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「ぽに」って?といったことも含め、諸々気になる作品 劇団た組『ぽに』

2021.10.21 Vol.746

 劇団た組は2013年に結成された、加藤拓也が脚本・演出を務める劇団。丁寧な言葉とドラマ運びで、底抜けた暴力性と虚無感がねっとりと複雑に立ち上がる物語を上演している。

 加藤は演劇ばかりではなく映像でも演出を担い、2018年にはフジテレビ『平成物語』でドラマ初脚本で市川森一脚本賞にノミネート。同年、日本映画専門チャンネル25周年記念の映像作家に選ばれ、2019年にはフジテレビ『不甲斐ないこの感性を愛してる』で再び市川森一脚本賞にノミネートされるなど幅広いフィールドで活躍している。

 2018年には演劇に不確定要素として実際のスポーツを持ち込んだ『貴方なら生き残れるわ』が大きな反響を呼び、映像が公開された時には1週間で1万回以上再生された。

 今回の作品は子供の預かりバイト中に大災害に巻き込まれた女性が「仕事とお金の責任の範囲」について思いを巡らす物語。置き去りにされた5歳の男児が一夜にして43歳の姿になってしまうというファンタジーというか、ちょっとした恐怖というか不思議な要素を含みながらも、その一方で生々しい物語が展開される。そもそも「ぽに」って?といったことも含め、諸々気になる作品だ。

そうそう見られない企画 ハイバイ『ワレワレのモロモロ東京編』

2016.11.27 Vol.679

 今回の公演は「俳優が自分の身に起きたことを書き、演じる」という異色番外公演。

 ハイバイはもともと主宰の岩井秀人が「自分がひどい目にあったこと」を中心に取材し、現実に起こっている「面白ひどいこと」を主な題材として作品を作ってきた。いわば「私小説」ならぬ「私演劇」。

 ドラマは日常に転がっている、とはよく言うが、まさにそれを実際に行ってきたのが岩井の作品。

 ゆえに題材は「ひきこもり」「家族」「夫婦」「不倫」など現実の社会問題とリンクするものが多かった。

 そして岩井は2011年から全国の高校・大学・公共ホールなどで参加者が「自分で書いて、演じる」というワークショップを行い、そこで何本か作品を作ってきた。

 本作はそのワークショップを起とし、俳優たちが実際に自分の身に起きたことを出し合い、それを岩井が構成・演出し一本の作品に仕上げたもの。

 演劇というフィルターを通した時に、悲劇が喜劇に代わる時もあれば、その逆もしかり。演劇のダイナミックさを体験できる作品となりそうだ。

 すでに前売り券は完売なのだが、当日券は毎回必ず出すとのことなので、ぜひチャレンジしたい。
 15、16日には岩井のアフタートークもある。

ハイバイ『ワレワレのモロモロ東京編』
【日時】12月10日(土)?23日(金・祝)(開演は19時。17日(土)は14時の回あり。18日(日)と23日(金)は14時開演。月曜休演。開場は開演20分前。受付開始は開演40分前)【会場】アトリエヘリコプター(五反田)【料金】整理番号付自由席 前半割(10?16日)前売・当日共3300円/一般(17?23日)前売・当日共3800円、学生:前売・当日共2800円(受付にて要証明)【問い合わせ】ハイバイ(TEL:080-6562-4520 =10?20時 [HP] http://hi-bye.net/ )【構成・演出】岩井秀人【出演】荒川良々、池田亮、岩井秀人、上田遥、川面千晶、永井若葉、長友郁真、平原テツ、師岡広明

この脚本にこの出演者。面白くなかったら、多分事故 ハイバイ『おとこたち』

2014.06.22 Vol.620

 作・演出の岩井秀人が取り上げる題材は家族の問題、夫婦の問題、引きこもり、といった日常、我々の身の回りでありそうなことばかり。しかし登場人物の自意識過剰っぷりやトラウマなどを、その独自の視点で引っ張り出すことによって、決して普通の話では終わらせない。ただ、舞台上では “喜劇”という形にして見せているので、その場ではついつい笑って終わってしまうのだが、あとからじわじわと考えさせられるモノが出てきて、ついついもう一回見たくなる。 

 今回は2012年に上演され、岸田國士戯曲賞を受賞した『ある女』以来、約2年ぶりとなる新作書き下ろし。

 のんきな若者が社会に出てさまざまな困難にぶつかっていくさまを描く、青年期から老年期までの男性たちの群像劇。老老介護や貧困といった、「見ないふりをしていいのかな?」といった問題を取り上げ、舞台の上に乗せるという。

 キャストを見ると、ダメな男を演じさせたらはまりそうな俳優ばかりでワクワクするのだが、ハイバイの作品では男が女を演じることも普通にあるので、幕が上がるまでは予断を許さない!?

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