
vol.208
インタビュー
Non Chords
その音も、スタイルも、文句なくカッコいいバンドがいる。パーカッション、ベース、サックスという、コード楽器不在の編成で組まれた世界にひとつしかないバンド。藤井尚之、斎藤ノブ、後藤次利によるNon Chordsの、メジャー第1弾となるアルバム『Tracing Point』がリリースされた。
この3人なら絶対面白いことが出来る。そう思ったんだよ。
Non Chords結成のきっかけは、昨年の『CROSSOVER JAPAN 04』に、藤井尚之から声をかけられる形で、藤井尚之バンドとして出演したことだ。
「その時のライブが本当に面白かったんです」と後藤次利が言う。その後、後藤が藤井と斎藤に声をかけ、前代未聞のバンドが結成されることになる。とはいっても、バンドとしての動きは何も考えていなかったという。この3人なら、何か面白いことができそう。その本能的予感だけが発想の原点だ。
後藤
「尚ちゃんとは、彼の最初のソロの『Naturally』をやった付き合いだけど、彼は独特のグルーヴを持ってる。ノブもそうだけど、そういうところが好きだったんですよ。今は時代的に機械のビートとやることが多いけど、僕らは3人とも、機械をも自分のグルーヴに巻き込んでしまうタイプだから、この人たちとやれば何か面白いことができるなっていう気持ち。だから、人ありきだよね」
斎藤ノブも藤井尚之も、「そうだよね」という顔で後藤の話を聞いている。彼らの自然な佇まいを見ただけで、通じ合ってる同士というのはよくわかる。ところで、コード楽器が不在というこのバンド。曲作りはどのように行われるのか、興味津々で聞いてみた。
後藤
「まあ、多少頭は使うけど、頭以上に本能でやってる感じかな」
斎藤
「一番最初はプリプロといって、コンピューターに、ベースのフレーズ、ドラムのフレーズと、モチーフとしてのメロディーを乗せたデモテープみたいなのを作るんですよ。で、それに、僕が思うがままのパーカッションを動物的に入れちゃうわけ。その後、尚ちゃんがモチーフの感じのフレーズを吹いて、出来上がり。だから最後にならないとどんな曲が出来るかわからない。3人がいろんな部分で“歌ってる”のをガーッと合わせて、“これいいよね”って感じで曲が出来上がっていく。この説明が一番分かりやすいかな」
後藤
「完璧な音を作ろうとすれば、ここでコードを入れてとかあるけど、僕らは不自由な感じがいいんだよね」
藤井
「僕としては、実はコードが欲しかったりしたんだけど…。自分が曲を作る時もギターで作るから、せめてレコーディングの時くらいはコードを鳴らして、後で抜けばいいのにと思ったんですけど、それを言えないまま最初のレコーディングが終わってしまって(笑)。で、今年の1月にツアーをやったんですけど、ライブをやるうちにだんだん自分のポジションが分かってきた。だから、今回のアルバムを作った時は悩みは一切なかったですね」
今まで多くの音楽の仕事に関わってきたが、「このバンドが一番自分が出るし、聴けるし、一緒にどっか行けるし、バラバラにもなる。めちゃくちゃ面白い」と斎藤ノブは言う。
斎藤
「音楽を本当にプロとして楽しめるバンドだから、最高ですよ。とにかく、この3つの楽器でやってるバンドって世界にひとつだけだから、多分、聴くとクセになると思う。やってる自分もクセになっちゃうくらいだから」
藤井
「経験とかキャリアは、僕はふたりに全然追いついてないから、最初は緊張したけど、集中してドカーンとやる大切さを感じたし、結局僕もそれが楽しくなってきたんですよ。あとはスタジオにいろんなお酒を用意してもらって、飲みながらやってるから、たいがい酔っ払って吹いてるという(笑)」
斎藤
「お好み焼きとか焼きソバのネタを家で仕込んできて、ホットプレートで作ったりもしたよね」
藤井
「スタジオに居酒屋の匂いがするんですよ(笑)」
後藤
「出前の弁当を食べてたんじゃ俺たちの音は出せないからね(笑)」
大人の3人が楽しんでる感じは、聴く側にもしっかり伝わってくる。
斎藤
「俺たちは人間がグルーヴを出してるから、すごくヒューマンリズムだよね。やっぱり歳と共に、自分で選んでやりたいことは見えてくるし、“本当に好き”という部分はものすごく大事だと思う。人は一生の間に、何人の人とめぐり合って、何人の人と離れてっていうのがあるじゃないですか。その中で、仕事でもプライベートでも何でもオッケーっていう人はおのずと出てくるから、このふたりとやりたいと思ったのも、人間的にすごく好きだという部分がものすごく大きい。プラス音楽が素晴らしくて、刺激的で、一緒にやることでものすごくポジティブになる自分がいるから、このバンドはやっていきたいってすごく思いますね」
後藤
「去年、尚ちゃんから声をかけられなかったら、こんなふうになってないもんね。ホントにありがとうございます(笑)」
藤井
「いやいや…。僕も、自分が今まで開いたことのない引き出しをふたりがあけてくれるというか、知らない自分を発見できた。あとはもともと僕もバンド出身だから、誰かと一緒にやるのが好きみたいです。自分にない感性をぶつけられて、それに応えようとする。そうやって自分を磨けることもすごくありがたいです」
昨年に続き、6月4日には、『CROSSOVER JAPAN 05』に出演。8月30日の恵比寿リキッドルームを皮切りにツアーも始まる。
斎藤
「ライブでは話しもしまくるし、全身全霊でやるからね。前回のツアーの時も、4日連チャンで計8ステージやったけど、大丈夫だった。しかもどんどん盛り上がっていったよね」
後藤
「普通は、明日があるから今日は早く寝ようとかあるけど、このふたりは終わると毎日祭りなの(笑)」
藤井
「アドレナリンが出てますから、おとなしくしてられないんですよ」
斎藤
「次ちゃんだって、飲まないのに祭りの真っただ中にいるからね(笑)。今回のツアーも楽しいと思う。その日ごとに演奏も違うと思うから、全部見てくれたら楽しいと思いますよ」
遊び心と余裕と、好きな音楽に浸っている時の心の弾みが聞こえてくるような、粋な大人のカッコいい音。斎藤ノブが言うように、Non Chordsは「クセになってしまう」音楽である。
(取材・文/幸野敦子)

6月1日リリースのニューアルバム『Tracing Point』。CDだけのものと、CD+DVDの2種類あるが、ぜひDVDを見ることをお勧めする。理由は、掛け値なくカッコイイから。
「撮影した場所は、横須賀の造船所のドック。3曲撮ったんだけど、どれも違う雰囲気で、夜になって撮影した『禁じられた遊び』は、セットを使ったと思えるくらいライティングもきれいなんですよ。その場所は、僕たちが使った後、もう使えなくなっちゃったから、このDVDで見るしかないんです(笑)」と、斎藤ノブさん。HPアドレス http://www.avexnet.or.jp/nonchords/
Left CD ONLY 2500円(税込み) Right CD+DVD 3200円(税込み)DVDにはPV3曲収録
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