
vol.197
『WATARIDORI』のジャック・ペランが“天使の歌声”で世界を包む!
『コーラス』
製作・出演 ジャック・ペラン interview
“奇跡の歌声”を持つ美しい少年と23人の子供たち。孤独で頑なな彼らと心を通わせることができたのは、1人のしがない音楽教師だった−。フランス映画で大ヒットを記録した本作、製作を務めるのは『WATARIDORI』を手がけたフランスの代表的映画人ジャック・ペランだ。
穏やかに微笑むペラン。向き合っているだけで、知性と理性を感じられる人物だが、意外にも涙もろいようで…。
「私は個人的に、話を聞いたときに強く感情に訴えかける物語が好きなんです(笑)。本作にしても、脚本を読んだときに、これはいろいろな人を感動させる模範的な物語だ、きっと私だけでなく他の人も感動するはずだと思ったのです」
戦後のフランスで、親と離れて寄宿学校で暮らす子どもたちと、1人の音楽教師との物語。ペラン自身、この物語には強く惹かれるものがあったという。
「私は戦後すぐに生まれたんですが、ちょうどこの映画の時代背景となっている1948、9年に同じような施設に入っていたんです。それで日数を数えながら、いつかはこの刑務所のような施設から出て行けるはずだと思い、その日を待っていました。そのため、特にこの物語には思い入れがあるんです。もちろん時代背景だけでこの作品に惹かれたわけではありません。この映画の面白さは子ども時代を描いていることだと思います。とくに難しい時期の子ども時代をね。その子ども時代から抜け出るためには教育も必要ですけれど、誰か子どもたちに、まなざしを向けてくれる人、彼らを信頼してくれる人が必要なのです。自分を見失っている子どもたちに対してその人が希望を与えてくれる。これはそういう物語なのです」
ちなみにペランが涙した場面とは…?
「もちろん、そんなシーンはたくさんありました。とくにラスト、小さな男の子が走り出すところ。私は7歳のころに施設が嫌になって脱走したんですが、そのときのことを思い出してね。映画では、この子は9歳。演じているのは私の息子なんです。なので、息子が自分が昔体験した状況に置かれているようで、涙がとまりませんでしたね」
今回、脚本、監督を務めたクリストフ・バラティエは、ジャック・ペランの甥にあたる人物。ファミリーとして、映画製作のチームとして、良いタッグを組んだようだ。
「プロデューサーの才能とは何か、と聞かれたときに、それは他の人、監督の才能を活かすことだと思います。ですからあれこれと指示をするのではなく、その才能が花開くようにしてあげるのがプロデューサーの役割。彼には、監督についてくる煩雑な仕事にとらわれず、登場人物の魂をいちばん重要に感じるようにと伝えただけです」
映画人ペランはこの映画を見てどんな感情を抱いたのだろうか。
「このテーマはやはりいかに子どもたちに付き添っていくか、分かち合うかということ。それにより、より強く生きることが出来るという映画です。この映画で歌を歌った期間が1年であれ6カ月であれ、この強さを知った彼らはその後の人生をしっかり生きていくことができるのです。この映画はスクリーンに涙があるのではなく、見ている観客の心の中に涙がある、という効果をもたらす映画だと思うのです」
彼こそ名作『ニュー・シネマ・パラダイス』で映画監督になったサルヴァトーレを演じた人物。今回、出演も果たしたのには、特別な理由があったのだろうか。
「いえ、甥の映画に出たいということと、『ニュー・シネマ−』の思い出をもう一度蘇らせてみようと思ったのです(笑)。ちょうど似たような役柄でしたからね」
「日本に来ることをとても楽しみにしているんですが、いつも日本をよく知ることができずに帰国しなくてはいけなくて。今回も明後日には立たなければならないので、また日本に戻ってくることになるだろうと思いますよ(笑)」