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タニノクロウ作・演出 2021年上演『虹む街』のその後を描いた『虹む街の果て』が5月13日から上演開始

2023.05.10 Vol.754

 庭劇団ペニノの主宰で劇作家・演出家のタニノクロウは 2021年6月にKAATで『虹む街』という作品を上演した。同作は当初は神奈川県民と一緒に舞台を作ることを目指した作品だったのだが、折からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、県民を対象としたオーディションを断念。その中でタニノはオンラインで飲食店経営者、お寺の住職、葬儀屋、教職者といった人たちから話を聞いたり、横浜の飲食店街に足を運んだりとコロナ禍でもできる範囲で取材をする中で横浜の野毛をモデルにした飲食店街の一角を舞台とした作品を作り上げた。作品には実力者俳優に加え、神奈川県民を中心とした多様な国籍の人たちが出演し、多国籍な街の風景を表現。そしてコロナ禍という状況を逆手に取り、ほとんど台詞を発しない“寡黙劇”に仕立て上げた。 

  今回の『虹む街の果て』 はそのリクリエーションで、タニノ曰く「前回から10年、20年、100年と時間が経ったら街にどんな風景や時間が流れているのかを想像しながら作り直します。コインランドリーやスナック、パブ、飯屋、タバコ屋などの100年後、それらの果て、生活の果て、人間の果てを描き、破壊的なリメイクを目論んでいます」とのこと。 

 初演とは対照的な音や音楽であふれる世界を創造し、新たに公募で県民からの参加者を選出。また「この街の中にさまざまな人が出入りした痕跡を残したい」というタニノの思いから 4月中旬には稽古場でのイベントも開催した。作品作りの過程も含め、前回は成し遂げられなかった「県民参加劇」を作り上げた。公演中も開演前に舞台上のセットを中まで見学することが可能となっている。 

あらゆるものをのみこんだものが舞台芸術である 庭劇団ペニノ『蛸入道 忘却ノ儀』

2018.06.01 Vol.706

 劇作家・演出家のタニノクロウが主宰を務める庭劇団ペニノが3年ぶりに完全新作を上演する。

 タニノは2016年に岸田戯曲賞を受賞、ドイツの公共劇場のレパートリー作品を手掛けるなど脚本家としても高い評価を得ているのだが、それ以上にこだわっているのが舞台美術。

 今回は森下スタジオの中に「巨大な寺」を建て、「一体・没入型」の音楽劇を展開する。

 そこには8人の僧がいて、何らかの念仏を唱え、奇妙な唄を唄い、不可思議な音楽を奏でる。そして彼らは熱、光、煙、匂い、音、声、振動といった人間の五感に働きかけるさまざまな要素を駆使し、そこに集うすべての人を巻き込み、うねるような極限状態を生み出していく。

 今回は公演自体は6月28日からなのだが、6月21〜25日には「庭劇団ペニノ『蛸入道 忘却ノ儀』を10倍楽しむ会」と銘打ち、上演を挟む形でタニノとゲスト講師たちによるレクチャーとフィードバックが開催される。アフタートークという形で作品について語るケースはままあるが、こちらはそこから一歩踏み込んだ形で行われ、より深く作品を知ることのできる試みとなっている。

 また今回の公演では舞台美術に関するクラウドファンディングも行っているので気になる人はのぞいてみるのもいいかも( https://camp-fire.jp/projects/view/66631 )。

【日時】6月28日(木)〜7月1日(日)(開演は木金14時/19時、土日13時/18時。開場は開演5分前。当日券は開演30分前)【会場】森下スタジオCスタジオ(森下)【料金】全席自由/入場整理番号付き 前売り4500円、当日券5000円/学生3800円(要学生証提示・枚数限定)【問い合わせ】庭劇団ペニノ(TEL:080-4414-2828=11〜20時 [劇団HP] http://niwagekidan.org/ )【作・演出】タニノクロウ【出演】飯田一期、木下出、島田桃依、永濱佑子、西田夏奈子、日高ボブ美、森準人、山田伊久磨(五十音順)

大阪で大阪の俳優たちと制作 庭劇団ペニノ『ダークマスター』

2017.01.22 Vol.683

 この『ダークマスター』は1995年にヤングチャンピオンという青年漫画誌に掲載された漫画を原作とする作品。

 舞台は超一流の腕を持つが偏屈な人間性と極度のアルコール中毒のため、全く客が来ないマスターが一人でやっている小さな洋食屋。そこにある日、一人の若者が東京から客としてやってくる。マスターは「自分の代わりにここのシェフになれ」と提案するが、若者に料理人の経験はない。マスターは若者にイヤホン型の小型無線機を渡し、自分は二階に隠れ、無線を使って若者に料理の手順を伝えるというのだが…。

 かつて2003年に駅前劇場、2006年にこまばアゴラ劇場で上演されたこの作品。今回は3年間に渡り、タニノが大阪に足を運び、大阪の俳優とワークショップを重ねて制作。物語の舞台も大阪に変え、大幅に脚本も書き換えて昨年5月に大阪で上演した。

 もともとこの作品に「資本主義社会の支配/被支配体系をユニークに表現した作品」という印象を持っていたタニノ。この3年間の大阪は橋下徹大阪市長が活躍するなど激動の時期。そんな世相が作品にどのような影響を与えたのかといった点も注目して見てみたい作品。

ここで見逃すと次はいつ見られるか分からない!? 庭劇団ペニノ新作公演  タニノクロウ

2015.07.25 Vol.647

 日本という枠には収まりきらず、海外での活動も多い庭劇団ペニノの日本では実に2年4カ月ぶりとなる新作公演『地獄谷温泉 無明ノ宿』が8月27日から森下スタジオで上演される。

 作・演出のタニノクロウは年初に単独でドイツに渡り、クレーフェルトの公共劇場Theater Krefeldのレパートリー作品となる『水の檻』を滞在制作。3月に帰国した。

「最近はツアーも含めて一本作品が終わるとかなり打ちのめされて嫌になってしまって、“これは続けられないな…”って思うことも多かったんです。それで最近では癒しのために山に行くことが増えてました。この前、ドイツから戻ってきたときはホントに空っぽになっちゃったんで、山に逃げて温泉に入りながら、仕事のあるときだけ東京に戻ってくるといった生活をしていたんですが、その間に一本作品ができてしまいました」

 その温泉が今作のヒントになった。

「今回はマメ山田さんが主役。マメさんは僕の作品にもたくさん出てもらっていますし、さまざまな舞台や映像の作品に出演されていますが、以前からマメさん自身を取り上げた作品を作りたいと思っていたんです。なので今回はかなりマメさんフィーチャーの作品。マメさんの代表作になればいいなと思っています」

 今回は諸々の事情があって、本公演前となる20〜25日に〈庭劇団ペニノ新作をお得に楽しむ会〉なる企画を開催。
 これは本公演に先駆けて新作を上演するもの。ペニノの歴代の公演写真を収めた「スペシャル・フォトブック」や本作の構想過程から、美術が立ち上がるまで、また稽古場の様子などを収録したデジタル・パンフがついてくる。

 気の早い話になるのだが、日本での次回公演については「まだ決まっていない。ひょっとしたら東京以外で一本やることになるかも…」とのことなので、今回の公演は必見。

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