

vol.195
悲しくも美しい、少女の旅立ちの物語。 『サマリア』
主演 クァク・チミン interview
“韓国の北野武”と名高い、鬼才監督キム・ギドク。『悪い男』などでバイオレンス表現にも定評のある監督が、新たに手掛けたのは、女子高生の援助交際をテーマにした物語。本作『サマリア』で、援助交際をする親友を失った女子高生、ヨジン役に抜擢されたのは、注目の若手女優クァク・チミン。
「実は、私のキャスティングが決定してから3日後には撮影に入っていたんですよ(笑)。だから、チェヨン役のハン・ヨルムさんとも、現場で出会った、という感じですね。私は誰かと親しくなるのに時間がかかるタイプなんですけど、ヨルムさんは、物語のチェヨンのように、明るくて気さくで、すぐに仲良くなれました」
彼女が本作のオーディションに挑戦したのは、高校3年生のときだった。
「オーディションをするときに、この作品がギドク監督によるものということや、援助交際を扱っていること、主人公を募集していることをまったく知らされてなかったんです。私が知っていたのは女子高生役を募集している、というだけ。実は、オーディション会場にカメラが設置されていて、参加者たちの普段の表情や会話などを監督が見ていたそうです。それで、私が選ばれたって聞きましたけど。はっきりと聞いたわけではないのですが、何でも私が他の子たちに比べ、演技の形が仕上がっていなく、純真そうだったからだとか…。確かに、周りがわりとオシャレをしている中で、私だけはジーンズでしたね(笑)」
ショッキングなテーマを扱うギドク監督だが、今回も女子高生の援助交際という、シリアスな問題を扱っている。
「監督は、あるインタビューでこんなことを言っていました。“僕の映画に出演する主人公たちは、実際に自分が登場人物と同じ経験をしていなくても、それ以上の衝撃を持って、その後の人生を歩むことになるだろう”と。それを聞いたとき、思わず胸が熱くなりました。実はそれまで、監督は私たちがどんな気持ちでこういった役どころを演じているか、実感されていないのでは、と思っていたんです。でも、監督はすべてわかってくれていたんだと気づきましたね」
まだ映画の経験が浅い彼女に、監督はさしたる演技指導を行うことはなかったという。
「監督には、本当にたくさん質問したんですよ。でも、監督は私の質問に対して、こうしなさい、というような指示を出すことはありませんでした。それどころか、全然関係のない話を始めるんです。例えば、10歳のころの夢は?とか(笑)。そんなことを1時間でも2時間でも話すんです。でも、そうしているうちに、ふっと、ヨジンの気持ちが分かる瞬間が来る。あ、何となく分かった、と思ったとき、私が何も言っていないのに監督は“もう大丈夫みたいだね、撮影に入ろうか”って。監督は俳優から最大限の力を引き出すことに非常に優れた方だと感じましたね」
少女の純真さを持ったまま、現代社会に放り出されたヨジンとチェヨンの物語。ギドク監督の手腕とともに、若手女優2人の存在感が光る1本だ。