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vol.213
(2005.07/18-07/24)
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showbiz vol.213

インタビュー
MISATO V20 スタジアム伝説〜最終章〜
NO SIDE 2005・8・6 インボイスSEIBUドーム

渡辺美里

弱冠二十歳で西武球場のステージに立ってから20回目の夏。渡辺美里の夏の風物詩だった西武ドームでのライブは、今年が一区切りとなる。うつろいゆく時の中で20年の重みを感じながら、しかし彼女は留まることを選ばない。それは始まりのための終わり。歌い続ける美里は、この夏、また新しい自分に出会うための大きな一歩を踏み出そうとしている。

この20年、いろんなことがあっても、
歌うことを嫌だと思ったことは1度もなかった

 2005年は、渡辺美里にとってデビュー20周年という記念すべき年になった。乃木坂にある所属レコード会社のインタビュールーム。街の風景は変わったが、窓の外には20年前と変わらない夏の空が広がっていた。長いようで短い、短いようでやはり長い20年。さまざまな出来事を経験しながら、美里はこの日も変わらぬ笑顔と美しい声で、その思いを話してくれた。
 「最初の10年よりその後の10年のほうが、同じ作品を作るにしても、本当にいいこともあれば、人には話さない、奥歯をくいしばるような思いをすることもたくさんありましたね。でもその分、自分の作品が世の中に生まれて、聴きたいと思ってくださる方に届いていく喜びも人一倍感じることができたから、今は誰よりも自分が20周年を祝ってあげたい気持ちかな。歌い手・渡辺美里に対して“ようやってる”と。その濃い感じ、ゆるゆるではない感じが、いいかもって思いますね」

 デビューは19歳。この20年は、“火の玉ガール”だった女の子が、大人の女性へと変化してゆく年月でもあった。怖いもの知らずの純粋さと、経験がもたらす思慮深さ。相反するものの絶妙なバランスの中に美里は立ち続けている。

 「ひたすら“いけーっ!”という時代は、知らない分だけ今より強かった気がするんですよ。大人になって、分かってしまったがゆえに辛いこともたくさんありますから。自分らしさって、便利な言葉だけどとても難しくて、そのバランスを取るためには、自分を解き放っていくことも、時には許してあげることも、叱ることも自分でできるようにならなきゃいけない。でも、そうやって自分と向き合いながらやっていく感じが、今はすごく面白いと思いますね。いろんな女性を見て、ああ、この人素敵だなって思えることも多くなってきたし。女性同士って、どうしても厳しい目で見るじゃないですか。結婚にしても、職業にしても。そこで女性としての負けん気みたいなのが前面に出てる人を見ると、なんか嫌だなぁと思うんですよ。そういう意味ではまだまだ瀬戸内寂聴さんの世界に行くにはほど遠いんですけど(笑)。人の素敵なところにたくさん気付ける自分でいたいなと思いますね」 自分らしく、よりよくありたいから、前を向いて歩く。美里の歌は、そんな女の子たちの共感を一身に集めてきた。一生懸命で明るいんだけど、そのひたむきさに泣いてしまう。美里の歌には、進むための涙がたくさん詰まっている。

 「この間、(大江)千里さんに言われたんですよ。美里の歌って、ワンフレーズごとに“それを言わんでくれー”と思うけど、涙を流しながら聴きたくなっちゃうんだよねって。だから、前向きに生きてるからこそせつないみたいな部分はあるかもしれないですね。でも、そうやって生きてるのが素敵なんだよっていう世の中であってほしいです。胸がせつなくなる感情っていうのは、生まれたての強さとはまた違うところにある感情だから。自分が30代の後半になったから言うわけじゃないけど、この人、こういう経験してるからいい笑顔なんだって思えるかどうかは、受け手の成長の度合いに比例してる気がするんですよ。表面ではない深いところで心が動くような、本当の意味で豊かな状況にこの社会がなるといいなって、それは常々思いますね」 そんな美里と一緒に歩んできたファンと迎える20年目の夏。8月6日、美里は今年で20年目となる西武ドームのステージに立つ。今までの中で特に印象深かったことは何かと聞くと、「1曲1曲に思い出がある」というのが答えだった。

