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vol.214
(2005.07/25-07/31)
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Movie vol.214

インタビュー
はじめての吹き替えは“ペンギン”

大沢たかお

吹き替え初挑戦の大沢たかおが語る映画『皇帝ペンギン』の魅力

「生きることの本質に触れた時、人は初めて癒される」

 大沢は彼らのことを「あの人たち」と呼んだ。J-WAVEでの番組収録後に行われたインタビュー。大沢は「どこに行っても“ペンギンやってますね”って言われる。あの人たちって人気なんですね」と柔らかく笑った。

 フランスで『ディープブルー』『WATARIDORI』を超えるドキュメンタリーと高い評価を受けた『皇帝ペンギン』。全米では『宇宙戦争』を抜き、1館あたりの興行成績1位の座についた超話題作が先週末から全国公開された。その吹き替え版の声を、石田ひかり、神木隆之介とともに担当したのが大沢だ。彼は父親ペンギンの声を演じる。「あの人」とは、極寒の南極に生きる皇帝ペンギンたちのことだ。
 
 「声の仕事はやったことがなかったし、やるつもりもなかったし、できないと思ってた」という大沢が、この吹き替え版に挑んだのには理由がある。

 「厳しい条件ばかりの世界でただひたすら命がけで生き、子供を育てるという当たり前さのすごみ、美しさが胸に溶けてきた、ということもあるんですが、脚本を読んだときに、これは、あの人たちのセリフでもあり、あの人たちの心の言葉でもあり、ナレーションでもあるんだって感じたんです。それで見終わったときに、突然やってみたいなって思ったんです」

 声の仕事の経験のなかった大沢。それだけに“声の演技”には相当の苦労があった。

 「セリフ、ナレーション、詩的な言葉が交じった言葉の使い分けが難しかった。もうね、すごいストレスでしたよ。この人たちの気持ちを一生懸命自分なりに伝えようとするのに自分の言葉の力では伝えられない。スタジオに入ると、目の前のモニターにこの人たちの映像があるんですよ。目の前にいる彼らの気持ちを出してあげたいのに出し方が分からない。そのストレスで強烈にイライラしてました(笑)」

 現場では監督が「彼らは今、すごいつらい状況なんですよ、想像してみてください」と、具体的なアドバイスをするシーンもあったという。

 「いや、分かってる、分かってるんだけど難しい、と(笑)。芝居なら、シチュエーションから入っていくこともできるけど、スタジオにはマイクとモニターしかないじゃないですか。芝居に嘘は絶対につきたくないから、もうあとは集中するしかない。集中して、登場する彼らと、彼らの世界ときれいな一本の線にならなくちゃいけない。言葉でいえば、“一体感”。そこに至るまでが大変でした」

 そんな苦労をして仕上がった吹き替え版。字幕がない分、映像に集中でき、映画の印象が変わる。「字幕なしで見ると、映像から溢れてくるものをより強く感じることができますよね」と大沢。

 「こんなことがあったんです。うちの事務所のアシスタントの子が吹き替え版を見たときに、『あれ、映像の編集しなおしてますよ』って言うんです。『嘘だろ、ありえないよ』『いや、絶対してます』。真剣に言うもんだから、配給会社に電話して確認しちゃいました。当然してませんでした(笑)。それくらい印象が変わるんですね。だから、この映画では、僕らの言葉はただの付属だな、と思う。あそこに生きる彼らの絶対的なエネルギーがすべてです。理屈じゃなく、ただそのままを見て感じるしかない」

 皇帝ペンギンたちの絶大な生きるエネルギー、ひたむきさ。そうしたものから大沢は何を感じたのだろうか。

 「あんな地球の遠くの極寒の地で、彼らはただひたむきに生き、ひたむきに愛し合い、ひたむきに子供を育てている。僕ら人間もまた、基本的には地球上のただの生き物でしかなくて、究極的には、生まれ、メシを食い、子供を育て、そして死んでいく。この映画には、そんな生きることの本質があって、本質的なところで目いっぱい生きている彼らの姿に、僕は癒されたんです。僕らが生きていくうえで、いかに無駄なものに包まれていることか。そんなものを突き抜けた、一番深いところにあるものに触れることが本当の癒しなんじゃないかと思うんです。“癒しのお茶”とか“癒しの音楽”とかじゃなくてね。ペンギンってかわいいー!だけじゃなくて、そういうところにも触れてもらえたらいいなと思います」

 本作には、ペンギンの可愛さ以上に、生きることへの壮大なメッセージが詰まっている。

(撮影=三橋令嗣 取材・文=本紙・土屋季之)
『皇帝ペンギン』
監督:リュック・ジャケ 日本語版の出演:大沢たかお、石田ひかり、神木隆之介 ギャガ・コミュニケーションズ配給/1時間26分/恵比寿ガーデンシネマ他、全国公開中
撮影=三橋令嗣  J-WAVE本社スタジオにて。
『森ビル プレゼンツ 東京コンシェルジュ』(81.3FM 毎週日曜21時〜21時54分)出演後に撮影(出演回は17日に放送済み)。この日は、ナビゲーターの別所哲也と『皇帝ペンギン』や動物の話で盛り上がった。
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