
vol.206
インタビュー
永作博美
テレビ、映画、舞台―。女優・永作博美は、一つひとつの役をこなしながら、自分のペースで活躍の場所を広げてきた。そして、この夏。長塚圭史の『LAST SHOW』で、彼女は再び舞台を踏む。
ぎゅうっとした緊張感が“ふうっ〜”とほどける。
そこが気持ちがいいっていうか、楽しい。
くったくのない笑顔、つるつるとした肌、エプロン風のワンピースから除く足の細さには、思わずため息が出る。「キレイ?(笑)。否定しませんよ〜」と、永作博美はいたずらっぽい笑顔でジョークを飛ばす。特にケアはしていないと本人。けれど、その美しさは、同じ女性として歯ぎしりしてしまうほど。ちょっと食い下がって美の秘訣を聞くと、「最近、ラップ美容法は試したんだけど、アレはすごくいいですよ」
インタビューの合間に見せる普段着の永作博美は、とても親しみやすい。言葉を慎重に選んで的確に説明しつつ、よく笑い、時としてスルドイ突っ込みをタイミング良く入れる。言葉のキャッチボールを楽しめる人だ。
だが、これが女優・永作博美になるとガラリと変わる。これまで演じてきた女性は一筋縄ではいかない人物が多い。大きな問題を抱えたり、暗い過去があったり、ときにはそれを逸脱してどこか外れてしまったような役もあった。それが彼女の演技の幅を広げてきたともいえるだろう。
「いろいろ面白い役をやらせてもらってきたとは思います。でも、確信犯というわけではなく、すべてがタイミングで。『変わりたい』と意図してやってきたんじゃないんですよ。誰にでも、今の状況から変化したい気持ちとか時期は、必ず巡ってくるものだから、私もどこかでそういうのがあって、巡り合った作品もあるとは思います。でも、結局はどれもこれも縁なんですよね。だから、時として自分のタイミングではこの作品は違うかもっていうものもある。だけれど、その心の葛藤が役に投影されて、最終的にいい方向に向かっていったこともありましたから。変わりたいとか、変えたいとか、意識しなかったからこそ、もがいて弾けて脹らむような感覚が持てたのかな(笑)」
縁に導かれて一つひとつやってきた。そうしていくあいだに、活躍の場所もテレビ、舞台、映画としだいに広がってきた。
そしてこの夏、若手劇作家の成長株である長塚圭史が手がける『LAST SHOW』で、2年ぶりの舞台に挑む。プロデューサーの夫と元子役スターで今は女優の新婚カップルのもとに、義理の父が転がり込み、義父が息子の嫁に好意を寄せて、迫っていく。ねじれた人間関係のなかでストーリーが展開していく作品だ。
長塚圭史といえば、手がける作品はダークな要素が強い。
「ストレートなんだけれど、どこか奥のほうで渦を巻いてますよね、いつも(笑)。それが、長塚さんの本の魅力。いつかはご一緒したいと思っていたので、今回お話をいただいてとてもありがたかったですね。彼の舞台を体感してみたいっていう気持ちも、このお話しを受けた理由ですから」
本作で永作が演じるのは、義理の父に迫られる新妻だ。
「子役からやっている女優さんの役。実際の私よりもずっと長くやっているわけで、もっといろんなことを見てきた人だろうなと思います。長塚さんって、それぞれの役に絶対何かを抱えこませてくるので、彼女の背景が、どんな形になって作品に出てくるのか楽しみです」
まもなく稽古も始まる。
「舞台は1カ月ぐらいかけて作り上げていく。作っていく過程が分かって楽しいんですよ。公演が始まると、今度は緊張感ですね。舞台って、ぎゅうっと緊張感で覆われているので、全部終わりました、今日は終わりましたっていうと、“ふうっ〜”とほどける、そこが気持ちがいいっていうか、楽しいんですよ」
舞台が終われば、『空中庭園』など出演した映画も次々に上映が決まっている。「今は自分の道を歩いてますという意識が強い。自分の足の感覚、自分の踏んでいる土を感じて歩きたいな」と永作。これからも作品ごとにいろんな一面を見せてくれそうだ。
(本紙・酒井紫野)