
vol.204
新緑の東京ガーデン
新緑の季節、都会の喧騒から離れ、深い緑に囲まれてリラックスしたい。それなら今日の午後にでも、ちょっとしたトリップをしてみては? 一歩、その敷地の中に入ればそこには緑のオアシスが広がっている。都立庭園は、都会人のためのリラクゼーション・ルームなのだ。
公園は、都市のリビングルーム
街中を歩いていて、壁の向こう側に森のように茂る木々を見たことはないだろうか。ちょっと立ち寄ってみようかと思っても有料なので、入らずに通り過ぎた人もいるのでは。そこは東京都の有料庭園。江戸時代から伝わる大名庭園など名勝地に指定された貴重な文化財が今も大切に管理、保存され、一般の人々に有料で公開されているのだ。これらの庭園、古くは江戸の時代から受け継がれてきたもの。庭園の様式はもちろんのこと、園内の建築物や配されている木々の1本1本まで、文化財として大切に管理されてきた。
庭園で味わえるのは歴史的な美だけではない。敷地の中には、外からでは想像もつかない緑の空間が広がっている。一歩足を踏み入れれば、今までいた町の喧騒とは別世界。中島のある大きな池に築山がしつらえられた日本庭園。深い山の中を歩いているかのように、木々が生い茂る散策道。自然美と様式美が調和する贅沢な癒しの空間が広がっているのだ。とくに今の季節は、これら都立庭園の自然を堪能できるベストシーズンかもしれない。鮮やかな新緑の木々が深山幽谷を作り出す。しかしあくまでここは東京の、それも都会のただ中なのだ。
日本庭園の利用客はやはり高年齢層が中心だというが、実際に訪れてみると家族連れや若いカップル、外国人のグループなどの姿も見かけられた。そして目を引いたのが“リピーター”とおぼしき入園客たちだ。休憩所やベンチがあることを知っていて、お弁当を持参してきた人。ポータブル・チェアに腰かけ、スケッチに精を出している人。東京都公園協会のスタッフはこう語る。「私たちがよく言うキャッチコピーがあるんです。それは“公園は都市のリビングルーム”というものです。もっともっと、皆さんに東京の緑や庭園を楽しんでほしいですね」。東京に暮らす我々がこうして都立庭園を楽しむことは、同時に東京の緑化という環境保全や、文化財を守ることにもつながる。そして何より、東京から離れて旅をしているかのような緑豊かなオアシスで、心行くまで癒されてほしい。
取材/写真協力(財)東京都公園協会 http://www.tokyo-park.or.jp/
(写真は六義園)
都内には、昔から今に大切に伝えられている庭園がある。そこには開発が及ばなかった自然だけでなく、江戸、明治、大正、そして昭和という東京の歴史が残されている。自然と歴史に触れられる都内の主な有料庭園を紹介しよう。
六義園
小石川後楽園とともに江戸の二大庭園に数えられていた六義園は、元禄8年(1695年)に柳沢吉保自ら設計し築いた「回遊式築山泉水庭園」の佇まいが今に伝えられている日本庭園。正門をくぐると、そこはまるで森の中。高く生い茂る木々のアーチを抜けると、そこに広がるのは中島を有する広大な池。都立9庭園の中でも、周囲に高いビルが少ない六義園の景観は開放感にあふれている。5月下旬にもなれば築山を彩るサツキが見ごろを迎え、訪れる人の目を楽しませてくれる。森の散策ルートを歩けば、まるでどこかの山間で森林浴をしている気分。よく見れば、青々とした葉はモミジの木々。秋になれば約400本のモミジが絶景の紅葉を見せてくれる。六義園は庭園の美と公園の開放感、そして森の安らぎにあふれている庭園なのだ。
★イベントも楽しもう!
