東出昌大の初舞台が幕開け!若きチェリストを熱演

2015.05.12 Vol.642
 東出昌大が初めて舞台に挑む『夜想曲集』が11日、天王洲・銀河劇場で初日を迎えた。『日の名残り』『わたしを離さないで』などのカズオ・イシグロの短編集を舞台化したもので、東出は若きチェリストを好演している。

 舞台は、3つの短編を1つの物語にしたもの。かつてはスポットライトと喝采を浴びた老歌手と華やかな場所にい続けようと努力する美しい夫人、売れないサックスプレイヤー、傷つけられることを恐れる女性...。それぞれの物語が静かに綴られる。東出は本紙のインタビューで、「とても静かな芝居で、いろんなことを明言しないんです。誰かに対する想いだとか」と話していた通り、2時間弱の舞台は冒頭からラストまでセレナーデのように優しく展開。そのなかにも笑いが起きるシーンもあり、見ているうちに自身も物語の一部になっていくような感覚が得られる。

 東出は、あこがれの人との偶然の出会いに興奮したり、不思議な女性との出会うことによって演奏について考えたりと、他キャストと比べると比較的感情の起伏が多い役どころ。舞台の大半で顔を包帯でぐるぐる巻きにしている安田成美を始め、近藤芳正らの演技にも引き込まれる。

 大きな波がある舞台ではないが、さざ波のように心が波打つ作品。24日まで同所で。

根本宗子、大忙し!! 2カ月連続で新作2作品を上演

2015.04.26 Vol.641

 劇作家、演出家、女優といったジャンルを超えアグレッシブに活躍中の根本宗子の作・演出・出演の舞台が立て続けに2本上演される。月刊「根本宗子」第10回公演『もっと超越したところへ。』(5月9日〜、下北沢・ザ・スズナリ)と大森靖子×根本宗子『夏果て幸せの果て』(6月3日〜、池袋・東京芸術劇場シアターイースト)がそれ。 『もっと――』は女子4人のさまざまな恋愛模様をラブコメ仕立てで描いた作品。 「去年までダメな男の人を描いて来たんですが、最近はしっかり自分の非も見られるようになったのと、昔より小さな幸せを守ることが大事に思えて来て。だからいつもなら今回の題材、女子が不幸な終わり方をしてたけど、今回はそれをどれだけ幸せに見せられるか試みてます」 『夏果て――』はミュージシャンの大森靖子の『夏果て』という曲を題材とした作品。大森が出演することでも話題を呼んでいる。もともと根本が劇中で大森の曲を使っていたのがきっかけでこのコラボが実現。 「大森さんの曲はよく聴いていて、この『夏果て』という曲も好きだったんです。5分ほどの中でものすごくちゃんとしたストーリーがあって、今回、この曲を演劇にしてみたいと思いました。大森さんの役はほかの人より自由度が高く、毎日違うものが見られると思うので、ライブ感覚でも見ていただければと思います」  2本続けて見ると根本宗子の何が分かる!?と尋ねるとしばらくの沈黙の末「………今(笑)」という答えが返ってきた。自らの作品や自らのことを固定されたイメージでとらえられることが「嫌い」という根本。実際、2008年に劇団を立ち上げて以降、短期間のうちに急激な成長曲線を描いてきただけに、過去の作品のイメージのまま今回の作品を見たら戸惑う人もいるかもしれない。 「今回は私が思う幸せを別視点で描いている2作品です。同じ題材で全く違う見せ方の作品をたった2週間の間隔で上演するということはなかなかないので、ドキュメンタリー的な感じで見てもらっても(笑)」とのこと。なるほど、そういう楽しみ方もあり。公演の詳細はこちらから(http://ameblo.jp/buroguha-nikkande/)(www.oomorinemoto.jp

