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生まれて初めて相方・吉村を破天荒だと思った札幌の夜<徳井健太の菩薩目線 第124回>

2022.02.10 Vol.Web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第124回目は、相方・吉村崇の驚きの行動について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 

年明け。

平成ノブシコブシが二人そろってコンビでロケをする機会があった。場所は北海道。しかも、そのまま2つの番組の収録をする――という超レアなスケジュール。

一つ目の番組は、『満天☆青空レストラン』( 2月5日放送回)。帯広にほど近い幕別町でロケを行い、その後、一度札幌に向かい、一泊。翌朝、室蘭へ出発し、『道スタ外伝~179の魅力お届けします~』の収録を行う行程だった。

ありがたいことに札幌へは、ハイエース型のタクシー(ハイヤーだったかもしれない)をチャーターしてもらい、運転手さんであるおばちゃんドライバーとともに、のんびりと向かうことになった。

スケジュールには、幕別~札幌「3時間」と書かれてたが、かつて俺は北海道の別海町に住んでいたので、「無理だろうな」と思っていた。高速道路が走っていたとして、真冬の北海道。道東から札幌へは4~5時間は見た方がいい。ロケで頂いたビールを車内で飲みながら、そんなことをぼんやりと考えていた。

ところが、吉村は3時間で着くというスケジュールを真に受けていたようで、きっちり3時間後に知り合いと札幌で寿司を食べる予約を取っていた。俺は「無理だろうなぁ」と思いつつ、仮眠を取ることにした。

目が覚めるとあたりは暗くなっていたから、「そろそろ札幌かな」なんて思い、スマホのマップを見てみた。すると、まだ十勝を脱出するかしないかくらいの距離。運転手に尋ねると、トンネルの中でトレイラーがスリップを起こし、“く”の字の状態らしい。そのすぐ後ろにいた俺たちは、立ち往生しているという。

札幌までは9時間かかった。予定の3倍の時間がかかり、さすがに俺もビックリしたけど、こんな日もあるさ。吉村の寿司の予約も間に合わない。運転手さんも、この後帯広まで戻らないといけない。たまたま、今日はついていない日。

札幌の市街地が見えたときは、夜も更けていた。翌日は、ロビーに朝7時集合。こうなると、もう早く寝たい。 

まもなくホテルに到着するというとき、突然吉村が運転手であるおばちゃんドライバーに、「これから一緒に寿司食べませんか? 席が3席取れたんで。どうですか?」と声をかけ始めた。

6時間押しのスケジュールなのに寿司を食べに行くつもりなのか、ということにも驚いたし、こんなにオーバーしても予約は生きているのかとも思ったし、吉村の知り合いは愚直に待ち続けているのか、とも思った。

いろいろと「こいつは何を言ってるんだ」と思ったけど、一番むちゃくちゃだなと感じたのは、今日初めて会って、さして会話もしていないおばちゃんドライバーを寿司屋に連れていき、ご馳走しようとしていることだ。こいつは普段から、鶴瓶師匠みたいなことやってんのか? と思った。『吉村の家族に乾杯』みたいなことを、カメラが回っていないときでもやってんのか。

誘われた運転手さんは、驚きと嬉しさ、気恥ずかしさ、そんな予期せぬ感情が入り混じったような声で、「どうなんでしょう……ちょっと会社に連絡してみますね」と返していた。

吉村の知り合いは、どう思うんだろうか。突然、吉村が見ず知らずのタクシー運転手を連れて来たら、落ち着かないだろうに。おそらく、吉村は何も考えずに誘ったんだと思う。あいつは破天荒キャラなどと呼ばれてきたけど、俺は一度たりともそうは思ったことがなかった。でも、その日の吉村は間違いなく破天荒だった。はじめて吉村を破天荒だと思った。

俺は疲れていたから、翌日に備えゆっくり眠ることにした。すると、夜中の1時半くらいにホテルの部屋の電話が鳴った。受話器を取ると、フロントから「徳井さんにつないでほしいという方から電話が。おつなぎしてもよろしいでしょうか」。よくわからないけど、つないでもらうことにした。

電話の主は、先ほど俺たちを帯広から連れてきてくれた、そして吉村にお寿司を誘われたあの運転手さんだった。寿司を食べに行って、何かあったのか?

「帯広に戻ったんですけど、後部座席から徳井さんのだと思うんですけど、財布があって。忘れてませんか?」

運転手さんは、吉村とは寿司を食べに行かなかったんだ――。そんなことを起き抜けにボーッと考えたが、よく考えたらそこは大切なところじゃない。財布? 自分の手元に財布があるかどうかなんて確認せずに、チェックインして熟睡。その言葉を聞いて、あるはずの財布がないことに初めて気がついた。

一人が突然「寿司食べませんか?」と誘い、もう一人が財布を忘れる。どうかしているコンビだなと思った。

あの運転手さんは、俺の財布を見つけたとき、心臓がギュッとなっただろうし、吉村から誘われたときも、ウッとなったと思う。コンビ揃って、わけのわからないプレッシャーを与えてしまったこと、この場を借りて深く陳謝したい。

あまり機会のないコンビでの連チャン仕事に、体が対応していなかった説。最近はどういうわけか、平成ノブシコブシがコンビとして仕事をする機会がなんだか増えている。

『満天☆青空レストラン』でのロケは、若手の頃を思い出したりした。コンビ揃って、地方でロケをするなんて本当に久々だ。お互い歳をとったからかもしれないけど、ナチュラルに仕事ができて、シンプルに良かったなと感じた。その安心感が、わけのわからない言動につながったのかしれない。運転手さん、ごめんなさい。

又吉、キンコン西野に続き、新たな才能を開化するか
バーレスク・ボーイレスクショーを主催する平成ノブシコブシ・吉村の野望

2018.08.11 Vol.Web Original

平成ノブシコブシ・吉村崇が座長となって、バーレスクの男性版であるボーイレスクショーを定期開催していることを知っているだろうか? 昨年から始まった『Buttefly東京~ボーイレスクショー~』と題された吉村presentsの公演は、よしもとに所属する若手芸人らによって構成され、お酒片手に楽しめるオトナのパフォーマンスとしてじわじわとファンを増やしている。なぜボーイレスクを始めようと思ったのか!? そこには普段あまり知られることのない、芸人・吉村崇の意外な本音が隠れていた――。

バーレスク・ボーイレスクとは、ステージで服を脱いでいく過程の“じらし”や“からかい”をショーとして楽しむパフォーマンスのことだ。日本ではあまりなじみがないパフォーマンスかもしれないが、ラスベガス、ロンドン、ニューヨークなどで世界大会やフェスが開催されるなど、2000年代中盤から勃興した比較的新しいジャンルにもかかわらず、国外では人気を博しているほど。そんな世界的パフォーマンスに、なぜ飛び込もうと思ったのか?

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