最近、大人っぽくなったと、よく言われるという。それもよく分かる。シングル『花風』に引き続き、先日リリースした『三国駅』のジャケットには、アンニュイなオトナの表情のaikoが写っているからだ。「ファンの子もこの路線でいくのかなあ、なんて掲示板に書いてくれてるんですよ。ライブとかで、実際の姿を見てくれればそういう心配は無いと思いますけどね(笑)」そうはいうが、彼女の女っぷりは確実にあがっている。Tシャツにパンツという気取らないスタイルは以前と同じだけれど、さりげなくつけているセンスのいいリングには自然と目が行く。
今年、aikoは30歳になる。 「この間、30代の女性のありかた、っていう取材があって、びっくりしたんですよ。私30なんだ!って。音楽やってると、朝も夜もないし、きまった食事もないじゃないですか? 私にとって、それって学生時代と同じなんですよね。やってることとか生きてる感じとかが。その時と比べれば、今は食べられるようになったし、車も乗れる。部屋も7畳のワンルームからちょっとは大きくなりましたけどね(笑)。でもね、ほんと、10代の頃は、30になったら子供も産んでる!ぐらいの勢いでしたけど、何も産んでないし、願望もそこまでないですしねぇ。 “子供が子供を産んでどうするの?”っていう感覚が常にあるし。でも、どうしようとか思うこともありますよ。友達なんかは子供が4人ぐらいいて、自転車の前にも後ろにも乗せてたりするんで。雑誌や噂で “aikoがツアー最終日の武道館で引退宣言、そして結婚!”とか言われてるんですけど(笑)、そんなの全然ないし、今なんてアルバムのことしか考えられないし。これが33ぐらいになるとまったく言われなくなるんでしょうね、微妙な年齢だからって…(笑)。それはそれとして、よく聞くんですよ、30代になると面白いって。だから、楽しみにしてます」 先日リリースした、シングル『三国駅』は、高校時代を過ごした大好きな場所の地名をタイトルにした、しっとりとしたバラード。ただ、これまでとは少し意味合いの違う作品になった。本人いわく、「大きい記念の曲」。 「曲ができたのは2年ぐらい前、27歳の頃ですね。その前までは、曲を作っていても“今”の歌が多かったし、振り返るとしてもほんの数カ月前のことだったんですけど、この曲を書いた頃、なんとなくですけど過去を振り返ることができるようになったんです。ちゃんと立ってられるようになったというか。それまでは、自分は負けない、怪我してもすぐ治るし自分は無敵、自分を傷つけてもすぐ元に戻るって思ってたんですけど、そうじゃないことが分かってきた。自分の限界だとか、ここまではがんばれるとか。そういうのが見えて、過去の自分に今のaikoはあんたから見て恥ずかしくない?って問いかけられるようになった。昔も楽しかったけど、今も楽しい。あんたも私も楽しくて良かったねっていう気持ちになれたんです。だからこそ、書けた感じがします。もし、負けてたら、悔しくてこんな歌絶対作れなかったですから。今まで、“振り返る”っていうのは、“ありがとう”とか“メリークリスマス”とか“ハッピーバースデー”とかと同じように、恥ずかしくて作れなかったんです。だから、『三国駅』は、自分のなかで大きい記念の曲になりました」 “今の自分は大丈夫?”、aikoが問いただすのは高校生の頃の自分だ。 「今までの人生で楽しかったランキングをつけるとしたら、1番目は今、2番目は学生時代。不動の2位なんです。今でも続いている友達に出会えたことで、自分が変わった感じがして」 この曲は、「もしもあなたがいなくなったらー」と始まるが、単なるラブバラードではなく、もっと広い意味での愛とaikoの大切な思い出、そして今が織り込まれている。 「今までは、自分があ〜って思ったときとかには、『マント』をよく歌ってるんです。『マント』は、aikoとaikoの1対1なんですけど、『三国駅』は昔の友達とか今一緒に頑張っている人、その当時好きだった人、今好きな人の顔が浮かんでくる。これから先、助けてもらう歌になると思います」 3月2日にはアルバム『夢の中のまっすぐな道』もリリースされる。『かばん』や『花風』などシングルも収録、キャッチーなポップソングから、せつないラブバラード、ジャジーなナンバーまでさまざまな音を詰め込まれている。 「前作で、春夏秋冬とテーマが一周まわったので、今作では新しい外枠のスタートを作れたんじゃないかな」 最新アルバムは、ジャケットにも気合を入れ、雪に覆われた軽井沢のスキー場の山頂でスカート姿で撮影した。イメージは雪の森だ。「“あなたたちおかえりなさい!ここを汚さないで!”(笑)、そんな感じで写ってますから」 「大きな記念になった曲」であるシングル『三国駅』と、「新しい枠を作ることができた」アルバム『夢の中のまっすぐな道』。aikoのネクストステージは、ここから始まる。