
vol.194
Moby interview
アルバムをリリースすればマンモスセールスを記録し、レストランを始めればニューヨーク屈指の人気スポットになる。そして今度はホテルに挑戦。といっても、本物のホテルではないのだが…
“HOTELは、人のありさまに似ていると思うんだ”
優雅で高貴、かつセクシーさも兼ね備えた、ダンスロック。モービーの作る音楽を表現するとしたら、こんな感じだろうか。
パンクロックに傾倒し、レイブカルチャーのパイオニアとなり、今では常にミリオンアルバムを発表するアンダーグラウンドのヒーローとして崇められる、モービー。最近では「ボーン・スプレマシー」のエンディングに曲を提供したりと、さまざまな分野で活躍している。他のアーティストとはかぶらないキャリアのなかでも、アルバム「PLAY」は大きかった。ロックの熱さとダンスのグルーヴ感、それにゴスペルの神々しさを融合させた新しい音で、世界中が熱狂。そして、彼の躍進は次の「18」でも続いている。
そして、3月9日。ついにリリースされる最新作「HOTEL」で、モービーは世界中をリラックスさせようとしている。 「このレコードはすごく人間的なレコード」と本人。「僕は、人間的なレベルで共感してもらえる、温かくて感情的で、人間的な曲を作ろうとしてるんだ」
モービーは、ニューヨークのローワーイーストサイドに「スペースシャトルが直立するように建っている」高層ホテル、リヴィングトンホテルを思いながら言う。「ホテルは人のありさまに似ていると思うんだよね」
「ホテルってチェックインして部屋に入ると、自動的に自分がその部屋に初めて入った人間だと思い込んでしまう。ツアーに出て、ホテルに泊まるたびにそう思うんだけど、すごいことだと思うんだ。本当は6時間前に同じベッドで誰かがセックスしてたとか、その前日には誰かが別れ話をしていたとか、またその前日はトイレを使っていたとか、人間の一番秘められた事が起きているのに、その人たちのことはまったく分からないんだから。そうやって、ホテルは、24時間ごとに、コンピュータのデータを消去するみたいに清算されてしまう。これって人のありさまに似ていると思うんだ。僕らも死んでしまえば全く存在しなかったようにこの世から清算されてしまうからね。そんな風に考えると気がめいるんだけど、明日、1カ月後、何年後には自分達が消されてしまうからこそ、与えられた短い時間が貴重に思えてくるんだ」
そんな思いをふまえて作られた「HOTEL」は、彼や彼自身の体験をベースとした曲が詰め込まれている。バラード、ディスコ、ロマンティックでメロディアスな楽曲が並んでいる。が、そのなかにサンプリングを使用した曲は一切ない。その類の曲は、書き下ろした数百曲のなかにはたくさんあったけれど、出来上がったときには消えていたという。
エモーショナルな楽曲のなかには、彼の敬愛するミュージシャンたちの影響が感じられる。ニュー・オーダーの「テンプテーション」のカバーも披露しているが、デビット・ボウイには「Spiders」で敬意を払っている。
「ボウイとジョージ・ガーシュインは20世紀のミュージシャンの中でも最も好きなミュージシャン。でも、僕は好きなミュージシャンへのオマージュを作ろうとしたことはないんだ。ただ、無意識にそういう風になっているのかも知れないけどね。誰でも、子供の頃から好きだった曲から影響を受けないはずはないからね。そのなかで、アルバムに収録した「Spiders」は、ボウイへのオマージュといえる。陰気に聞こえてしまうかもしれないけど、この曲は、ボウイが心臓発作を起こしたと聞いて、もし彼がいなくなってしまったらどうなるのかと思って、彼が亡くなってしまったことを想像して書いたものだから。もちろん、彼にはずっと生きていてほしい、できるなら170歳までね」
お気に入りのアーティストへの敬意を散りばめた、モービーのベッドルームシンフォニー。このサウンドに世界中が耳を傾ける。
moby
「HOTEL」
3.9 in store 1980円
ボーナスCD「HOTEL-Ambient-」付き デラックス・エディション 2970円
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