今週のTOKYO HEADLINE
vol.275
(2006.10/02-10/08)
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撮影:加藤大毅
INTERVIEW vol.275

INTERVIEW

『ワールド・トレード・センター』
監督 オリバー・ストーン

暗闇にロウソクが灯ったら、私はそれを描きたい―。

 2001年9月11日、世界を震撼させた同時多発テロの悲劇から5年。2機の航空機が激突し、崩壊していく世界貿易センタービルに、人命救助のために突入した人々がいた―。
社会派の巨匠と言われ続けるオリバー・ストーン。しかし彼が『ワールド・トレード・センター』で描こうとしたのは、あの悲劇のなかで輝いた真実のドラマだった―。

「全米公開の前に、関係者のために何度か上映したんだ。最初に、映画の主人公のモデル、ジョン・マクローリン夫妻とウィル・ヒメノ夫妻の4人だけのために、試写を行ったんだ。彼らも最初は、自分たちがどんなふうに描かれているのか、ドキドキしていたみたいだね(笑)。でも劇場から出てきたときには、安心した様子で“とても良い映画だった”と言ってくれたよ。その後、彼らの友人や、実際に救援活動に携わり、この映画に協力してくれた人たち、そして港湾局の警官や消防士たちを招待して、鑑賞してもらった。そうやって“草の根”的な試写会を行っていったんだが、反応はどれも素晴らしかった。この映画を作ることができたのはとても栄誉なことだと思っている。その理由は、自分のルーツであるニューヨークを再び描くことができたこと。そして“ごく普通の人々”を描くことができたということだ」

 社会派監督が、なぜ今回は、ヒューマニズムを描こうとしたのか。

「『アレキサンダー』から帰ってきたら、この作品の脚本を手渡されたんだ。普通は脚本から自分で手がけることが多いんだが、今回はこの5人を主人公とする物語に、とても納得することができてね。なぜ納得できたのか。『プラトーン』と通じるんだが、主人公が、政治的な理由ではなく、しなければいけないと感じたことをした、ごく普通の人々だということなんだ。9.11の話というのは、あの後、あまりにも政治的に利用され続けてきた。何かを憎む気持ちを育ててしまったこと、世界を二極化させてしまったこと、これはまさにベトナム戦争の時代と同じだね。でも、私がそんな話を描いてもしようがない。“普通の人々”がどんな気持ちを抱いたのか、心から出発するストーリーを描きたかったんだ。人間は、どんなことがあっても頑張れる。私はね、今世界がどんどん暗くなって暗黒時代と言ってもいいとさえ思うんだが、そんな中でロウソクが灯されたとしたら、まさにそのロウソクの物語を描きたいと思うんだよ」

 とはいえ、やはり9.11を政治的切り口からとらえる試みも構想中のようだ。

「今は、政治的な切り口で9.11を描くことはできないだろう。なぜなら人々の傷がまだ、癒えていないから。『プラトーン』が兵士の心をありのままに描くまでにも18年かかったんだ。でもいずれ、別の観点から見た9.11も描きたいと思ってる」

 オリバー・ストーン作品といえば、毎回さまざまな物議をかもし、世界中から大絶賛される一方、批評家たちのバッシングの的になることも多い。

「おそらく今回は、これまで一番いい批評が多かったんじゃないかな。だが今度は“こんなのはオリバー・ストーンじゃない、なんで変わったんだ”という意見もあるよ。ヨーロッパのある批評家なんて、政治的な映画じゃないというんで怒った人もいた。でも私に言わせれば“君たちのために映画を作っているわけじゃない”と言うところさ(笑)。『ナチュラル・ボーン・キラーズ』はとても前衛的だと言われたし、同じ年に作った『天と地と』は非常にクラシカルな作品だった。つまり、私はその題材によって一番ふさわしい作り方をしているんだ。それに、今回は実際に生存している人々がモデルとなっている。彼らの気持ちをないがしろにするような作品を作ることなんてできないよ」

 今を暗い時代と評する監督。では、これからの未来は…?

「コップの中の水を、半分しかないと考えるか、半分も残ってると考えるか。私はいつも、物事は楽観的に考えるべきだと思っている。そして、世の中は常に変えていくことができると思っている。だから、人々の恐怖を利用する未熟な政治家(と、またブッシュ大統領の写真を見て)の言うことに惑わされてはいけない。自分たちが未来を作っていくんだと考えないとね」

 オリバー・ストーンが生み出した、歴史に残る名作の数々。社会派の作品と評されたものでも、そこには圧倒的な感動があった。監督が見守りたいと思った“ロウソク”の輝きが今、新たな感動を生む。




(本紙・秋吉布由子)

プレゼントにもらったというぬいぐるみの胸についていた“S”の字を、ストーンのSだ!”とおどけて、自分のサングラスを掛けさせようとしてみたり、会見で、長い付き合いだという通訳さんを“ぼくの日本の妻”と紹介したり、コワモテ(失礼)ながら意外と(またまた失礼)お茶目な監督。でもブッシュ批判は緩めないのだった。
STORY:2001年9月11日。ニューヨークに、突如轟音が響き渡った。世界貿易センタービルに飛行機が激突したという。緊急召集を受けた港湾局警察官・マクローリンは、部下のヒメノたちとともに、ビルへと突入していくが…。
『ワールド・トレード・センター』監督:オリバー・ストーン 出演:ニコラス・ケイジ、マイケル・ペーニャ他 UIP配給/2時間9分/10月7日より日比谷スカラ座他にてロードショー公開 http://www.wtc-movie.jp/


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