
vol.268
INTERVIEW
『おいしい殺し方〜A Delicious Way to Kill〜』
監督 ケラリーノ・サンドロヴィッチ × 主演 奥菜恵
人気劇団・ナイロン100℃を率いる鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチ(=KERA)と、映画から舞台まで幅広い活躍を見せる女優・奥菜恵。コメディーサスペンスドラマ『おいしい殺し方〜A Delicious Way to Kill〜』で絶妙のコンビネーションを見せる、2人の爆笑対談をお届けします!
―お2人の出会いって?
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下:ケ)「それをよく尋ねられるんですよね」
奥菜恵(以下:奥)「そうですねー(笑)」
ケ『ドント・トラスト・オーバー30』という舞台に、僕が出演をオファーしたのが最初の出会いです。でもそのときのことは、よく覚えてないんでしょ?」
奥「そうなんですよ、なぜか(笑)」
ケ「最初、奥菜さんはものすごく慎重でしたよ、警戒しているような感じで。ケラリーノなんて変な名前だしね?(笑)」
奥「いえ、そんなことは…(笑)。でも、その舞台に出させて頂いたときからKERA監督の世界観が好きで、映画や舞台作品をずっと見ているんですよ。発想やセンスがとても好きで」
ケ「僕は、今回の作品で奥菜さんのコメディエンヌとしてのすごさを実感しましたよ。僕がこれまで一緒にお仕事してきた女優さんのなかでは、コメディー的な勘が圧倒的にいい。女優としての質もコメディーに向いている面を持っていると思う。やっぱり面白いんですよ、きれいな女性があんなにギャーギャー言って(笑)。ユカはすごくダメな女なんだけど、そんな浅はかなところこそむしろ大きな魅力として演じてくれる」
奥「ユカは料理も下手だし、すぐキレるし、本当にダメダメな女の子ですよね(笑)。でも私には、そんなユカがいとおしくてしかたないんです。犯人の目星がついたとき、ユカが“なーんだ、自分のせいじゃないんだ”と、大喜びするシーンなんて、すごく好きですね」
ケ「人が1人死んでるんだけどね(笑)。僕はどうやら、女性から見て共感できる女性を書くのが得意らしいんですよ。よく、女性からそう言われる。まあ、男性から見て“色っぽい”女性を書くことも大事だし、それは今後の課題なんですけどね(笑)」
―確かにユカを演じる奥菜さんのハジケっぷりは爽快でしたね。
ケ「でしょう? 本当に僕は、人を絶賛することがないんですけどね、奥菜さんはすごいですよ。ユカが怒る場面なんて、本気で悔しそうだし(笑)」
奥「たぶん、私には“美しく撮られたい”という意識があまりないんですね。役がきちんと存在していることのほうが大事なので、どんな演技が必要になっても抵抗は感じませんでした」
ケ「それは、奥菜恵が美しい、という既成事実が世間に定着しているから、ひどいキャラクターを演じきっても大丈夫、と安心しているわけでしょ?」
奥「そんなことはないですよ(笑)!」
ケ「でも、頭のいい女優さんにはそういうことが分かるんだと思う。ここで思いっきり演じないと損をするだけ、と」
奥「中途半端に演じたくなかったんですよ。だから、自分のいつものキレるラインがココだとしたら(と喉元にラインを引いて)…」
ケ「いつものキレるライン!?(爆笑)」
奥「(頭上いっぱいに腕を伸ばして)こーんなところまでやりました。本当に血管が切れそうでした(笑)」
ケ「奥菜さんて、そこを本当にうまく感情に乗せて演じてくれるんですよね」
奥「そういう未知の部分をKERA監督に引き出してもらったんだと思います。感謝しています!(笑)」
ケ「いくらくれる(笑)?」
奥「あはは(笑)」
―KERA作品の“笑い”のリズムがみごとに生かされた映画になりましたね。
奥「KERA監督は(演技の)テンションのつながりを大事にしてくれるのでありがたいんですよ。細かくカットしていく撮影のしかたではなくて、(シーンの)始めから終わりまでワンカットで撮る、とか。それがとても演じやすかった」
ケ「僕自身が演技畑の人間なので、そういうほうがやりやすい、ということもあるし、役者さんも同じだろう、と思うんですよ。確かにワンカットで撮影してしまうと、その部分は編集のしようがなくなるので、かなりリスキーなんですけど、1つのシーンがダメだと、作品全体もダメになってしまいますからね」
―テンポの良さそうな撮影現場ですね。
ケ「違う意味で、現場のテンポは速かったよね。時間がなくて(笑)」
奥「けっこうタイトでしたよ」
ケ「この間NGカットを整理していたら奥菜さんが“だめだ、セリフが出てこない”って言ってる映像が出てきましたよ。奥菜恵、大パニック!」
奥「頭が混乱して、セリフが出てこなくなっちゃったんですよね。あんなことは今までなかったので、自分でもびっくりしました(笑)」
ケ「撮影期間が短いものだから、ちょっと詰め込みすぎたものね」
奥「あのとき監督がとても優しくて…」
ケ「だって、そんな時に怒ったってしかたがないじゃない(笑)」
奥「みんなの愛情をそのときにすごく感じました。それでつい涙が…」
ケ「本当に申し訳ないスケジュールで…。撮影期間が2週間あれば、楽しいだけの現場だっただろうけど、なにしろ8日間ですからね(笑)」
―最後に作品のオススメポイントをお願いします!
ケ「この作品は、現時点での日本におけるナンセンスコメディーの到達点になっていると思います。他にこの作品のような映画がないから言えることなんですけど(笑)。犬山イヌコ、池谷のぶえ、奥菜恵のかけあいの妙を楽しんでほしいですね。とくに映画やドラマでは見られない奥菜恵に出会えます!」
奥「ケラリーノ・サンドロヴィッチの舞台のおもしろさを映画で見ることができるので、ぜひ見に来てください!」

(本紙・秋吉布由子)
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
劇団「ナイロン100℃」主宰。第43回岸田國士戯曲賞、第5回鶴屋南北戯曲賞、第1回朝日舞台芸術賞など、さまざまな演劇賞を受賞。2003年には『1980』で映画監督デビュー。ミュージシャンとしての活動も有名。 |
奥菜恵
1992年、テレビドラマ『パ☆テ☆オ☆ PART1』でデビュー。『医龍』、『時効警察』など話題のドラマへの出演が続くほか、この秋公演のブロードウェイ・ミュージカル『ペテン師と詐欺師』など舞台でも活躍。12月16日公開の話題の大作映画『犬神家の一族』では犬神小夜子役で主要キャストを務める。
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| 監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ、波多野健 出演:奥菜恵、犬山イヌコ、池谷のぶえ、真木よう子他 ギャガ・コミュニケーションズ配給/1時間46分/8月26日よりシネマGAGA!(渋谷)にてレイトロードショー http://www.cinema-gaga.jp/
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