サツキまつり(5/21〜29):「小野さゆり氏による「しの笛」の演奏」(5/28・29 13時〜、15時〜)無料
| 【時間】9〜17時(入園は16時30分まで)【休園】年末・年始【入園料】一般・中学生:300円 65歳以上:150円【問い合わせ】03-3941-2222【交通】JR・地下鉄南北線 駒込駅 徒歩7分【公園データ】開園面積:8万7809.41平方メートル/樹木数:6340本(高木)/主な植物:モミジ、ケヤキ、ミズキ、クスノキ
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浜離宮恩賜庭園
汐留のビル群を背景に、由緒ある日本庭園を堪能できるのが浜離宮恩賜庭園。庭園の中の「潮入の池」は海水を導き潮の満ち干によって池の趣が変わるという趣向が凝らされたもの。これは海辺の庭園で通常用いられていた様式だが、現在でも実際に海水が出入りしているのはここだけなのだ。都会のただ中で“和”に癒される空間。
| 【時間】9〜17時(入園は16時30分まで)【休園】年末・年始【入園料】一般・中学生:300円 65歳以上:150円【問い合わせ】03-3541-0200【交通】地下鉄・ゆりかもめ 汐留駅 徒歩7分【公園データ】開園面積:25万165.81平方メートル/樹木数:6077本(高木)/主な植物:タブノキ、ウメ、ツバキ、モミジ、ハナショウブ
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旧古河庭園
日本庭園と西洋庭園、そして石造りの洋館の調和が見事な庭園。園内には約90種180株のバラが植えられており、5月半ばごろから6月いっぱいが見ごろとなる。洋館建物内の見学は、往復はがきによる事前の申し込みが原則(大谷美術館:03-3910-8440)。
★イベントも楽しもう!
春バラと洋館のライトアップ(5/13〜22)
| 【時間】9〜17時(入園は16時30分まで)【休園】年末・年始【入園料】一般・中学生:150円 65歳以上:70円【問い合わせ】03-3910-0394【交通】JR 駒込駅 徒歩12分【公園データ】開園面積:3万780.36平方メートル/樹木数:2400本(高木)/主な植物:モミジ、ツバキ、バラ
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小石川後楽園
後楽園の広大な土地に広がる深山幽谷。広い園内をまんべんなく巡れば、軽く1時間はかかる。江戸時代初期、水戸徳川家の祖である頼房が中屋敷として作り、二代藩主の光圀の代に完成した庭園だ。光圀は明の遺臣、朱舜水の意見を取り入れて作庭。円月橋や西湖堤など中国趣味が豊かな回遊式築山泉水庭となった。「後楽園」という命名も朱舜水によるもの。初春から晩秋までさまざまな花を楽しめる庭園でもあり6月上旬からはおよそ1000平方メートルに植えられた660株のハナショウブが見ごろ。
| 【時間】9〜17時(入園は16時30分まで)【休園】年末・年始【入園料】一般・中学生:300円 65歳以上:150円【問い合わせ】03-3811-3015【交通】地下鉄大江戸線飯田橋駅 徒歩2分【公園データ】開園面積:7万847.17平方メートル/樹木数:4030本(高木)/主な植物:ロウバイ、ウメ、シダレザクラ
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茶屋で午後ティーもよし、手作りお弁当もよし
自分流“庭園の過ごし方”
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茶屋は景色の良いところに建てられているので、風景と一緒に味わおう。抹茶と和菓子セット(500円)。 |
有料庭園というと、京都や奈良の観光地然とした庭園を思い浮かべる人も多いはず。しかし、都立庭園では古都の庭園に負けない佇まいを味わいつつも、自分なりにリラックスして楽しんでほしい。通常時は基本的に敷物を広げることは禁止されているが、“庭園リピーター”たちは持参したお弁当を絶景の景色の中で楽しんでいる。庭園によってはベンチの数を多くしてあったり、休憩所が設置されているのでぜひ利用しよう。その際、ゴミはきちんと持ち帰って。
また、六義園や浜離宮恩賜庭園などには、昔の建築物を修復した風流な茶屋がある。浜離宮恩賜庭園の茶屋は、かつては海から房総を望むことができ、夕涼みや月見に使われていたという。池の中島から望む庭の眺めの良さは今も味わうことができる。庭園内の茶屋は、当然ベンチよりもはるかに絶景ポイントとなっているので、ぜひ一休みしてみては。