今週のTOKYO HEADLINE
vol.223
(2005.09/26-10/02)
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Movie vol.222

インタビュー
生きることへのメッセージ
『この胸いっぱいの愛を』

伊藤英明

周りにいる人たちがよりいとうしく思えました。

 あの時こうしておけばよかった。なぜああ言えなかったんだろう。誰の心にも、後悔という小さなトゲが残っている。取り返しがつかないものだけど、もし、一度だけ過去に戻れるとしたら……? 10月8日公開の映画『この胸いっぱいの愛を』は、そんな願いをつづった美しく、そして哀しい作品だ。03年の大ヒット作『黄泉がえり』のコンビが再びタッグを結成。梶尾真治原作の『クロノス・ジョウンターの伝説』を、塩田明彦監督が大胆に翻案した。主人公・鈴谷比呂志には『海猿』以降、俳優としてのレベルをまたひとつ上げた伊藤英明。

「この映画のテーマはすごくシンプルなんですよね。人が人を思うこととか、つながっていることとか…」

 台風が日本列島をかすめた日。雨に濡れそぼる東京を見つめながら伊藤英明は静かに話してくれた。

「日常では忘れがちなんですけど、自分が老いていくこととか、死ぬということ…周りにいる人がすごく大事に思えたり、時間がすごく大事になったり。僕もこの映画で自分を振り返ることができたと思いますね」

 舞台は2006年。伊藤演じる主人公の鈴谷比呂志は、出張で小学校の一時期を過ごした北九州の門司に行き、そこで、20年前へとタイムスリップ、小学生の自分に出会う。そこでは、難病のために夭逝してしまった初恋の“和美姉ちゃん”(ミムラ)もまだ生きていた。鈴谷は、かつては死なせてしまった和美姉ちゃんを救うために奔走することになる。

「この鈴谷って主人公は、自分を押し殺して成長してきた人間だと思うんです。それがああいうことに巻き込まれて、押し殺してきたこと、後悔してきたことがひもとかれていく」

 劇中、生きることを諦め、手術を受けることを拒絶する和美姉ちゃんに、鈴谷が怒鳴るシーンがある。

「“生きたくても生きられないヤツがいるんだ”っていうセリフの通り、鈴谷も過去に戻ってやっと後悔してたこと、和美姉ちゃんがいるからこの世界で生きていきたいんだってことに気づく。でも、実は僕自身は鈴谷とは違う感覚があって、“やっと今かよ”って感じだったんですよ。そんな窮地に立たされるまで、生きていたいって思えなかったのか、なんでもっとコイツは自分出して生きなかったのかなって…」

 主人公の鈴谷は、過去の世界にいつまでも残ることのできない身なのだ。しかし、鈴谷は和美姉ちゃんを救うため、自分の命すら省みない。

「それこそ、無償の愛ってヤツじゃないですか。誰もが経験する初恋で、子供だからこそその思いが強い。でも、窮地に立たされたときや、死を意識した時にでもないと、大事な人や時間の大切さを思い出せないのはすごく寂しい。日本人くらいですよね、普段死を意識しないで生きているのって。世界の人たちはもっと死を身近に感じていて、だからこそ今が大事だって言う。死を意識するのは、すごく怖いことだし、考えたくもない現実だけど、それで鬱になる必要は全然なくて、もっと自分と向き合うことで、人生が楽しくなるんじゃないかな」

 そうやって“今”を大切に生きていくのは難しい。彼自身、日ごろ心掛けていることはあるのだろうか。

「構えず、ニュートラルでいられたらいいかなって思います。友達でも親でも恋人でも、構えちゃったり、意地張ったりする時間がもったいない。それには自分でルールを持たないこと。ああしちゃいけない、ああいう人は苦手、というような。それと、メリットを考えて人と付き合うことはしないってこと。もっと魂と魂で触れ合うことができたらいいと思うな」

 本作は、生きることのもっともシンプルで大切なこと教えてくれる。

「僕自身、過去に戻りたいとは思わないけど、この映画に出て、周りにいる人たちがよりいとおしく思えました。いい作品に関わることができたなって思います」

 出演した本人がそう思えるのは、観客にとっても幸せなこと。映画のラスト、あなたはもう一度、生きる勇気をもらうことができるだろう。


誰もが“かっこいい”と思わずため息をついてしまう伊藤英明。彼にはカッコワルイところなんてあるのだろうか。「ありますよ。ついついふとした瞬間にセリフを口ずさんじゃうところ。コンビニとかでありえない声の大きさでセリフを言っちゃったりね。ハッと我に返ってここコンビニじゃん、やべやべってところはかっこ悪いですね(笑)」
『この胸いっぱいの愛を』
監督:塩田明彦 出演:伊藤英明、ミムラ、吉行和子、愛川欽也、富岡涼、勝地涼、宮藤官九郎、倍賞千恵子、中村勘三郎ほか 東宝配給/2時間10分/10月8日(土)全国東宝洋画系ロードショー/http://www.kono-ai.com/  

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