもくろみ、成功した者もいた。しかしその一方で、その時代、その場所に居合わせながら時流に乗り遅れた者たちもいた。この作品はそんなオリンピックとの因縁に翻弄される人々を描いた群像劇。

 2020年のオリンピックまであと3年となり、何かと騒がしい現在の東京。物語と現在が微妙にシンクロしなにやら妙な気分になりそう。

絶望とか鬱屈の先に何が見える!? ナイロン100℃ 43rd SESSION『消失』

2015.11.22 Vol.655

 2004年に初演されたKERAの最高傑作の一つともいわれる作品が、ナイロン100℃の大倉孝二、みのすけ、犬山イヌ子、三宅弘城、松永玲子に客演の八嶋智人というオリジナルメンバーが揃っての待望の再演。

 舞台は近未来の地球のどこか。もっというと、ひょっとしたらもう終わりかけているのかもしれない世界のどこか。時はクリスマスの夜から大晦日までのお話。クリスマスの夜にパーティーの計画を練る兄弟のもとに、弟が想いを寄せる女、謎の闇医者、兄弟の部屋を間借りしたいという女、ガスの点検に来たという男が訪れる。そして何かを失ってしまった6人によって、とりとめのない会話が繰り広げられる。

 前半こそ、いつものKERAらしい軽妙な空気で進んでいくのだが、後半にいくにしたがってシリアス度が増していき、やがてタイトルに込められた意味が徐々に分かってくる。

 KERAは「2004年当時はまだ世の中はマシだった。今のような弱ってしまっている状況でこんなに救いのない芝居を上演することはかなり酷であることは承知のうえでの再演」という。

 演ずる側、見る側とも意識も取り巻く状況も11年経って随分変わった。みんなが上演後にどんな感想を持つのか、興味深い作品だ。

Copyrighted Image