今週のTOKYO HEADLINE
vol.189
(2005.01/31-02/06)
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MOVIE vol.189

ドラマ『みんな昔は子供だった』が伝えるもの。

筧利夫インタビュー

いよいよ面白い展開になってきた。筧利夫が出演するドラマ『みんな昔は子供だった』(フジテレビ系、火曜夜10時〜)の話だ。舞台は山の小学校。豊かな自然の中で繰り広げられる人間模様は、毎回、忘れかけていたものを思い出させてくれる。その中で筧は、いつもの「いい味」で作品をしめる。溢れ出るエネルギーをたたきつけるように発していた第三舞台での時代を経て、今、テレビに登場する筧は、その演技で視聴者の目を釘付けにする。

「みんな、本当はわかってることってあるんですよ。
ドラマは、その思いへの道標になればいいと思いますね」

 ドラマの舞台は、山の分校。そこに、山村留学生の引率として、筧利夫演じる先生が山にやってくる。もともと出身はその山村だが、町の先生として、その試みを成功させれば、教頭くらいにはなれるんじゃないかという小さな野心も持っている。はからずもさまざまな人が集まることになった山の分校を舞台に、ドラマはいよいよ中盤へと向かっていく。
「今回は、はっきりとこれを見せたい、というより、見てもらう個人個人に感じていただくドラマになるんじゃないかと思って、拠り所がないままやってますけどね(笑)。でも、考えてみれば、もともと人間なんて。拠り所を探しながら毎日生きておりますから、このドラマはちょうどそことリンクしていいんじゃないかと」
 筧の言う「拠り所」とは、自分はこう生きるんだという、確固たる意志のようなものだ。
「そういうのがある時期もありますけど、なかったりするし。ほとんどはだいたいないし。自分のことがよくわからないし。だけど人に教えてもらうわけにもいかないし。そういうことを深く探求しつつ人間っていうのは生きていくものですから。ところがどういうわけか人には仕事というものがある。心を亡くすと書いて“忙しい”という字になるけれど、だいたい仕事をやってると、忙しさにかまけて本当の自分というのは何かとか、昔、自分はどういうことを考えていたのか、なんてことを考えられませんから。それで、根本的にドラマなんてものは、そういう方々の心を癒すためにあるんだと僕は思っているんですよ。なので、僕らはドラマの中で役として生きつつ、見てくださる方の、過去への道標になれたらいいなと思っていますね……。これ、文章になったら、俺、どんなしゃべりをしてるんだろう(笑)」
 ご本人が心配するようなことはまったくないが、恥じらいなのか、笑いを含まずにはいられない性格なのか、真面目さの中にある愛嬌が時々顔を出し、周囲の人たちを笑わせる。それはドラマの役ではなく、パーソナルな筧利夫の一面だ。話をドラマに戻そう。


「まあ、そういうこともあって、見てくださる方たちにとって、何か原点回帰になるドラマになれればいいなと思ってますけどね。ずっと大事にしてきた人形があって、ボロボロになったまま置きっぱなしになっていて、あまり目はいかなかったんだけど、“そういえば、あの人形ボロボロになったから、新しいのを買って、棄てようか”と、手に撮った瞬間に“いや、待て”と思うようなね。“これを棄てていいのか”“そもそも新しい人形なんて必要なのか”というようなことを……本当にこんなこと話してていいんでしょうか(笑)」
 話を聞きながら、ドラマのタイトルが『みんな昔は子供だった』であることを改めて思い出す。ところで、役の上ではなく、筧さん自身にとっての「棄てられない人形」はあるのだろうか。
「僕、たまった物に関しては、心を鬼にして古いものはどんどん棄てるんですよ。箪笥の中って、物が詰まってると新しい物が入らないから。なんか、さっきまで話してたこととまったく逆のことを言ってますが(笑)。でも、棄てられないものもあることはありますね。ドラマの台本なんかは全部取ってあるし、バラエティーの台本も、舞台の台本も全部取ってある。まあ、これはそんなにたまるものじゃないから、一生取っておいてもいいかなと思いますけど」


 今回のドラマでは、役を説得力あるものにするため、衣装選びにもこだわった。よく見ると、三つ揃いスーツのあちこちに、小さな穴が開いている。時計もアンティークだ。
「古いものを探してもらったんですよ。スーツは親父のもの、時計はお袋のものを、ずっと使ってるような男じゃないかと。まあ、なんていうか、みんなわかってると思うんですよ。本当は必要ないって。立って半畳、寝て一畳みたいなね。飲み屋なんかより、本当はアスファルトに座って飲んだ方がいいんじゃないかとか。いや、それは俺だけか(笑)」
 私生活では、ただひとつ大切なものを、昨年末手に入れた。長く一緒に生活してきた相手と、入籍。マスコミに向けた結婚の報告は、「男として黒帯になったような気持ちです」という言葉で綴った。しかし、籍を入れても、特に変わったことはないという。
「強いて言えば、結婚してる人と見られることかな。そう見られるってだけで、僕の中ではもう前と違いますから。その違いは…鼻を高くしてる人が、この人、鼻高くしてるとわかられてるみたいな(笑)。まあ、やっぱり、正式に仲間になったという感じですかね。籍を入れる前までは他人だったけど、言葉で言うとそれが一番違うかな」
 何か考えることがある時、ちょっと疲れた時など、筧の心を解きほぐすのは、奥さんとのひと時だそうだ。だから、外で酒を飲んでいても、早く家に帰りたいと思う。「早く家に帰りたいなんて、俳優として最悪ですよね(笑)」しかし、そのオンとオフの切り替えが、演技者の筧を、いつも新鮮に輝かせるのだろう。


 舞台や映画という完結した作品と違い、連続ドラマは、プロデューサー、監督、脚本家などとの共同作業だと筧は言う。
「ルービックキューブみたいなものかな。あ、この人はこういうやつだったんだ、そういう話だったんだと。最初は謎だらけのものを、解いていく感じですね」
 だから連ドラは最後まで見なければ面白さがわからない。筧利夫は、今週もまた、何か素敵なアイデアを送ってくれるに違いない。

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