今週のTOKYO HEADLINE
vol.270
(2006.08/28-09/03)
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TOKYO CULTURE vol.270

INTERVIEW
パパ・タラフマラ『僕の青空』

小池博史
パパ・タラフマラ主宰

舞台上で行われることは数多ある。芝居はもちろんミュージカル、ダンスetc…。そんななか、演劇でもないダンスでもない、特異のものとして存在するカンパニーがある。それがパパ・タラフマラ。あえていうなら「パフォーミングアーツ」というのが正解か。昨年、設立当初からの目的であったガルシア・マルケスの『百年の孤独』を舞台化し、また新たなる道を探るための第一歩の作品となる『僕の青空』という作品を9月7日から上演する。今回は主宰の小池博史自身もパフォーマーとして舞台に立つ。強烈なまでの“青”をバックに大人のための“ロードムービー”ならぬ“ロードプレイ”なステージが展開される。

これは演劇なのか!?
ダンスなのか!? それとも…

「パフォーミングアーツって日本語訳すると『舞台芸術』なんですね。古典の作品というのは舞踊だの演劇だのアートだのってあまり分け隔てがないものなんです。それが『演劇』は演劇、『舞踊』は舞踊と分かれだしてしまって、その辺が居心地が悪くなってきてしまったんですね。僕は舞台の一番の凄みっていうのは、身体と空間と時間というものの融合体であるという認識を持っています。それらが合わさって初めてひとつの舞台の作品になっていく。それが言葉が多かったら演劇といわれたり、ほとんど踊っていたら舞踊といわれたりするんですけど、本来はなんでもありだったはずなんです。だから身体の要素というものをどうとらえていくのか、あるいは空間と時間という要素をどうブレンドしていくのかということが、ひとつの舞台作品の質を決めていくわけです。なので原型みたいなことをやっていると思ってもらえばいいんですけど」

 結成して25年。その活動は8期に分けられている。最初は台詞もあった。やがて台詞がなくなっていったときに「環境演劇」「動くアート」という言われ方をした。その後「アート」の枠組みに入れられ、その次に身体の要素がどんどん入ってきて「舞踊」ということになっていったりした。もっとも小池にとってそんなジャンル分けなど基本的には「どうでもいい」ことだ。パパタラの舞台は演劇でいうところの「台詞」は存在しない。身体表現の一部として「言葉」が発せられるだけ。パフォーマーの動きも独特だ。

「言葉を例えばひとつのリズムとして使うとかハーモニーとして使うとかいろんな使い方をしたんですね。実験もいろいろやったんですけど、言葉って特に日本でやっていると意味の呪縛から逃れられない。どうしても意味が真っ先にきてしまうんで、『じゃあ意味を一回消してみよう』ということで、言葉をなくしたんですよね。それが最初ですね」

 普通に考えると言葉が表現に一番適しているように思える。

「言葉しかとらえられないと面白くないんですよね。文学をやっているわけではないので。僕は高校のとき建築家になろうと思っていたんですが、たまたまフェリーニの映画を見てしまって、それまでの映像とか映画の概念っていうのが全く崩された。今までの映画というのはストーリーを追っかけるものであり言葉の流れを追いかけるものだったわけですよ。ところが映像っていうのはこういうものなんだと。映像での価値・表現というものがあるんだとびっくりしたんですね。それで建築家になるのをやめて映画監督になろうと思って大学に入ったんですが、お金があんまりなかった。そんなわけで最初にやるんだったら映画より舞台のほうがいいだろうというのがとっかかりだったんです。そういう流れでやってますんで、もともとなにか言葉でものを伝える以上に伝えられる力、『舞台芸術言語』っていうものがなけりゃいけないだろうって思ってたんですね。それと『百年の孤独』を舞台化するためには、既存の演劇や舞踊ではとってもじゃないけど表現できないな、新しい表現形態を作らないとちょっと無理だなと思ってましてね」

 国内での評価に比べ海外での評価が異常に高い。

「海外の批評でよく書かれるのは全体性みたいなものですね。全体でもってひとつの言葉みたいなものがポーンと出てくる。ただそれが日本の場合の批評になってしまうとどうしても細部から入ってしまう。細部から入ると結局全体が分からなくなる。30カ国くらいで公演を行ってきましたが、一番難しいのが日本なんですね。どうしてかっていうと日本人は最初から自分が思っているのではなく、なんらかの情報の追体験として『これはいいもんだ』って考える傾向があるのではないかと思う。海外の人は多分最初から分からないものと思って見ているんでしょうね。最初から異文化のものを分からなくたってあたりまえだろうというスタンスに慣れているんですよ。日本人っていうのは、情報としてないものに対する恐怖みたいなものが多分強いんだと思うんです。ですからパパタラなどは情報としては空っぽの状態で見れば面白いのでは。これは何だ!? と考えるなって感じですか」

「意味」とか「理由」にこだわるところ、「右にならえ」の考え方というか教育方針は日本人の特性だろうか。

「間違いなくそうじゃないですかね。与えられた情報が一番安心する、という傾向はどんどん強くなっていると思う。それははっきりしていて今高校生でなりたい職業で一番多いのが公務員。公務員になりたいっていうのは安定を一番に求めるわけでしょう。安定を求めるっていうのはマスを相手にしたいっていうこと。ミニコミはあんまりよくないんだという発想がある。マスが好きなのはいい。でも同時にマスじゃないものを発掘するっていう力もないといけない」

 分からないことに頬かむりしてしまえばさぞかし人生は楽であろうが、それで果たして楽しいのだろうか。そんな人生に満足な人はスズナリに来なくてよし。未知なるものに刺激を感じたい人はスズナリにいらっしゃいませ。



(本紙・本吉英人)

【日時】9月7日(木)〜12日(火)(開演は平日19時30分、土日14時/19時30分。開場は開演30分前)
【会場】ザ・スズナリ(下北沢)
【料金】全席自由・日時指定整理番号付 前売3800円/当日4300円。学生・60歳以上割引3500円/ペアチケット7200円(SAI Incのみの取り扱い)。当日券は開演60分前から発売。
【問い合わせ】SAI Inc.(TEL 03-3385-2066 [HP] http://www.pappa-tara.com/
【作・演出・美術】小池博史
【出演】小池博史、松島誠、池野拓哉、菊地理恵


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