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「いかすぜ日本」~クールなJAPANを世界に売り込もう! 第五回 海外に「ウケル」2020年東京五輪開会式の心得

2015.11.08 Vol.654

 2020年東京五輪の開会式はクールジャパンを世界にアピールする絶好のチャンスです。JOCは全力を挙げて準備に取り掛かっていることでしょう。成功するために重要なのはアピールしたい相手、即ち「ターゲット」を明確にし、主催者側の自己満足に陥らないことです。国内では喜ばれたのに、海外では冷笑される可能性があるからです。

 2012年ロンドン五輪の開会式は200カ国で放送され、約9億人が視聴したそうです。芸術監督を務めたダニー・ボイル氏はアカデミー賞受賞経験がある映画監督ですが、開会式の演出を担当する上でイギリス文化や歴史を布石としつつ、人間性、ユーモア、ドラマ性などを表現することを心がけたとのこと。007でおなじみ、ボンド映画の風刺コントにエリザベス女王がヘリコプターでサプライズ出演したり、元ビートルズのポール・マッカートニーが8万人の観客とあの名曲、「ヘイ・ジュード」を大合唱したり、国内外の観客を魅了するいたりつくせりの内容でした。また、イギリスの植民地の歴史や、多くの自国民を犠牲にした産業革命についても反省的な演出を取り入れて世界を驚かせたのです。「反省=自虐」と日本では見なされる傾向があるようですが、ボイル氏はそれを見事に覆しました。その結果、国内はもちろん、国際批評も概ね好評で、欧米、インド、中国、ロシアなどの主要メディアでは肯定的に報道されました。世界のソーシャルメディアでも好意的なコメントが目立ちました。北京の開会式が「口パク」問題や国家権威などに拘ったとの国際報道に苦戦したのとは対照的ですね。普遍的なコミュニケーション能力に長けた、イギリス演劇の勝利と言えます。

 東京の開会式でもさっそくだれが芸術監督になるのか、どのアーティストが登場すべきか、議論が始まっています。どなたが演出を任され、どのアーティストが選抜されても注意してほしいのは日本を外から見据える視座です。自国を相対的に理解するには、日本と少し距離をおき、冷静かつ客観的に考察する術が不可欠だと言えます。

 マーケティング的に企画を練る際に重要なのは、コミュニケーションの対象とする方々から忌憚ない意見を頂戴することです。主な手法としてフォーカス・グループ・インタビューという定性調査があります。商品やサービスの対象消費者を集め、モデレーターをおいて「お茶会」のような雰囲気の場で見解を収集するのです。ターゲットの反応を見計らう有効な手段です。

 そこで提案。鎖国された環境で開会式の内容を決断するのではなく、開会式を見てもらう海外視聴者を対象にクールジャパンについてのフォーカス・グループ調査を実施してはいかがでしょうか? いくつかの開会式企画オプションを海外視点で分析するよい機会になるでしょう。

 ちなみに、JOCが実施した14万人以上を対象とした国内世論調査の結果、出演が期待されるアーティスト1位はサザン・オールスターズ、2位は嵐、7位にAKB48が入りました。AKB48をプロデュースした秋元康氏は2020年東京五輪組織委員会の理事を務めていますが、開会式における「JAPAN48」の出演には公私混合の立場から否定的だとしつつ、「違う方がプロデュースしていたら推薦するかも知れないけど」と発言しています。まんざらでもないようです。

 しかし、演出内容を後悔しないために、ぜひ、海外の皆様にも意見を聞いてもらい、世界に誇れる素晴らしい開会式になることを望みます!

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