今週のTOKYO HEADLINE
vol.218
(2005.08/22-08/28)
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showbiz vol.218

インタビュー

久保田利伸

相乗効果という言葉がある。素敵なことがふたつ重なれば、その素敵さは倍増する。幸せを感じることが重なれば、心はさらにカラフルに躍る。そんな瞬間が今、毎週木曜の夜に訪れる。日本人の心にある涙と笑いを描いたコメディー『菊次郎とさき』の主題歌で流れる久保田利伸の『Club Happiness』が、ささやかだけど素敵なハピネスを、カラッとファンキーなメロディーで聴かせている。ドラマのために書き下ろしたこのゴキゲンなポップチューンに、久保田はNY生活で感じたハピネスを注いだ。

「この主題歌で、“幸せ感”を見つけました。」

 ドラマ『菊次郎とさき』は、ビートたけしの原作を元に、べらんめえの父・菊次郎と、しっかり者の母・さきを中心に、笑いと涙のコメディーで綴った北野家の物語。2003年に放送された前回シリーズをNYのケーブルテレビのTVジャパンで見た久保田も、「唯一もう一度見たいドラマ」として『菊次郎とさき』のファンだったそうだ。そんな久保田の元に、現在放送中の第2シリーズの主題歌の依頼が舞い込んだ。

「よくも悪くも進み過ぎちゃったNYで生活してると、頑張らないと過ごせなかったりするから、そういった意味では、安心できる痛快なものとして、このドラマがヒーリングだったのかもしれないですね。でも、そんな中にもパワーのあるストーリーだから、主題歌をやるなら遊びファンキーなものをやるチャンスかなと。ドラマ自体、自分がもともと好きな世界だったから歌詞を書く時も楽でしたね。人間は人間くさくとか考えていった時に、自分の中の幸せ論に当たったんですよ。そこで、ハッピーとかハピネスという言葉を使いたくなったんです」

 一度聴けば誰もがウキウキして、心の疲れを吹き飛ばしてしまうような曲。その思いを存分に日本語で表現することも、久保田にとっては新鮮で楽しい作業になった。

「歌うのは英語でも日本語でも楽しめるけど、やっぱり日本語の歌詞っていいですよ。アメリカで発売するものの歌詞って、基本的に深いことは言えないんです。“小難しいことは分かんないよ”って言われちゃうから、アメリカですよね(笑)。これがロンドン発のロックとか、アメリカでもスティービー・ワンダーくらいまで行っちゃうとすごく深くなるけど、今どきの中で回ってる場合は、なかなかそこまで行けない。そのへんのストレスがすごく溜まってたから、日本語で自分の人生哲学を言えるチャンスがあるだけでもうれしくて、余計ハッピーな歌になったのかもしれないですね」

 その人生哲学とは何か?“幸せは気付くもの、探すものじゃない”と久保田は歌う。

「文字にするとすごく真面目に思えるけど、ハッピーでラブリーなメロディーだから言えちゃったのかもしれないね。今まで僕も、幸せ探しの旅に出るとか、やりたいことはどうやったら見つかるのだろうとか、漠然と考えてたと思うんですよ。でも、世界中から幸せと夢を求めて人が集まるNYにいて、そればっかりっていうのは心がせちがらいなと思いはじめていた昨今。幸せって、苦労して探すんじゃなく、日々の生活の中にあるもんじゃないかなと。それはドラマを見て確信した部分かもしれないですけどね。僕はドラマで描かれた世代よりは遅れて生まれたけど、僕の田舎もあんなだったなと思うんですよ。うちは八百屋なんだけど、親父は酒は飲まないけど、昔かたぎのバランスの悪い親父で、母親は、少ない睡眠時間以外は何かやってないとダメみたいな。ちゃぶ台もギリギリあったような気もするし(笑)。結局、母親が一番賢くてしっかりしてるっていうのが気持ち悪いものじゃないんですね。日本って不思議な国で、すごい進んでるけど、男女の役割とか家庭のスタイルっていうのは超アジアチックじゃないですか。文化としては新しいことをどんどん取り入れてポップカルチャーを作っていくけど、風習は変わらなくて、すごく古い。でも、それを見て安心しちゃうのは、やっぱり僕のDNAなのかなって思いますけど(笑)」

 とはいえ、曲作りにおいては、レトロで安心感のあるものを「ちょっとあか抜けさせる役割になりたかった」と久保田。ドライでカラッとしたハッピーグルーブは、普遍的な幸せ感を今の時代に響かせる。

「涙も笑いも幸せという名前のものっていうところで、最後はカラッとしたかったんです。すごい悩んでる時も、悩みの中に悩まされていくより、悩みに出会えてラッキーと考えると気持ちが変わって前向きになれたりするから。だから例えばこの曲を聞いて、そうじゃなかった人がそういうふうに考えるチャンスになれば、これは一番うれしいことかな。まあ、なかなか人間ですから、迷ったり、分からなくなったりするけど、そういう境地になるべく多い時間立てたらいいですよね」

 8月24日にリリースされるこの『Club Happiness』には、それとはまた違った久保田の真骨頂といえる、メローなバラード曲『Summer Swe et』も収録されている。前曲が昼なら、こちらはトワイライト。「たまには意識して季節感のある曲を作ろうかなと思って」と久保田が言うように、過ぎ去っていく夏を感じながら、頬をなでる海風や、空の色さえ浮かんでくる一曲だ。


 幸せも、哀愁も、それぞれの記憶を久保田の音が開けてくれる。来年はデビュー20周年。2月からは3年ぶりの日本での全国ツアーも予定されている。     

(取材・文/幸野敦子)
Q 久保田さんにとって、身近で幸せを感じるのはどんな時?
「NYに住んでるせいもあると思うけど、みんな自分の夢を追うために他を排除してるような街の中で、あったかい春の道端を歩いてるカップルとかを見ると、それだよなって思いますね。あの幸せな感じは、NYで仕事してる人たちにはない笑顔。そういうのに触れた時は自分も幸せになれるし、落ち着ける。あとは慣れ親しんだ味の日本食を食べた時も幸せかな(笑)」

『Club Happiness』 
SECL-240 1223円(税込み)
8月24日発売 テレビ朝日系木曜ドラマ『菊次郎とさき』(毎週木曜午後21時〜)主題歌
HP http://www.toshikubota.com/
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