
vol.247
インタビュー
故カート・コバーンがモチーフ、ロックスターの最後を描く
『ラストデイズ』
ガス・ヴァン・サント監督
1フィルムメーカーとして、カートをモチーフにして
作品を撮りたいって思ったんだ
若くして成功したスターたちは“呼ばれる”のだろうか。ジミ・ヘンドリクス、ジャニス・ジョップリン、ジム・モリソン、リヴァー・フェニックスに、エリオット・スミス。唯一無二の才能、そしてカリスマ性を持った彼らはある日突然この世からいなくなってしまう。ある種、神秘的な現象だ。
そうやって“呼ばれた”ミュージシャンの1人にカート・コバーンがいる。ニルヴァナのフロントマンだった彼は94年に命を絶った。27歳だった。
「カートの人生はドラマティックだったからね」。最新作『ラストデイズ』を完成させたガス・ヴァン・サント監督はいう。「歌い方、生きざま、成功してもなおシアトルに住み続けたこと、そして自殺。彼の存在そのものが劇的なんだ。彼とは一度しか会ったことがないし、そんなに親交があったわけじゃないけど、僕は1フィルムメーカーとして彼をモチーフにして作品を撮りたいって思ったんだよね」
『ジェリー』、コロンバイン高校での銃乱射事件にヒントを得た『エレファント』など、ノンフィクションをベースにストーリーを脹らませてリアルな出来事を俯瞰するのが彼のスタイルだ。『ラストデイズ』もそれにならった。
「この作品はカート・コバーンの映画ではないんだ。本当にあったことからアイデアを得てストーリーを組み立てていく、僕はそういうふうにすることでジャーナリスティックに作品を作っていきたいと思っているからね。『ラストデイズ』に限らずに、こういった姿勢はいつでも持っている」
「ジャーナリスティック」という言葉をインタビュー中に何度となく使うガス・ヴァン・サント監督だが、「ドキュメンタリーという手法は合ってない」という。プライベートで撮影したものもあるが、満足できるものではなかったそうだ。ある事象をとらえて問題提起、そして観客に頭と心を使わせるというのがガス・ヴァン・サント流。だから、この作品もカート・コバーンの映画ではないのだろう。主人公はロックスター、ブレイク。ボロボロのブロンドのワンレングスヘアやチェックのシャツなどがカートに酷似しているものの、カート・コバーンと似た境遇にあるブレイクの最後の日々を、詩的に描く。分かりやすい世界とはいえない。が、それを音楽がサポートしていて、リアルに感じさせる。
「(主演の)マイケル・ピットは出会った時はギターもあまり弾けなかった。けれど、このプロジェクトを温めているうちにすばらしいミュージシャンになって、彼の曲を劇中でも使っている。ソニックユースのサーストン・ムーアに音楽コンサルタントを頼んだことも大きい。音楽はこの作品に大切な要素で専門家が必要だったからね」
劇中にはノイズがわんわんと続く轟音映画的な要素も。それが観客をトランス状態に持っていく。すると、不思議に混乱していた頭がすっきりし、ブレイクの頭のなかを少しのぞくことができたような気分になる。
「誰もがブレイクのことを知っているのに本当の彼を知らない。どうして彼が死んだのか、その時に何を考えていたのか誰にも分からないんだ。僕も、誰にも見向きもされなかったのにブレークしていろんなことが起こった。この作品でそういったものを伝えることができたんじゃないかな」
カートが逝って10年以上が経つ。その後も若くして亡くなる才能は絶えない。そうした彼らの死について思いをめぐらさずにはいられない『ラストデイズ』。音楽好きならずとも心を揺さぶられる作品だ。

(本紙・酒井紫野)