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vol.214
(2005.07/25-07/31)
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showbiz vol.214

インタビュー
日本映画史上空前のスケールで製作されたエンターテインメント超大作『亡国のイージス』公開

中井貴一

『亡国のイージス』で中井が演じたホ・ヨンファという男は、愛する祖国を変革するためにテロリストになった男だ。ヨンファは訓練航海中の海上自衛隊の最新鋭イージス艦『いそかぜ』を乗っ取り、生物化学兵器の照準を東京に向け、日本政府にある要求を突きつける。それに対し、防衛庁情報局の渥美(佐藤浩市)や、特殊工作員・如月(勝地涼)、そして艦の先任伍長、仙石(真田広之)が、戦いを挑んでいく。自分は何のために生きているのか? 重厚なテーマを極上のエンターテインメントに仕上げた見ごたえたっぷりの娯楽大作だ。

「自分にとって誇りとは何か?
それを模索しなきゃいけないと思うんです」

「この映画は、男たちがそれぞれの誇りを守ろうとして闘っていく様を描いた作品だと思うんですよね」

 端正な横顔にかすかな笑みを浮かべながら、美しい語り口調で中井貴一は話す。この夏の超話題作『亡国のイージス』で、中井は某国の対日工作員ホ・ヨンファ役を演じた。

 「男って、誇りを持つことで強さを保っていた生き物だと思うんですよ。昔なら、その誇りは家庭が支えていたかもしれない。外で理不尽なことがあっても、あなたはすごいという奥さんの一言で支えられていたというかね。でも、今、あなたは日本人として誇りを持っていますかと聞かれた時、それって何に対する誇りと思う人って多いと思うんですよ。それが映画の男たちは、例えばヨンファは祖国への誇り、仙石は自衛隊員としての誇り、それを最大限守ろうとしてぶつかっていく。最近、僕もプライベートで、自分の日本人としての誇りって何だろうって考えることがあったから、演じていくうえでそれがひとつの共通点になったのかなと思いますね」

 それを考えるきっかけになったひとつに、中国映画『ヘブン・アンド・アース』への出演があった。

 「誇りって、それぞれの心の中にあるものだから、これだというのをなかなか言葉で表現できない。それはやっぱりその国の歴史や文化の中にあると思うんです。でも、中国で映画のロケをやっていた時、日本人は僕だけだったから質問攻めに遭うんだけど、いかに自分が日本の文化や歴史について学んでいないかということを思い知らされるわけですよ。そこで僕が、“日本が誇れるのは、便利だっていうことなんだ(笑)。夜中の2時におにぎりが食いたいと思ったら5分も歩けば買えるんだぞ。500メートルおきに自動販売機があって、小銭を持ってたらいつでもジュースが買えるんだぞ”と言っても、でもなぁ、これ、いばれることじゃないなって(笑)。ある意味の便利さって、すごく人間が追い求めてるものだけど、いざ人間と人間が話した時には非常に説得力がない(笑)。でも、戦後の日本が追い求めた経済の発展という誇りはそこなんですよ。だけど“そこで胸張るには、ちっちぇーな、俺”と思ってしまうんですよね。だから、もっと自分で探さなきゃいけないと。もっと自分たちが誇りを持てることを模索して、提案していかなきゃいけないなと思ったんですよ」

 たとえ答えが見つからなくても、探すことをやめられない。人間というのは、なんと面倒くさい生き物だろう。「本当だよね」と、中井は微笑みながらうなずく。

 「うちで犬を飼ってるんだけど、犬を見てると、いいなぁーって思うよね(笑)。犬は犬なりに悩んでるんだろうけど、餌をやると幸せそうだし、食っちゃ遊んでるし、散歩したらいろんなところにウンコしちゃう。幸せな人生だよなって。人間が突然そんなことやるわけにはいけないからね(笑)」

 しかし、考えるきっかけはいろんなところに転がっている。この映画もそのひとつとして、さまざまなものを観客の心に投げかけるだろう。見る者の目を奪うには十分すぎるほどのオールスターキャストで、人間ぽくて、単純でもあり、美しくも、悲しくもある男たちの姿がリアリティーをもって描かれている。

 「ほとんど男だけの現場だったから殺伐としてましたけどね(笑)。特に僕は工作員の役で、みなさんの輪の中に入らないようにしていたから、さみしい撮影生活を送ってました。でも、阪本(順治)監督の現場をまとめる力がすごくて、本当に船みたいだったんですよ。『亡国のイージス』という船にみんなで乗っていて、艦長が阪本順治。その艦長のために俺たちは精一杯自分たちのやれることをやるっていう船が出来上がっていたような気がしますね。僕は、映画っていうのはヒットが不可欠だと思っているんです。ヒットすることで、僕らは映画を作ってくれた映画会社にお金を返せる。もちろんヒットより大切なものもあるけど、阪本監督ならヒットだけじゃ終わらない。そのためにも今回の作品はエポックだと思うから、役者の間では、絶対に頑張ってキャンペーンして、阪本順治を男にしようって、みんなで言い合ってたんですよ。やっぱり映画界にはいい監督が残ってもらわないと。上の人たちの力を借りながら、後輩に、こういう生き方があるんだっていう後ろ姿を見せていきたいっていうのが、今の俺たちが考えなきゃいけないことだと思うんですよね」

 共演した真田広之、佐藤浩市とは盟友といえる間柄。特に佐藤とは親友で、『壬生義士伝』でそれぞれ日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞と主演男優賞に輝いた時、中井の名前を告げるアナウンスに、佐藤は涙を流した。

 「あの時は、浩市が賞を取ったことが僕も本当に嬉しかった。人が賞を取ってこんなにうれしいのは初めてだと思ったくらいで。だから浩市としても、頼りがいのない友達が、よかったな、この野郎、っていう気持ちで喜んでくれたと思うんですよ。僕らはデビューして20何年、真田さんは子役からだからもっとキャリアがあるけど、やっぱり生き残っていくのは大変な世界ですよ。それが同じ映画の同じセットの上で芝居ができてること。それだけですごい感謝しちゃう感じ。何かこう、セットの上でお互いに“ここまでやってこれたね”って。“これから先も、頑張ろうよ”って話してたことは、やっぱり普通とは全然違う特別な思いがありましたよね」

 名優同士の競演でみせる、男たちの人間模様。あなたなら、ここで描かれたことをどう考えるか? 眠っていた感情に出会える貴重な作品である。

>>公開情報はコチラ

(取材・文/幸野敦子)
初日舞台あいさつ決定
公開初日となる30日。中井貴一をはじめ、真田広之、寺尾聰、佐藤浩市、勝地涼らと原作者の福井晴敏、阪本順治監督が、有楽町の丸の内ピカデリー1で舞台あいさつを行うことが決定した。
詳細は、オフィシャルサイト(http://aegis.goo.ne.jp)にて。
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