今週のTOKYO HEADLINE
vol.228
(2005.10/31-11/06)
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Tokyo culture vol.228

インタビュー

佐々木 蔵之介

ドラマではおなじみの顔になってきた佐々木蔵之介が、来春、自身のホームグラウンドである舞台に立つ。舞台『クラウディアからの手紙』で、無実の罪でロシアに抑留された蜂谷弥三郎さんの人生を演じる。誰もが経験し得ない経験をし、いまもなお健在の蜂谷さんを演じることに、役者・佐々木蔵之介が燃えている。

“舞台”で魅せる、“舞台”で泣かせる

 1998年に放送されたドキュメンタリー『クラウディアからの手紙』は、日本中の涙を誘った。無実の罪でロシアに抑留され、50年の時を経て帰国した蜂谷弥三郎氏。そして彼をロシアで支え続けた妻・クラウディアさんと50年の間彼をずっと日本で待ち続けた妻・久子さん。この3人の人生は“人の人生よりもドラマティックなものはない”ということを教えてくれる。 

この話をもらって、ドキュメンタリーを見て、佐々木蔵之介はオイオイと泣いてしまったそうだ。同時に手渡された本『クラウディア 愛の奇跡』も一気に読みきった。「感動しました。自分がこれを、この人生を生きるのかと思いましたね」

 戦争、ロシア抑留、別離などシリアスなテーマが並ぶ。さらに、登場人物はすべて実在する。実際、蜂谷さんにも会った。そのことが演じるうえでの大きなヒントにもなった。「あの力強い握手が忘れられませんね」と、佐々木は力を込めていうと、右手で銃の形を作るとすっとこめかみに突きつける。

「こう拳銃を突きつけられて、白紙の調書にサインしろって迫られるんです。サインをすれば収容所に入るんですけど、しなければその場で殺されてしまう。そこで蜂谷さんは収容所に入ることを選んだ。生きていれば、家族に会えるかもしれないってね。蜂谷さんがね、『針の穴のような小さな光を求めて、出口の見えない長い長い暗闇のトンネルの中を歩き続けた』って仰っているんですけど、とにかく蜂谷さんは“生きる”ということに執着したんです。この作品には戦争というテーマもありますが、それだけでなくて、“生きる”ということだとか、それだけを思ってきたことだとか、支えあい、助け合い、慈しむというテーマもある。僕は、そういった感情のかけらでも伝えることができればと思っています」

 実在の人物を演じるというのは、佐々木にとって大きなチャレンジだ。

「とにかくすごい存在ですから、蜂谷さんになりきるというのは無理だと思います。こういった取材で『もし蜂谷さんの立場だったらどうするか』なんて聞かれますけれど、そんなこと想像もつかない。例えば、囚人番号で呼ばれることだとか、人として生きられなかった時代があったなんて、今この時代に生きていると想像しがたいじゃないですか。そういった誰もが体験し得ないようなことを蜂谷さんは体験してきた。とにかく大きな存在です。プレッシャーはありますよ。でも、これを、この役を体現できるというのが役者の仕事だし、役者しかできないこと。だから、今はそれに向かっていこうっていう気持ちが蜂谷さんを演じていく助けになるんじゃないかなと思います」

 また、主人公が2人の女性の間で悩む姿も、この作品の見どころのひとつだ。ロシアで30年以上も寄り添ったクラウディアは、自分の夫に日本に残してきた妻がいることを知ると、「自分はもう十分に愛してもらった」と、夫を日本へと帰す。

「その悩む姿をどう描くんでしょうね。脚本があがっていないのでなんとも言えないですね。メンバーで顔をあわせたのも2回目ですし、これからどうなっていくのか楽しみです。鐘下さんの演出ですから、見渡す限り氷と雪、どんよりした雲というだけではなくて、支えあったり、慈しみあったりとか、そういう人間味のある稽古場になるだろうなと思います」

 今は12月に始まる稽古を思いながら熱いものを体の中に溜め込む。そして、1カ月をかけてじっくりとこの大きなテーマに臨む。

「“生きること”であるとか、そのために必要な、お互いを愛し合ったりする感情。そういったものを伝えられたらと思います」

 半世紀にわたる1人の男と2人の女のストーリーは、来年1月、世田谷パブリックシアターで公演される。


(本紙・酒井紫野)

『クラウディアからの手紙』

脚本・演出/鐘下辰夫 出演/佐々木蔵之介、斉藤由貴、高橋惠子
【日程】2006年1月18日(水)〜2月5日(日)
【会場】世田谷パブリックシアター 
【料金】S7000円、A5000円(共に全席指定・税込)
【問い合わせ】ホリプロ 03-3490-4949 CNプレイガイド 0570-08-9999 http://www.cnplayguide.com/
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