今まで知らなかった体験を求めて 都内のスタジオで深津絵里と高崎氏の両名をキャッチし、早速インタビュー。制作もいよいよ佳境に入った『ブラコメ』について話を聞いた。深津絵里がさまざまなブラック・コメディーを繰り広げるショートドラマや、映像作家とコラボレーションするアニメーションなど、毎日毎日新しい深津絵里の魅力がこの作品には登場する。 「私、初めて高崎さんとご一緒させていただいたのがコマーシャルの仕事だったんですね。そこで、今までお芝居でしか知らなかった感覚以外のものを体験させていただいたんです。えー、そんなことやったことない、やってみたい!というようなことをすごくノビノビと(笑)」と深津。 「だから、今回も高崎さんが企画されるので、いろいろ新しいことを体験させてもらえるんじゃないかなぁって思ったんです」 「僕は正直、もっと軽く考えていましたね(笑)。ある日、銀座の松屋の前でタクシーに乗ろうとしてる時にばったり深津さんに会って、その10分後くらいに電話で“深津さんでコンテンツ作りませんか”って話が来たんです。本当にそうなんですよ」 と、今回の企画の始まりを話すのは高崎氏。 「だから、深津さんからこの『ブラック・コメディ』の世界は始まったんです。この世界では、客観的に見て客観的に正しいことを言えば、ちょっと毒が含まれているというようなもので、1周回って本当のことを言う、みたいなことができたらいいな、と。その中で毎日いろいろな深津さんが登場する1週間にしよう、と…」 そうやって作られた『ブラコメ』。例えばドラマ『告白』では、とある夫婦が墜落寸前の飛行機の中でお互いの秘密を打ち明けあうが、妻役の深津が信じられないような過激な秘密を口にする。オチがブラックなのはもちろんだが、こうした深津もある意味ブラックだ。『TAXI』シリーズでは、ブラコメの面白さのひとつ“言葉のズレ”と、素の深津の姿が見えたりする。 「あのタクシーの話は、私の台本と、相手役の方が持っていた台本が違っていて、それを本番まで知らなかったんですね。テストもナシで、本番の時に初めてお互いにセリフを言い合ったんです。だから、アドリブ(笑)」 ツボを押さえたコメディー 運転手と2人きりの密室になるタクシーの中で、ちょっとした言葉のズレが生まれたらどうなるか? CCD5台を使い、カメラが回っている間は本当に運転手と深津の2人きりにして都内を走りながら撮影したという。 「決められた台本通りにやっても面白くないかな、と思って。面白くないと僕のせいになるし(笑)」と高崎氏。「基本的にコメディーっていうのは、絡まれモノで相手がどれだけ変か、というのが面白さのポイントになる。だから変なセリフをいっぱい与えたほうがいいかなって思って、変なセリフが書いてある“困ったときに開く紙”というのをたくさん用意しておきました(笑)」 「私の台本にもセリフなのかどうなのか分からない言葉がたくさん書かれてましたよね(笑)。そういう言葉って演じたらつまらなくなっちゃうと思うんですよね。なんとなく言ったらすごく普通になるし、ハードルが高い。でも、シリーズ3本とも言葉のやり取りがとても面白くて、ずっとタクシーに乗っていたいと思ってしまいました(笑)。タクシーの中での沈黙とか、密室の中の緊張感が、とても心地良くてちょっとしたタクシー・ハイですね(笑)」 パソコンテレビだからできること その他、“「素の状態を撮られている姿」を演じる深津”(『女優魂』)や、シュールに男を振り回し続ける“罪深い女”の深津(『罪深い女』)、アニメーションでは声優の深津、揚げ句の果ては、歌を歌う歌手としての深津まで登場する。この『ブラコメ』は、歌やそれらすべてを含んで『ブラコメ』だ。その中で演じる深津にとって、この作品はどんなものなのだろうか。 「この作品は大勢で見るんじゃなくて、1人で見るっていうヒミツっぽさが面白いんだなぁって思います。見る人に直に届くっていう距離もいいですよね。この距離感だからシュールなことやブラックなことを共有できるんだと思う。通常のメディアでこれがどこまで通用するかってちょっと分からないし、いい経験をさせていただきました」と深津。 「でも、実は私、ブラック・コメディーをやってるっていう自覚があんまりないんです。素敵な言葉がたくさんあって、それでそう思うのかも。一番好きなのは“人は誰かと出会うために生きている”というセリフ。これはブラコメのどの作品にも共通しているような気がしていて、例えば今回、高崎さんとこういう仕事ができるってこともそうですし、皆さんにも、そうやって見ていただけたらな、とも思ってます」