特集祭り・後編|松尾スズキインタビュー・祭りの心得|
「粋」にキメる、大人の祭りはチョイスから始まる。例えば、日本が希望に満ち溢れていた時代とインターナショナルな雰囲気を楽しめるのは、有名な麻布十番納涼まつり(8月18〜20日)。誰でも参加できる盆踊りは日本人の郷愁を誘う感動ポイントだ。また、寄席や抽選会なども用意されているのも古き良き時代の祭りと言わしめる由縁。同じ踊るでも、「東京高円寺阿波踊り」(8月26〜27日)、「第26回浅草サンバカーニバル」(8月26日)は楽天的な雰囲気。和装とミニマムな布地を使ったカラフルな衣装の踊り子は正反対の存在のように見えるがそれぞれが1年に1度きりの祭りのために鍛錬してきたのは同じ。頑張る大人たちが見られるのはこの2つの祭りなのだ。 チョイス後は、いかに「粋」に楽しむかが大切。とはいえ、この日本独特の美的感覚の理解は人それぞれ、これぞ粋!という人、モノ、立ち居振る舞いを1つに定義するのはとても難しい。広辞苑は「粋」を「性(さが)・態度・身なりがあか抜けしていて、自然な色気の感じられる・こと(さま)」としている。これを大人の祭りに当てはめてみる。 最初のステップは「性」。根本的な性格はどうにもできないにしても、ムカムカするような暑さのなか、祭りに飛び込んで楽しい時間を過ごそうとしている人たちを盛り下げるような、批判的なものの見方や不平不満はシャットアウト。人込みにはまってしまった時も、ぐるりと周りを見回して、その雰囲気も楽しめるような心の余裕を持って、楽しげな笑い声や祭り囃子の音、露店からするおいしそうな匂いなど、祭りを五感で堪能してみよう。 次に「態度」。「粋」には物事の楽しみ方だけでなく、人との関係や世界の事情にも精通していなくてはならない。祭りで将来の親友やあわよくばの遭遇を期待している人もさりげなさを装って、ギラギラした視線は封印。何気ないアイコンタクトや笑顔をさり気なく送るのが「粋」というものだ。 装いは「粋」にキメるための重要なポイントになる。自分の身丈にあったものであることが優先で、すこし手を加える程度が適当だ。まったく着慣れないものでは「粋」を実践するための「自然な色気」も出てはこないだろう。もちろん、浴衣は気分を盛り上げるのでおすすめ。 ある人は「粋とはやせ我慢」という人。「粋」にキメるために、リラックスしながらも少し気遣いも必要ということだ。みなさんも、大人の祭りを楽しんでみては?
真夏の東京圏を盛り上げようと2002年に有志によってスタートした「GTF グレーター トウキョウ フェスティバル」は、大げさに演出したり過剰にコンテンツを詰め込まず、ありのままの東京を楽しめるイベントだ。 期間中に行われている数々のイベントのなかでも、東京にいることのメリットや東京の良さを「いき」に教えてくれるのが、日比谷公園を舞台に、8月24〜26日までの3日間展開される「GTF日比谷2006」だ。開催期間中は、日比谷公園が光と食と音楽で飾られ、都会の夏を彩る。 「おいしくて楽しい都会型フェスティバル」の基本理念の下に、会場内には、なぎら健壱プロデュースの店やナムコ・ナンジャタウンの池袋餃子スタジアムなどが出店。ケータリングカーが集まって、自慢の料理を提供。昼間はランチ、夜になるとビアガーデンになる。クロスオーヴァー系のライブが楽しめるのも「いき」だ。 また、シンボルマークの大噴水は決まった時間になると点灯され、5分間のページェントショーも楽しめる。入場料は無料。詳細は、オフィシャルサイトhttp://www.gtf.tvもしくはGTF事務局03-3222-6261。
「粋」というものを感覚的に理解できるのは昭和30年代の生まれまでだ、と言った評論家がいた。確かに、江戸に端を発し、生きざまを表す言葉として長く使われてきた「粋」の本質を、現在に生きる我々は水を飲むように受け入れられはしない(つまり知識としては理解できても身をもって理解することはできない)。とはいえ「分からない」で済ますにはあまりにも寂しいのが「粋」。放置してはそれこそ「不粋」というものだ。 というわけで、「粋」に少しでも近づくための参考文献。 初級者には、やはり杉浦日向子の漫画から入るのがオススメだ。『百日紅』『とんでもねえ野郎』(ともに筑摩書房)などは「粋だ」としか形容しようのない快作。小説で粋を感じたいのなら、ここはひとつ小難しく永井荷風が良いかもしれない。『■東綺譚』、小説じゃないが『断腸亭日乗』(ともに岩波文庫)もいい。理屈で攻めるなら九鬼周造の『「いき」の構造』(岩波文庫)が断然おすすめだ。目からウロコの“粋”の理解は、外遊の後に日本の美学を追求した哲学者ならではのもの。夏の読書にぜひどうぞ。 ※(■=さんずいに墨)
江戸専門家の第一人者として活躍した筆者が残した「いき」を知るための重要参考漫画。独特のタッチで描かれ、記録された江戸の日々の生活は、当時の習慣や人間のメンタリティまでカバー。江戸時代を散歩しているような気分になる。
明治、大正、昭和と時代と生活が劇的に変化していくなかで生きていく人たちを描いた小説。下町が舞台。現在では定義しがたい「いき」というスピリットが体に染み込んでいる。「いき」とはいったい何なのかと体の内から教える。
「いき」という日本特有の美意識を哲学的に解き明かすアカデミックな一冊。本書は「いき」を、媚態、意気地、諦めからなるものであると、社会全体を見回しながら、独自の考察で読み解いて見せる。目の覚める内容に変わりはない。