
vol.267
INTERVIEW
香港映画界の大御所が魅せる! 死の別れを超える永遠の愛―
『愛と死の間で』
アンディ・ラウ
この映画を男性が見たら、恋人への態度をちょっと反省するかもね(笑)
韓流ブームが来る前から、アジア映画の代表格として、日本でも幅広い年齢層の男女にファンを持つ“超級”俳優、それがアンディ・ラウだ。80年代から、香港のメジャー作品に出演するようになり、日本でもファンが急増。20年以上の俳優歴を誇るが、その間の出演作数も膨大。果たして新作『愛と死の間で』は何本目にあたるかと尋ねると…。
「う〜ん、120数本目になるんじゃないかな。全部の作品は…さすがに覚えてないなあ(笑)」
そんなアンディの最新作は、最愛の妻を亡くした男性の、喪失と再生の物語。その妻チーチン役を演じたのが、超人気アイドルデュオTwinsのシャーリン・チョイだ。
「彼女とはこれが初めての共演になるんだけど、シャーリンが僕の奥さん役ということを聞いたときは、あまりにも若すぎるんじゃないかな、と思って心配になったよ(笑)。夫婦という役どころなので、彼女と距離を縮められるように、撮影の前に会って何気ないおしゃべりをしたり…なんてことはよくしたかな。それと、マジックを見せてあげたりとか。トランプのマジックなんだ。けっこう上手だよ(笑)」
アンディが演じる外科医コウは、仕事に追われていつも妻との約束を破ってしまう。明るく天真爛漫な妻チーチンは、そんな彼を理解し、愛していたのだが…。
「実際、こういう作品の魅力というのは女性のほうが強く感じてくれるかもしれないね。でも僕は、この作品を男性に捧げたい(笑)。きっと、この映画を見た男性たちは、妻との約束を破ってばかりのコウを見て “僕のことを言っているんじゃないの?”と、反省を感じるかもしれない。僕もそう思うところが多々あったしね(笑)。普段の日常生活でもそうなんだけど、友達から電話がかかってくれば“今度一緒にお茶を飲もうよ”とか“食事をしようよ”なんて話をするんだけど、いつも話だけで終わってしまうんだ。気をつけようとは思ってるんだけど…ね(笑)」
本作のメガホンをとったのは、彼の製作会社フォーカス・ピクチャーズの共同経営者であるダニエル・ユー監督。この映画は、韓流映画に押され気味だった香港映画を一躍盛り上げた『インファナル・アフェア』シリーズの撮影終了後に、アンディが出演を決めた作品。
「そのころまで、ずっと大作への出演が続いていて僕はすごく忙しくてね。ちょうどその時期に、僕の前から色んな人が去っていってしまったんだ。仕事関係の人や、友人、僕が先生と仰ぐような人も亡くなってしまったり。そんなこともあって、人と人との関係をテーマにした作品を撮ってみたいと考えるようになったんだ」
妻チーチンの死後、コウが偶然出会ったのは“妻の気配”を持つ女性ユンサム。なんと彼女は、チーチンの心臓を移植された心臓病患者だったのだ。『インファナル・アフェア』シリーズでは、ノワール映画好きの男性たちを感激させたアンディ。しかし本作では、妻への一途な愛と、妻の心臓を持った女性へのいたわりという深い愛情表現をさすがの演技で見せ、静かな感動を呼び起こしてくれる。
「愛を描く映画で、一番重要なのは感情が本物であることだと思う。カメラの前で演じている男優と女優の感情が、リアルに表現されていないと、見ている人を感動させることはできないと思うよ。その点、本作では物語全体にリアルな感情を込めることができたと思う。多少、ドラマティックなシーンもあるんだけど、そんな場面でも感情自体はリアルな演技ができたと思うよ。例えば、僕が阿sa(シャーリンの愛称)と一緒に過ごす場面や、彼女が泣いてケンカする部分とかね」
人と人との絆を大切にしたいと思った、というアンディの言葉が、物語にも、演技にも染み渡っている。この秋には、プロデューサーとして発表したビビアン・スー主演の『靴に恋する人魚』が日本でも公開。
「『靴に恋する人魚』のような童話的な雰囲気を持つ作品は、これまでの中国映画にはなかったタイプだったので、作りたいと思ったんだ。今後も、作品の規模に関わらず、今まであまりやってなかったような作品を、世に出していくことができればいい、と思ってるよ」
香港映画を率い、世界中に広め、次世代を育てる姿勢こそ、香港・アジア映画の大御所の証拠。さり気なく放つオーラにも、カリスマならではの魅力を感じた。

(本紙・秋吉布由子)