
vol.264
INTERVIEW
『アルティメット』主演
ダヴィッド・ベル×シリル・ラファエリ インタビュー
W杯優勝はならなかったが、フランス映画界には“世界最強”の2人がいる。リュック・ベッソンが製作・脚本を手がけた『アルティメット』は、主演のシリル・ラファエリとダヴィッド・ベルがとにかくスゴい! CG、スタント、ワイヤーアクションは一切なし。己の肉体のみで作り上げられた究極のリアル・アクションは、見るものを未体験ゾーンの興奮にいざなってくれるはずだ。
『アンジェラ』『トランスポーター2』など、今年も話題作を立て続けに送り出しているリュック・ベッソン。文句なしに世界屈指のフィルムメイカーである彼を、アクション面で支える世界屈指の男たちがいることをご存知だろうか。
そのひとりはシリル・ラファエリ。彼は若くして武道やアクロバット技術を習得。その身体能力が評価されてスタントと演劇の道へ進み、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』などのベッソン作品に出演。現在ではアクション・ディレクターとしても活躍する“ベッソン組”が誇る逸材である。
もうひとりは、ダヴィッド・ベル。海兵隊を首席で卒業した後、高層ビルなどを華麗に移動する肉体芸術「パルクール」を創始。そのデモテープを見たベッソンが彼をモデルにした『YAMAKASI』を撮り、その後はベッソン作品にスタントマンとして参加する、フリースタイル・アクションのプロフェッショナルだ。
そんなフランスのアクション界を代表する2人が、満を持して映画初主演。これまでのキャリアを文字通り「体ひとつ」で歩んできた男たちのタッグは、まさに世界最強の共演といっていいだろう。
シリル(以下「シ」)「ベッソンは僕とダヴィッドがいい人間関係を築くことができれば一緒に、もし合わなければそれぞれ別の作品で主演作を撮ろうと考えていたようです。そして実際に会ってみて、僕らには何か引き合うものがあったんでしょうね。すぐに僕たちは、しゃべらなくても分かり合える友人になることができました」
ダヴィッド(以下「ダ」)「お互いの共通点は多かったし、何よりキャラクターが合ったんだろうね。最初はベッソンに『こんなことをやってるよ』というぐらいの気持ちでパルクールのデモテープを送ったんだけど、まさか自分が映画に、それも主演で出るなんて考えたこともなかったよ」
『アルティメット』の舞台となるのは、近未来のパリ郊外。シリルはギャングに立ち向かう潜入捜査官ダミアンを、ダヴィッドは妹を人質に取られたレイトを演じている。
シ「幸運なことに脚本は我々の主演ありきで書かれたものだったので、非常にいい役をもらうことができました」
ダ「レイトのキャラクターは、僕に似ているところが多いと思うよ。ただ、演技は簡単なものではなかったね」
「パルクール」の基本はフリースタイル。入念にリハーサルを重ねていく映画の撮影とは方法論が違うだけに、ダヴィッドにとっては新たなチャレンジでもあった。
ダ「難しさはあったけれども、例えば『ここからここまで飛んでくれ』というように、ある程度自由にやらせてくれたことは良かった。今回の経験はすべてが初めてのことだったから、自分にとっては大きな収穫だったよ」
シ「レイトが最初に郊外で走り回って戦うシーンは大きな見せ場です。その後、警官であるダミアンが軍隊的なアクションをする。この2つを冒頭で見せることで、『全然違うアクションをする2人が組んだらどうなる?』と思わせることに成功しているんです」
シリルが極めた「格闘」のアクション、そしてダヴィッドが極めた「移動」のアクションの粋が、余すところなく披露されている『アルティメット』。肉体の極限に迫った純度100%のアクションからは、彼らの映画作りにかける信念がビシビシと伝わってくる。
シ「例えば日常で歩いたりジャンプをする時に、マットをひくことはないですよね? この中で披露しているアクションも、“できること”に対して目くらましをする必要はないと思ったので、わざわざマットをひくようなことはしなかったんです」
とはいえ、あまりにも危険なアクションが多いため、リュック・ベッソンからストップがかかったシーンもあったという。しかし現場のキャスト、スタッフは、ベッソンに内緒で撮影を敢行。幻になるはずだったシーンを現実のものにしたという驚くべきエピソードもある。
シ「ダヴィッドがビルの屋上から屋上へ跳ぶシーンと、僕が窓から車に入り込むシーンがそうでした。屋上のシーンは特に、撮影が終わったということにして撮ったものですが、リュックは後から見て笑っていましたよ。今回は問題ありませんでしたが、きっと次からは見張りの係をつけられるでしょうね(笑)」
究極のアクションを追い求める姿勢は、まるで求道者のようでもある。そんな2人の「コンビ第2弾」は今のところ予定されていないだけに、『アルティメット』で繰り広げられている“奇跡”を、存分にその目に焼き付けてほしい。
