
vol.206
インタビュー
音楽が好き、歌うことが好きで、今年25周年
大友康平
ハウンド・ドッグ
やっぱり、ラブソングを歌いたいね
大友康平は、よく人を笑わせる。場を盛り上げるしゃべりには定評がある。現在ニッポン放送で毎週日曜昼に放送中の『大友康平のミュージックキャンプ』でも、ゲストとのトークは聞き物だ。この番組には、大友が他の人の歌をうたうことで名物となった『生歌ライブコーナー』もあるが、その選曲がまた渋い。「次になにを歌うか、考えるのが大変なんだけどね」と笑いながら、大友は歌うことを素直に楽しんでいる、そんな雰囲気だ。
「やっぱり歌うのが大好きだからね。ライブでバラードなんか歌うと、みんなシーンとして聞いてくれてるじゃないですか。で、歌い終わるとわーっと拍手が来る。それは本当に気持ちいい。あれほど気持ちいいことは他にはないかもしれないね」
歌う場はステージだ。ハウンド・ドッグは、デビュー以来毎年、その活動の多くをライブに費やしてきた。日本全国の人口5万人以上の町にすべて行くという前代未聞のツアーを、足かけ2年で行ったこともある。前代未聞といえば、87年の日本武道館連続10日間公演、90年の日本武道館連続15日間公演もある。今まで大友がライブで歌ってきた時間をつないだら、きっと月まで行って戻ってくるだろう。そうしてハウンド・ドッグは今年、デビュー25周年を迎えた。
「ひとつの曲、ひとつのアルバム、ひとつのステージ、目の前にあるものをその都度一生懸命やってきただけなんだけどね」
25年なんてただの数字さ、と言いたげな様子で大友はさらりと応える。しかし、その積み上げにこそ価値があることは明らかだ。ハウンド・ドッグは日本一のライブバンドの称号を誰にも譲り渡すことなく走り続けてきた。愛を歌い、叫びながら。
25周年イヤーとなった今年、4月20日には、NHK連続ドラマ『愛と青春のブギウギ』の主題歌になった『アカペラ』をリリース。6月29日にはニューアルバム『OM
EGA』発売、7月9日には日本武道館でのライブが予定されている。それに先駆けた3月には、ライブツアーでのみ歌い続けてきた名曲『SONGS』を、スタジオ録音盤としてリリースした。CDのパッケージを開けると、白いCDの上にうっすらと大きな文字で『お前に捧げよう』と書いてある。『SON
GS』はラブソングだ。
「『ff』とかを歌うのも気持ちいいんだけど、やっぱりラブソングは歌の基本だと思うんですよ。『涙のBirthday』とか歌ってると自分でもジーンとくるからね。あの時、こんなことがあったな、とか、うまく行かなかった恋とか、失恋とか、次の恋をどう踏み出したのか、その恋をどれだけ引きずってしまったかとか、歌を聞きながら思い出に浸ってもいいんじゃないっていうのがラブソングの特権のような気がするんですよ。古い言葉だけど、胸がキュンとくるのは絶対ラブソングだし、勇気をもらって心があったかくなる。だから僕は、やっぱりラブソングが好きだし、歌いたいんですよね」
『たったひとつの愛のうた』をリリースした時のインタビューでも、大友はラブソングについて話してくれていた。「今歌わなきゃいけないメッセージソングって、ラブソングなんだろうなってずっと思ってたんですよ。ラブソングが歌える世界って平和な世界だから、その世界をキープできることが一番尊いんだと思う。今は普通のラブソングにこそ本当の真実があるような気がするんです」。そしてその時の言葉は、「やっぱり歌の力を信じて25年間ツアーをやってきたわけだからね」と続いていた。
「ライブが好きで、旅が好きで、うまい飯を食うのが好きだから、ツアーは楽しいですよ。人によってはそういうのが嫌いでスタジオがいいっていう人もいるけど、俺はスタジオなんてすぐに出たい方だから(笑)。だから…好きなことでこれだけ長くやってこれたってのは幸せだよね。始めたころなんか、こんなにやるなんて全然思ってない。時代が良かったのかなという気が今はしますよね。俺たちが子供のころは、まだみんな平均に貧しくて、お医者さんの家だけにステレオがあるとか、そんな時代だから。俺は野球選手になるとか、プロのロッカーに憧れてるとか言っても、バカじゃないのって言う人は少なかったからね。夢は夢として、青臭くても語ることが出来たんですよ。デビューしてからも、ものすごい世の中活気づいていた時に俺たちはヒット曲が生まれたり、すごい数のツアーをやったり、バカバカしいくらい派手な打ち上げとかやってたからね。そういう意味でもやっぱり、いい時代だった…っていうとジジイみたいだけど(笑)、その時代にいてよかったと思いますよ。だから変わらないでこれたというか、変えられなかったというのが本当のところだと思うんですけど(笑)。だから…25周年といわれても、自分たちにとっては毎年毎年が何周年だと思うしね。たまたま25は数字の区切りがいいから、周りが盛り上げてくれることはすごくありがたいけど、僕たちとしてはいつも通り、いい曲を作って、いいコンサートやりたいなっていう、その2点だけを追求してやってますよ」
もちろん、25 年という数字に重さがないわけではない。過去を振り返れば、「何回やめようと思ったか。何回失望したか、何回絶望したか、それを乗り越えてきた回数だけは自慢できる」と大友は言う。
「これから先もそういうことがまったくないなんてことはありえないし、明日かもしれないし、10年後かもしれない。ただ、音楽が好きで、歌うことが好きだという軸は絶対ありますから、そう考えると、25年もやってこれたのはすごいことなのかもしれないね。デビューした年、うちのギターのやつに子供が生まれたんだけど、今25歳で子供がいるから、やつはおじいちゃんですよ。ロックンロール・グランパ(笑)。だから…まあ、いろんなことがあるけど、人生足るを知るってことですからね。足りないことを知ることが自分の本当の力ですから…なんて達観したことを言っちゃいけないんだな(笑)。ほんとうはいつも冗談じゃねえぜって思いながらやってますよ。こんなもんじゃねえ、冗談じゃねぇって。それが原動力ですから」
今年は1月に公開された井筒和幸監督の『パッチギ!』、現在公開中の『いらっしゃいませ、患者さま。』と、役者としての活躍も目を見張るものがある。
「役者に関しては、まだ歌が大好きってほどではないけど、何でも自分の歌に跳ね返ってくればいいなっていう。すべてが自分自身のプロモーション活動だと思えば映画も楽しいですよ」
歌が大好き。その言葉を何度も聞いたインタビューだった。シンプルだけど強い、歌への愛がつまった言葉。7月9日には、通算49回目の日本武道館公演を迎える。
取材・文/幸野敦子