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演出の妙を感じさせる2作品

2015.07.26 Vol.647

オフィスコットーネプロデュース『人民の敵』

『人民の敵』は1882年にイプセンによって描かれ、日本ではそれほど上演されていない作品。

 イプセンの作品は日本では『ペール・ギュント』『人形の家』といったところがなじみ深いのだが、現状に対して批判的な目を持ち、疑問を呈するような種類のものが多く、観客に常にさまざまな波紋を投げかけてくる。

 この『人民の敵』はノルウェー南部のとある温泉町が舞台。湯治場の専門医が観光の目玉である温泉が廃液で汚染されていることを発見する。給水パイプの引き直し工事を進言するが市長は温泉委員会の委員長を兼任しているため公共の経済を優先し、その訴えを聞き入れようとしない。ついに自己の利益と野心に燃えるあらゆる階層の人々を巻き込んで、町をあげての集会が始まる、というお話。

 作品では「絶対多数」が本当の正義なのか?といったことが問われてくる。なにやら昨今の日本の政治状況を映し出しているようで興味深いところだ。

 今回は演出に2014年の読売演劇大賞・最優秀演出家賞などを受賞し、いま最も注目を集めている演出家といっても過言ではない森新太郎を起用。サスペンスあり、笑いありのこのエンターテインメント作品をどう料理してくれるのか。

【日時】8月21日(金)〜9月2日(水)(開演は月金19時、火13時/19時、水木14時、土12時/18時、日は23日13時・30日14時。25日休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】吉祥寺シアター(吉祥寺)【料金】全指定席 一般前売・当日4000円/お得チケット 前売・当日3500円(21、24、26、27、28日の5ステージ限定)/シードチケット(25歳以下)前売・当日共3000円(平日公演のみ。枚数限定。オフィスコットーネのみ取扱。受付にて年齢確認有り)【問い合わせ】オフィス コットーネ(TEL:03-3411-4081[HP]http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/)【作】ヘンリック・イプセン【翻訳】原千代海【構成・上演台本】フジノサツコ【演出】森新太郎【プロデューサー】綿貫凜【出演】瀬川亮、山本亨、松永玲子、有薗芳記、加治将樹、青山勝、塩野谷正幸、若松武史、宮島健 他

鳥肌実、森下くるみらを迎え 伝説のホラー劇『山犬』を再演

2014.08.03 Vol.623

 独特の風貌と過激な演説芸で「ハプニングアートの極北」と評される鳥肌実、AV女優として一世を風靡し、現在は女優・作家として幅広く活動する森下くるみといった異色のキャストを起用しての舞台、OFFICE SHIKA PRODUCE『山犬』の上演が8月7日から始まる。

 作品の作・演出、そして出演の丸尾丸一郎曰く「2006年に初演したんですが、ふだん劇団鹿殺しでやっているような王道のエンタメ芝居以外にも引き出しを増やしたいと思って、ちょっと毛色の違う作品をわざとやってみたんです。ホラーで少人数で密な芝居。今から考えると脚本の詰めが甘いところや、ネタが滑ったところがあったので、もう一回『山犬』をやってみたいと思ったんです。なので脚本も演出も大きく変わっています。ホラーの一言では片付けられないような、“なんだったんだこれは?”という得体のしれない舞台にしたいと思っています」

 誰もその名前に覚えがない同級生「テラニシカツヒコ」から届いた手紙をきっかけに再会した3人の高校の同級生。彼らは手紙に導かれタイムカプセルを掘りに学校の裏山に行くのだが、そこで悲劇に遭遇する——というお話。

 鳥肌はこの謎の人物「テラニシ」を演じる。「鳥肌さんは以前から鹿殺しの舞台をよく見ていただいていたんです。再演にあたりこの狂気の役は鳥肌さんしかいないと。そして鳥肌さんと組み合わせるときに“これは普通の小劇場の女優じゃ難しいだろう”と思って森下さんに白羽の矢を立てました。初舞台なんですが、感情表現の豊かさや、日々の成長がすごいんです。努力の人です」

 OFFICE SHIKA PRODUCEでは1月にミュージシャンのCoccoを舞台に上げ、本格的な会話劇を展開。大きな話題を呼んだ。そして今回は鳥肌、森下を起用。他ジャンルの才能を巻き込み、よそでは見られない作品を発表し続けている。

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