
vol.232
インタビュー
aiko
見えなかったものが見えるようになってきた、それを信じられるようになってきた、というaikoが、前作『キラキラ』に続いてリリースする『スター』は、ピアノとオーケストラサウンドに乗せた壮大なバラード。大切な人を思う気持ちを切ないメロディーに乗せて歌い上げる。
言葉でなければ見えなかったものが
はっきりとしてきたんです
aikoとのインタビューでは笑い声が絶えない。シリアスに質問に答えてくれたと思ったら、手足をぐるぐるまわしながら、昨日テレビで見たというデトックス体操まで見せてくれる。カバンのなかからは、ゴキブリのおもちゃや練り消し、駄菓子といった「ちょっとしたたくらみ」グッズがどんどん出てくる。「時間があったら、みんなで遊ぼうかと思って」。いつでもサービス精神旺盛だから、こちらに「無理なことを頼んじゃったかな」という不安な気持ちを少しも抱かせない。きっと彼女は誰に対してもこういう人。だから、彼女の周りにいる人もにこにこしているのだろう。
不安を感じないコミュ二ケーションは、気の置けない友達とするキャッチボールに似ている。受け止めてくれるからこちらもさらに強く投げられる。強く投げ返してくれるからこちらも負けずと投げる。こうしたことは、恋愛にも共通している。ぶつかってきてくれるから、こちらもぶつかっていけると、aiko。
「自分だけが相手のことを思ってるんじゃないかと思うと、私はすごいダメになっちゃうんですよね。お財布に50円しか入ってないのに気づいてしまったときみたいに、ハラハラした気持ちがつきまとっちゃう。例えば、夜に電話がつながらないと『もう、だめだ』って思ったり、着信履歴が3回以上ついてしまうことをうざく思わないかとか思ってなんにもできなくなっちゃう。だから、自分の気持ちを上回る気持ちを、5秒でも、一瞬でもぶつけてきてくれる人がいることっていうのはすごく大きいと思うんです。そうすれば、着信履歴をたくさんつけることが、『こいつこんなに電話してきて思ってくれてるんだ』っていうアピールになっていいかなと思えるようになる。不安が信頼に変わっていく。そうなると、『キラキラ』ではないですけど、不安な夜も信じて待って過ごすことができるようになったりするんですよ。私好きな人ができたり、恋人ができたりすると、その人が死んだらどうしようって考えちゃう癖があって、「じゃあね、バイバイ」っていったあとに、帰り道で死んじゃったらどうしようとか思っちゃう。前はそう思って1人で泣いちゃったりしてたんですけど、今はそんなことを考える暇があるんだったら、もっと好きにならないと、もっと信じないとって思うようになったんですよね」
不安が信頼に変わってきたこと、それを信じることができるようになったことは、30日にリリースされるシングルの『スター』にも反映されている。ピアノの旋律と壮大なオーケストラのサウンドでドラマチックに展開するバラードで、いつにもまして心の奥がジーンとする作品になっている。
「はじめは『豆スター』ってタイトルだったんですよ。ちっちゃくても、他の人には見えなくても、相手を差す、自分を差してくれる星っていう意味を込めて」
スターは、自分のマイナスな気持ちもプラスに転換する。スターという名の大切な人に対して、不安を抱きつつも信じ、もっと好きになりたいという気持ちをストレートに歌う。
「年々、見えないものとか信じる気持ちとか、願いごととか、例えば好きという気持ちだとか、言葉でしか見えなかったものがはっきり形を現してきた気がするんです。それは、私の心のなかでってことなんですけど。だから、詞を書くにしても、好きな人がこういう行動をしてとか、こういう仕草をしてってことじゃなくなって、心のなかに思うことを曲にしたかったのかなって、今は思ってます」
大切な人を思う気持ちは、恋愛だけでなく、もっと大きなラブにも通じる。この曲は、製作者のたっての願いでアニメ映画『あらしのよるに』の主題歌にもなった。オオカミとヤギという天敵間の友情と絆を描くこの作品は、12月10日から封切られる。「エンドロールでこの曲が流れると思うと、それだけでなんかジーンときちゃいますね」とaiko。この冬、彼女の心のこもった愛の歌が日本中に響きわたる。

(本紙・酒井紫野)
|
| 『スター』 11月30日(水)発売 ポニーキャニオン 1260円(税込)
|