
vol.225
インタビュー
音楽にかける情熱ピアニスト
上原ひろみ
上原ひろみは、若く、美しく、才能にあふれ、情熱みなぎるピアニストだ。彼女の奏でる音楽はジャンルを越え、国境を越え、言葉や文化も越える。ニューヨークを震わせ、イスラエルを熱狂させた音のスパイラルがまもなく日本に届く。
ブルッとする音楽をやっていきたいんです。
昨年、カナダの名ピアニスト、オスカー・ピーターソンの来日公演で共演し、一躍話題の人となった上原ひろみ。音楽の名門米バークリーを首席で卒業した26歳のピアニストは、情熱的なパフォーマンスでオーディエンスを圧倒させた。そして今年は、フジロックフェスティバルに出演。会場を心地よい音楽の渦で包んだ。
とはいえ、上原の自分への評価は甘くない。「いいライブ、自分が納得できるものって数えるほどしかない」。最近ならば、8月に出演したイスラエルのジャズフェスティバルが“いいライブ”だったと本人。
「警備員の人はマシンガンを持っているし、セキュリティーがとても厳しかった。紅海沿岸にステージがあって、反対側にはヨルダンが見えて、地続きの緊迫感を感じました。そういう環境があって、演奏中のこちらの集中力もすごかったんですけど、お客さんのレセプションがそれ以上で。楽しもうとしているエネルギーがすごかった。自分の出せる力をガツンと出して、1500人とかのお客さんが全員100%の力で返してくる。自分たちはそれをキャッチして、さらにまた大きい力になる。そうすると、自分ひとりでは出し切れないエネルギーっていうのが出て来るんです。一番いい形で演奏ができたときって、鳴っている音を中心にして、バンド、パフォーマー、お客さんと全員を取り巻いた渦<スパイラル>ができていって会場が一つになるんですけど、イスラエルではそういうのが感じられましたね」
その<スパイラル>をキャプチャーしたのが、まもなくリリースされるニューアルバム『スパイラル』。この夏、フジロックでも一緒にステージに立った、ベースのトニー・グレイ、ドラムスのマーティン・ヴァリホラとともに作ったトリオ作品だ。トニーとマーティンは、バークレー音楽院時代からの仲間で「人の話を聞ける、人の音を聞ける、私が今やりたい音楽をするのには最適なメンバー」と上原も信頼を置く。
「トリオというと、ピアノがメインにあって、ベースとドラムがある感じなんですけれど、このアルバムは、3人それぞれがメインディッシュ、3人がフルに生きる、トリオは3つの楽器で構成されるオーケストラであるというコンセプトで作りたいと思ったんです。2年間固定メンバーで回ってきて、彼らの強いポイント、彼らの生きるポイントが分かってきました。役者が分かってから脚本を書くような感じで、彼らが輝くように曲を作ることができました」
アルバムには、タイトルにもなっている『スパイラル』のほか、ある一夜のコンサートの様子を4曲で構成した『ミュージック・フォー・スリー・ピース・オーケストラ』、まったりしようと呼びかける『ビッグ・チル』など全9曲を収録。初回限定盤のDVDには敬愛するブルース・リーとジャッキー・チェンに捧げた『カンフー・ワールド・チャンピオン』のライブバージョンを収録した。
「かっこいいですからね…(笑)。カンフーと音楽って関係ないようで、近いと思うんですよ。カンフーって、闘う相手の動きが組み込まれているわけではないじゃないですか。それまでに鍛錬し、試合になれば集中して、蹴るか、突くか、そして繰り出したその瞬間に決まる。それが、インプロヴィゼーション(即興音楽)に似ているというか。音楽も、同じように日々鍛錬して一音にかける。その一音によって相手が感じるかどうか、一撃で相手が倒れるかどうかってことなんじゃないかなと」
ニューヨークに活動拠点を置き、世界中を飛び回る。26歳にして国際的なピアニストとして地位を確立したかに見える上原だが、まだまだ「突き詰め中」と笑う。
「もっとピアノが上手くなりたいですね。表現力を豊かにして言いたいことを音で伝えられるように、極みの旨みを出したいというか(笑)。最終的には、一音聞いただけでこの人だって分かるような人になれればと思いますけど、それには30〜40年やらないとダメだろうし、ライブでも自分がサプライズするものをやっていかないとって思います。前の日こっちの道に行ったからそっちに行ってみようと思ったらもう安全策。だから、ダメって書いてあったり、行ったことのない、先の見えない方向に行かないと。行き止まりかもしれないし、面白くない道かもしれないけれど、絶対財宝があるかもしれない方向に行く。そういうリスクテイキングをしながら、ブルッとする音楽をやっていきたいと思います」

(本紙・酒井紫野)

うえはら・ひろみ
1979年静岡県浜松市生まれ。6歳からピアノを始め、同時にヤマハ音楽教室で作曲を学ぶ。99年、ロックからジャズまでトップミュージシャンを輩出する米バークリー音楽院に入学。在学中にジャズ名門テラーク・レーベルと契約、03年に『another
mind』で世界デビューした。現在もニューヨークに活動拠点を置きながら、北米、日本、ヨーロッパなどグローバルに活動している。
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『スパイラル』 10月19日(水)発売 2700円(税込) ユニバーサル インターナショナル 初回限定生産盤のみ、CD+DVD。
幻冬舎よりノン・フィクション本
『上原ひろみ サマーレインの彼方』(神舘和典著)10月24日発売。
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全国ツアーも決定!
11月12日から12月3日まで、全8都市全14公演からなるツアーを敢行! 関東は、11月20日(日)横浜BLITZ、12月1〜3日が品川プリンスホテル
ステラボールにて。詳細は、上原ひろみオフィシャルホームページ http://www.hiromiuehara.com
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