 「18年目の時に初めて千里さんが来てくれたんですよ。デビュー前から友達なのに、友達じゃないみたいでしょう(笑)。それを言うと、“まだ言うんかい”って言われるけど(笑)。その時、せっかくだからということで一緒に歌った『10years』は、18年間ためてた思いというか、一番好きでしたね。球場に屋根がついて、ストリングスを入れられるようになって歌った『Lov in’ you』とか、西武球場では1回しか歌ったことがない『Breath』とかも好きだったし。去年の、久しぶりにダンサーと一緒にアクティブに作り上げたステージも、みんなで知らない世界にたどり着いた感があってすごく印象深い。今年もとにかく…ちゃんとやりたいです(笑)」

 その西武ドームライブは、とりあえず今年が最後。

 しかしそれは「別のところでまた花を咲かせることもやってみたい」というだけのことだ。歌い続ける美里に、終わりという文字はない。

 「やっぱりスタジアムは好きなんですよ。サッカーが好きでよく見てるんだけど、“ナカター!”とか思いながら、このスタジアムで歌いたいとか思うの(笑)。音の響きが良さそうとかね」 歌いたいという思い。それは渡辺美里のすべてといってもいい。

 「この仕事をやっていて、例えば人に会いたくないと思うことは何度もあったとしても、歌うことが嫌だと思ったことは1度もない。歌うことによって解き放たれて、また自分らしさを取り戻すというか。歌は私の命ですって言えるほど大袈裟なものではないけれど、自分をうまくめぐらせていくために必要なものだと思いますね。デビュー当時から一緒にレコーディングしてくれているエンジニアの伊藤さんが、“美里は歌うと機嫌が直る”って言うんですよ。何もかも嫌でプリプリしていても、歌い始めると“ほーら、もう元気になっちゃった”って(笑)。だから、同じ好きでも、好きの濃度が違うかな。そうじゃなかったら20年続かなかったと思うし、スタジアムで歌うという環境を与えてもらったから、いざそこに立った時、この空間を自分のものにすることを体感しながら抱きしめていったんだと思うんですよ。だから、歌うことっていうのは、あたりまえのように自分の中にあることですね」

 自宅のキッチンのテーブルが、家の中では一番落ち着く場所だそうだ。「全然素敵じゃない、普通のテーブルなの」と美里は笑う。雑然と、いろんなことを書きなぐった紙が置かれたその場所から、たくさんの歌が生まれてきた。そして美里が歌うことで、その歌は輝き始める。20年目の夏から21年目へ。歌への変わらぬ情熱を抱きしめ、美里はまた新しい一歩を踏み出す。

(本紙・幸野敦子)

「これは特別なアルバム」。3枚組『エム・ルネサンス』


 7月12日は美里の誕生日だ。その翌日の新たな1年の始まりの日、7月13日に、ファンからのリクエストをもとに作り上げられた、美里とファンとの記念碑的なアルバム『M・Renaissance〜エム・ルネサンス〜』がリリースされた。
「やっぱり、この20年、私ひとりが確固たる意志を持っていたから続けられたわけではなく、聴いてくださる方がいて、コンサートでその曲が成長していったと思うんですよ。そこで培ってきたファンとの絆みたいなものを、“with”というキーワードで、3枚のディスクにそれぞれ『Song with you』『Summer with you』『Love with you』と分けて選曲して、パッキングして出来上がったのが『M・Renaissance』。すごく特別なアルバムで、手塩にかけた箱入り娘って感じですね」
 初回盤パッケージも豪華箱入り仕様。そこに“箱入り娘”をかけたと、美里は屈託のない笑顔でジョークを飛ばした。全曲につけられたセルフライナーノーツには、曲の誕生秘話や当時のエピソード、曲に対する思いなどが綴られている。名曲ぞろいの全47曲。胸がきゅんとするエバーグリーンな名盤だ。
■20年連続、そしてFINALとなるスタジアムライヴ 『MISATO V20 スタジアム伝説〜最終章〜NO SIDE』 8月6日(土)インボイスSEIBUドーム 開場15:00 開演17:00 追加席発売中! 問い合わせ:ディスクガレージ tel:03-5436-9600
■美里の20年の歩みを展示した『V20 MISATO ギャラリー』を、7月20日まで池袋オレンジギャラリーにて開催中。(Tel:03-3971-5934) 詳細はオフィシャルサイト http://www.misatowatanabe.com(PC、携帯共通)まで。
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