
vol.187
堺雅人 interview
『新選組!』で大きく飛躍し、いまや全国区の“微笑み&腕組み”の貴公子の堺雅人。今度は、ホームグラウンドである舞台で新しい堺を見せる。
ヴィジョンだとか、僕が思う役者像――。
あるにはあるんだけれど、それはあんまり重要じゃない
「最近仕事が楽しくなりましたね」。ひげをたくわえ、少しワイルドさが加わった堺雅人は、いつもの笑顔で言う。
「自分ができることっていうのができてきたからだと思うんです。これまでは、やれないことをやれる、分かりもしないのに分かると言ってたこともありました。それでひどい目にあったり、あわせたこともあったし。でも、この年になって、できることも増えてくるし、できないことはできないと言えるようになってきたんですよね」
昨年の『新選組!』で、山南敬助を演じて大ブレーク。静かにたたえた笑顔と淡々とした語り、そして涙を誘った切腹シーンまで、回を重ねるごとに視聴者の心をつかんで、1、2を争う人気隊士を作り上げた。
「あそこまで愛される役になるとは思っていなかったですよ。そうなったのも、三谷幸喜さんと現場でVTRを見ながらキャッチボールして作っていけたからこそだと思いますし、見ていただいた方ともキャッチボールができて、期待に後押しされるような形で素敵な人物になっていった気がします」
ある意味、裏切り者的な役どころの山南を愛すべき人物に。それは、堺の役作りに対する臨み方によるところも大きそうだ。
「役作りってよく分からないんです。どの作品でも、僕が前もって準備していくことはセリフを覚えることぐらい。山南さんの場合は、試衛館の9人のメンバーと一緒にいて、そのなかでの人間の関係がみえてきて、自分はこうだって分かってきました。
役作りってクラス替えみたいなもので、新しい人たちのなかに入っていって、1人ずつと話して、そういうなかで自分はこうと分かってくる。だから、どの作品でも稽古に入ってみないとどうなっていくのか分からないんです」
本人がいうところの次のクラス替えはこの3月になりそうだ。堺は、舞台『お父さんの恋』に出演する。父親が恋に落ちたことが発端となって展開していく現代劇で、テーマは家族。堺が演じるのは1人息子の大樹で、何をするでもなく日々暮らしている。いわゆるニートといわれる人種だ。
「非常にイメージしやすい人ですね。自分も仕事がないときは、何にもせずにただぷらぷらしてるので(笑)。俳優なんて仕事がないときはまさにニート。働いてもいないし、学生でもない。役者って現場や撮影がある日が1年のうち3分の1あれば売れっ子ですから(笑)」
脚本の中谷まゆみと演出の板垣恭一とチームを組むのは2回目になる。
「『ビューティフル・サンデイ』以来になります。僕、中谷さんの書く本が好きなんですよ。中谷さんは、今日生きている自分のスタンスというか、今という時代の僕らの生活という視点を忘れずに書いてらっしゃる方。今回は家族の話ですけど、家族はこうあるといいという絵空事を書くのではなくて、自分のリアルを見つめて、なおかつ、その場でできる精一杯の背伸びというか、その場で精一杯の幸せをつかもうとする姿を書いていて、無理してない。だから、演じるほうとしても精一杯やろうと思うんです。読んでいてもそう感じるので、見ていただける方も同じように思っていただけるんじゃないかと思います」
昨年末の『喪服の似合うエレクトラ』に続き、舞台が続く。もともと舞台の出身だが、「戻ってきたという気はしないし、また新しいチームで新しいことができるという気持ちが強い」。
「役者として自分がどうなっていくのか…。よく聞かれるけれど難しい質問です。ヴィジョンだとか、僕が思う役者像ってあるにはあるんだけれど、それはあんまり重要じゃないと思ってるんです。役者ってみんな、いい作品を作るために集まっているから、その度にいいチームを作っていくしかない。それを毎回できる人がいい役者だと思います。だから、こんな男になりたいとか、こんな役者になりたいとかね、どうでもいい。ほっといても自分は自分がかわいいから、自分のことは最後に回しておくのがちょうどいいって思うんですね。それより大切なのは、明日の待ち合わせに遅れないとか、明日の舞台をしっかりやるとか、自分の思うことをちゃんと伝えるとか、そういうこと。30年生きてきて、今そう感じています」
堺がこれから何度新しいチームに入っていくのか、それは誰にも分からない。ただ、どんなチームのなかでも、新しい自分を発見し、自分を主張せずに主張していく。そして、光る。それだけははっきりしている。
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