『月刊「根本宗子」』こんなタイトルつけられたら見に行かないわけにはいかない

2014.08.02 Vol.623

 今年最初の発行号で「2014年、気になる人」としてインタビューした根本宗子。劇団『月刊「根本宗子」』主宰、作家・演出家、そして女優として案の定、2014年は大忙しの日々。そんな中、8月22日から月刊「根本宗子」第9.5号『私の嫌いな女の名前、全部貴方に教えてあげる。』を上演する。 「ダメな恋愛ものは1月公演で一区切りのつもりだったんですが、どうしてもやりたい題材ができてしまって、今回やることにしました。ごくごく私の私情をはさんだ理由なんですが(笑)、何かがありまして…それは秘密です(笑)」  どういったお話? 「アイドルを取り巻く女たちの話です。途中から何を見せられているんだろうという時間が、多分あります。脚本的には劇的な物語はなにも起こりません。説明ゼリフを排除して、くだらない会話だけで人柄を見せることを前半、1時間半ほどやってみようと思っています」  アイドル役でD-BOYSの土屋シオンが出演する。 「顔がアイドルっぽくて可愛いいというのがこの役の絶対条件だったんで、そこはこだわりました。本物のアイドルをアイドルの役に据えたことでだいぶリアリティーが増しました」  幕が上がってのお楽しみなのだが、ちょっと変わった設定とタイトルに隠された秘密がある。 「いろんなお芝居を見てきて、最近みんな同じに見えて、見飽きてしまっていたんです。それで“自分は違うんだ”と思ってやってきたんですが、それもやり飽きてしまい、行き着くところに行き着いてしまったのが今回の作品なんです」  相変わらずのチャレンジャーだ。

ありそうでなさそう、現実と架空の世界を行ったり来たり

2014.02.03 Vol.610
 ちょっと変わった設定の中で繰り広げられる絶妙な会話劇が鉄板のMONO。
 その変わった設定というのも、刑務所の中に突然に領土問題が発生したり、窃盗団の飛行機の中の話だったり。こう聞くと突飛な設定のようにもみえるが、幕が上がって芝居が始まると、俳優たちの佇まいがそう思わせるのか、なんとなくありそうな設定に思えてしまうから不思議だ。
 今回の舞台はビルの天井裏。そこで「のぞき」をして過ごす人々のお話。
 その天井裏には他の社員が知らない部屋がある。会社をリストラされたと思われている数名の社員が天井裏から社内の様子をのぞいていた。彼らは社長直属の「諜報課」だった。
 登場人物たちはのぞくだけで、決してメーンストリームには加われない人たち。
 この構造はまさに現代のネット社会を模したもので、外野から罵詈雑言を浴びせる人たちの気持ち良さと惨めさが入り混じった不思議な感覚が描かれる。
 そう言われると見終わった後に自分がどんな気分になるのかも、ちょっと気になる!?

ありそうでなさそう、現実と架空の世界を行ったり来たり

2014.02.03 Vol.610
「岩松了シリーズ」や松尾スズキ、倉持裕といった演劇界を代表するような作・演出家との一連の作品など、さまざまなプロデュース公演を手がけるM&Oplaysが今年から明日の演劇界を担う若い才能を育てるシリーズを開催。その第一弾となる。
 今回は第56回岸田國士戯曲賞を受賞したノゾエ征爾を作・演出に起用。主演に大人計画の荒川良々を迎える。
 話はある男の人生。男は「たいくん」という舞台や映像で活躍する有名俳優。演じるのは荒川。たいくんが“今現在”を基準にちょっと前のことやちょっと先のこと、かなり過去のことやかなり未来のことを語り始める。たいくんの人生には印象深い7人の男たちがいて、そんな男たちとのエピソードが非情でありながらたっぷりのユーモアを混じえた形で綴られる。
 たいくん≒荒川?といった雰囲気を漂わせる部分もあり、フィクションとノンフィクションを行ったり来たりする。この絶妙なふわふわ感はノゾエならでは。
 赤堀雅秋、小野寺修二といった個性的な俳優たちが7人の男たちを演じるのも興味深い。

Copyrighted Image