今週のTOKYO HEADLINE
vol.210
(2005.06/27-07/03)
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showbiz vol.210

インタビュー

玉山鉄二

端正な顔立ちと、落ち着いた声のトーン。役者としてひとつひとつの役に没頭する玉山鉄二は、若手の中でも本格派であり、正統派という印象が強い。その玉山が、映画初の単独主演作で、とんでもなくアツイ男を演じる。しかも、ダメ選手が集まった高校の野球部を甲子園に出場させるという話。全力学園の野球部キャプテン、不屈闘志が巻き起こす行動は、ありえないことの連続だ。しかし映画『逆境ナイン』は、笑って見ているうちに、なぜか感動するヒューマンドラマ。役者として「ひとつの殻に閉じこもるのは大嫌い」という玉山が放った、まさに9回裏満塁逆転ランニングホームランなのである。

ありえないと思いながら、感動してる自分がいた。

 玉山が『逆境ナイン』で不屈闘志を演じるという企画は、クールに見える玉山の中に、熱さがあることを見抜いたある人との出会いからスタートした。
「もともと3年くらい前に、今回の映画のプロデューサーの方とお会いして話しをしたことがあったんですけど、その時、“実は玉山君は熱い男なんだね”って言われたんですよ。で、今回この映画の企画を進める中で、監督やプロデューサーが、“(不屈をやるのは)玉しかいない”と言ってくれて。実際台本を読んだら、独特の世界感や強いパワーを感じてすごく面白かった。僕はそれまで、ナチュラルな役だったり、影があったり、無機質な感じの役が多かったから、こういう役で声をかけてもらえたのはすごく貴重なことだし、幸せだと思いましたね。撮影に入る前に原作も読んだんですけど、僕が思い描いていた不屈のイメージとギャップはなかったので、不屈になるために、とりあえず役者の努力でできることをやろうと思って、撮影の2カ月前くらいからK-1選手のトレーナーをつけて、週4日以上、毎日3時間くらいトレーニングを始めたんです。プロテインとか、筋肉増強剤も飲んで、食事も、炭水化物と糖分を抜いて、たんぱく質中心の食事に切り替えたんですよ」

 その甲斐あって、63キロだった体重は、筋肉が増えて68、69キロに。体脂肪率は、18%からなんと9%まで落ちた。

 出演を快諾し、役作りに邁進した玉山だが、この映画には、もうひとつのサイドストーリーがある。実はこの時点ではまだ撮影のゴーサインは出ていなかったのだ。「面白いだろうけど、映画化するにはリスクが大き過ぎない?」というのがその主な理由だった。しかし、絶対に面白いと確信したプロデューサーと監督は、あきらめずに企画を進め、台本を何度も書き直し、玉山の出演を決め、堀北真希、ココリコの田中直樹、藤岡弘、などの出演も決めてしまった。そして最後には関係者も、こんなに面白いものをやらないでどうする、と判断。アツイ思いは山をも動かした。
「途中まで映画化が決まってなかったってことは、実は最近初めて知ったんです(笑)。でも、そういう思いを持ってるクリエーターの方って、すごく貴重じゃないですか。思っても行動を起こすにはリスクを負わなきゃいけないから、実際の行動に出るのは難しいと思うんですよ。そういうことを考えても、この仕事と人間関係は大切にしなきゃいけないとすごく思いましたね」

 不屈闘志は、バカがつくほどアツイ男である。すぐ燃えて、すぐ感動する。試合前日に利き腕の右腕を怪我した時も、「ヒーローは全員左利きだった」と納得し、逆境に感謝さえする。恋愛だって全力だ。そのせいで、さまざまな勘違いも引き起こすのだが。
「不屈は極端だけど、共感できる部分はあるんですよ。筋が通らないことに反発したり、みんながしょうがないと言うことでも、不屈は自分が納得できないものは納得しない。追い求めてるものはすごくくだらない小さいものなのに、すごく必死になってる部分とかは好きですね。だから不屈を演じる中で、愛着が持てるキャラクターにしたかったっていうのは一番にありました。みんなに愛されるべき人間というか。ただ、映画としては、ある意味すごく身勝手なんですよ。お客さんのことは投げっぱなしで、勝手にアツく突き進んでいて、誰も突っ込みを入れる人がいない(笑)。田中さんとか藤岡さんの演技を見ていて、僕らも笑いを堪えるのが大変だったし、みんなでどんどん悪乗りしちゃうのを、監督がブレーキかけたくらいでしたから。でも、笑いの中にもメッセージ性はあるので、心の中で突っ込みながら見てもらえれば、すごく楽しんでもらえると思います」

 撮影は三重県で合宿のような形で行われた。現場を離れるとテンションが落ちてしまうからと、玉山は撮影中、東京には戻っていない。クランクアップし、久しぶりに帰った時、ひとつ感じたことがあった。
「新幹線に乗って品川駅で降りて、改札口に向かった時、あまりの人の多さに唖然としましたね。歩くスピードもそうだし、あわただし過ぎるというか。それはもう結構身にしみて分かったかな。自分がまたその世界に戻ることに、疑問というか、不安も少し感じたけど、でも、僕はこの東京でやらなきゃいけないこともあるし、伝えたいこともあるから。僕はここでまた頑張らなきゃいけないなって思いましたね」

 映画のラストでは、逆境につぐ逆境が押し寄せる。どうしても勝たなければいけない試合で、不覚にも気絶した不屈が気付くと、スコアは112対0。どうやって勝とうとするのかここでは秘密だが、試写会ではそのシーンで笑いが巻き起こった。
「僕がこの映画を不思議だと思った理由もそこなんですけど、あそこで、正直、不覚にも僕は感動しちゃったんですよ(笑)。冷静に考えて、その成り行きはくだらなすぎると心の隙間では思ってるんだけど、感動しちゃってる。撮影してる時、監督が、これは泣かせる映画にするからと言ってたんです。コメディーだけど、ヒューマンムービーだからって。それを聞いた時はどうするんだろうと思ったんだけど、上手くできたんじゃないのかなと思いますね」

 それにしても、玉山鉄二の初の単独主演作がこれで良かったのか? 失礼を承知で聞くと、玉山は大らかに笑いながら答えた。
「いや、むしろ、これじゃなきゃダメなんです(笑)。まあ、たまたまですけどね。僕は逆に、この映画のために資金を出してくださった方々とか、企画を押し上げた方たちが本当にすごいと思うから。そこに参加できたことは幸せですよね」

『逆境ナイン』の公開は7月2日。見たこともない玉山鉄二が、とんでもない青春の笑いと感動を届ける。

取材・文/幸野敦子・ヘアメイク/矢澤康隆(プラスチック)・スタイリスト/行定幸治(KiKi inc.)

『逆境ナイン』
  原作・島本和彦
『逆境ナイン』/監督・羽住英一郎/脚本・福田雄一 出演/玉山鉄二、堀北真希、田中直樹、小倉久寛、古田新太、藤岡弘、他
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