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vol.208
(2005.06/06-06/12)
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Movie vol.208

インタビュー
“犬”として生きてきたファイターが今、愛のために命をかける−

『ダニー・ザ・ドッグ』 主演ジェット・リー

僕は“ダニー”となって、本当の涙を流したんだ−

 リュック・ベッソン×『HERO』のジェット・リー×『ミリオンダラー・ベイビー』の名優モーガン・フリーマン。この異色かつ豪華なコラボレーションが、かつてないほど純粋な愛のアクション・ドラマを生み出した。首輪をはめられ、主人のために標的を倒す“犬”として育てられた主人公、ダニーを、ジェット・リーが、アクションだけでなく、演技で魅せる話題作だ。
 「昨今、強ければ強いほどヒーローになれるという誤解があるように思えるんだ。でも、武術が強いからいい人だとは限らない。悪い奴だって、武術に長けていて強い人はいるわけだからね。暴力がすべてを解決するわけではないんだ。僕は、この映画を通してそんなところを伝えたいと思った」

 今回脚本を手がけたリュック・ベッソンとは『キス・オブ・ザ・ドラゴン』以来のタッグ。
 「彼は、僕がどういう映画を撮りたいかを、とてもよく理解してくれているんだ。ハリウッドでは何年かけても作ることができないであろう、この映画のような作品を僕が撮りたいんだということを、知っている友人なんだよ」

 本作の見どころは、アクションスターとして名高かったジェットが、モーガン・フリーマンやボブ・ホスキンスといった名優たちと、堂々演技で渡り合っていることだ。最強のファイターでありながら、幼子のように純粋な主人公を演じる姿は、これまでのイメージを覆す。
 「彼らのような役者たちは、ああしたほうがいいとかこうすべきだ、というような指示をせずに、現場で身をもって相手をリードし、芝居に入らせる。だから、現場に行けば、自然とジェット・リーという立場を忘れさせてくれたんだよ。これが素晴らしい役者が持つ力なんだと感じたね。彼らは、僕だけじゃなく、スタッフたちにまで良い影響を与えていたよ。そうそう、ホスキンスさんと初めて会った日に、彼が僕の髪をカットするシーンがあったんだ。映画の中ではカットされているんだけどね。彼はプロの美容師じゃないから、切った髪はまるで犬にでも噛まれたような状態になっちゃった。スタッフは皆、かっこいいよと言ってくれたけど、ヘアメイクさんは泣きそうになってた。こんな状態と同じようにカットすることなんてできない、って(笑)」

 モーガン演じるサムの愛情により自己を発見し、人間性を取り戻していくダニー。ジェットにとっての自己発見とは…。
 「考えてみると、幼いころから全く意識をしないまま武術の練習を始め、映画にも出演するようになった。武術を世の中に広めて、それにより自分の存在価値をいろいろな人に見てもらいたいと思い、自分の価値が上がればさらに上を狙いたいと思うようになる。僕が初めて自己発見したのは36歳の時だった。ハリウッドで仕事をするようになっていたとき、もうやめようかと考えていた時期があったんだ。今まで自分がやってきたことが虚像に過ぎず、どんなに地位や名誉や権力があっても、自分の心の中に平穏をもたらすことはできない、と気がついた。それで引退して仏教の修行をしようと決心したけれど、普段の生活のなかでも心の平穏を得ることはできるはずだと諭されたんだよ」

 敬虔な仏教徒として知られるジェット。引退を考えていたとは衝撃だが、本作で初めて涙を流すシーンを見せたように俳優の幅を広げていることは間違いない。
 「ダニーの母親に関する唯一の記憶は音楽だった。音楽を聞き、愛情とは何か、家族とは何かということが再び蘇ってくる。自分が“ダニー”であれば、自然に涙が出てくるんだよ。このとき、僕がジェット・リーで、演技しているんだと意識してしまったら、涙を流したとしても単なるパフォーマンスでしかないんだ」

 とはいえ監督のルイ・レテリエもジェットを起用しておきながらアクションシーンをないがしろにする気など毛頭ない。
 「アクション監督のユエン・ウーピンとは、ダニーの心理状況について時間をかけて話し合った。ダニーの最初の戦い方は1つの標的を定めたらそこを一点張りで攻撃していく。まるで犬のような感じなんだ。ところがだんだん人間性が回復されていくにしたがって、戦いのスタイルも変わっていく。つまり、アクションとは物語の展開や、役どころを表現するための一つの手段。人物の心理状態に沿うものでなければならないんだよ」

 感情もなく、主人の言いなりに人を傷つけてきた“殺人犬”が、自らの意思で暴力から愛する人を守ろうと立ち上がる。ジェット・リーの新境地ともいうべき、感動のアクション・ドラマだ。  



(本紙・秋吉布由子)
『ダニー・ザ・ドッグ』
監督:ルイ・レテリエ 出演:ジェット・リー、モーガン・フリーマン、ボブ・ホスキンス他 アスミック・エース配給/1時間43分/丸の内プラゼールほか松竹・東急系にて6月25日よりロードショー公開
【URL】http://www.dannythedog.jp/
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