
vol.279
世界自然遺産
秋の白神山地をゆく。
─秋田県能代─
奥深き巨木の森とともに暮らす─“世界遺産の里”
秋田県と青森県にまたがる世界自然遺産・白神山地。そこに広がるブナ原生林は人為的な影響をほとんど受けていない貴重な自然として、多くの人を魅了すると同時にあつく保護されている。その白神山地も紅葉の時期を迎え、少しずつ冬じたくを始めている。今回訪れたのは、そんな秋の白神山地と、その自然に抱かれる里。白神山地の秋田県側の能代市と周辺の町は、世界遺産指定地域に劣らぬ自然に触れることができる自然派に人気の旅スポットでもある。特に四季折々の美しさを味わえる新緑から紅葉が終わる11月まで、多くの人がこの周辺地域を訪れては白神の大自然に触れているのだ。秋田県では、人為的影響をほとんど受けていない遺産指定区域の保護のため核心区域への入山を禁止している。しかし自然遺産地域を一望できる登山ルートがあるというので上ってみることにした。標高1000メートルほどの二ツ森は最も “気軽に”世界遺産に近づけるルートだというが…登山に不慣れな体には少々こたえる道のり。しかしこの登頂からの眺めが、多くの“白神ファン”を呼び寄せるのだ。
とはいえ登山をしなくても、白神山地の自然を全身で体感することのできる広大な自然体感スポットは、周辺にいくつも存在する。白神といえばブナ。白神山地で最も美しいブナ林といわれるのが岳岱自然観察教育林だ。苔むした巨岩とブナの巨木のなかを歩くことができる、広大な森だ。他にもふたつい白神郷土の森、水沢山のブナの森公園など、白神のブナに触れることができる森が保護されているのだ。能代をはじめとする“白神の里”を訪れる旅人は、地元の人々がごく自然に、しかし強い意思を持って自然を見守ろうとする姿に出会うはず。能代の町を守るために植えられ、現在では広大な林となったクロマツの砂防林。秋田杉の天然木が生育する保護林。森を忘れた都会人を圧倒する風景とともに、里の人々は生きている。
「白神山地」を知る
白神山地とは、秋田県北西部と青森県南西部にまたがるおよそ13万ヘクタールにもおよぶ広大な山地帯の総称。そのうち人為的な影響をほとんど受けていない原生的なブナ林で占められている1万6971ヘクタールが1993年にユネスコの世界自然遺産に登録され、白神の名が世界的にも知られることになった。自然遺産に指定された地域を核心地域、その周辺を緩衝地域として、遺産地域内での自然破壊行為や無許可入山などがないよう、保護を行っている。核心部への入山は指定されたルートに限り、届出をして入山できる(秋田県側は学術調査などの場合のみ)。ブナ以外にも、豊かな動植物が生息し、絶滅の危機に瀕した植物なども発見されている。
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里の秋、絶品郷土料理に舌つづみ
秋の旅の楽しみは紅葉だけではない。旅人を迎えてくれるのが“うまいもんどころ”秋田ならではの郷土料理の数々だ。秋田を訪れた最初の夜、さっそく郷土料理を頂く機会に恵まれた。昔ながらの郷土料理や地元の食材を活用した創作料理を作りながら伝統の味を残そうと活動している料理人などで作られているグループ「食彩人」のおもてなしだ。秋田名産の魚・ハタハタは、こんがりと焼いた表面、ふっくらとした白身、ぷちぷちとした食感が素朴なうまみをかもし出す。そして忘れてはならない秋田名物・きりたんぽ鍋。新米のあきたこまちで作ったきりたんぽと比内地鶏、季節の野菜をたっぷりと使った豪勢な鍋だ。棒状のきりたんぽではなく、ボール状のだまこを使えばだまこ鍋になる。ちなみに食彩人の料理は、能代市の「食事処 やま久」他数店舗で味わうことができる。
海にも面しているこのエリアは、海と山、両方の幸を味わえるのもうれしい。季節の郷土料理や地酒が味わえるお店を前もって調べておくと旅の楽しみも増えそうだ。
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★400年ブナ
苔に覆われた木肌、太くそびえる枝。数百年を生き抜いたブナの巨木を前にすると、神秘的な感動に包まれる
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白神の“樹”と出会う。
能代では、白神山地のブナをはじめ、さまざまな樹木と出会うことができる。能代の旅で出会った木々を紹介しよう。
「岳岱自然観察教育林」は、苔むした巨石とブナの原生林という世界遺産の趣に、指定区域外で触れることができる自然観察林。約12ヘクタールのブナ原生林を散策できる。この森にあるのが“白神のシンボル”とよばれる400年ブナ。その姿は神秘的で雄大そのもの。太い枝が折れて、その傍らに横たわり苔むす姿は、太古の森を思わせる。
秋田で有名な樹木といえば“秋田杉”。仁鮒水沢スギ植物群落保護林には高さ58メートル、直径164センチメートル、推定樹齢250年の秋田杉がある。ここには貴重な天然秋田杉が生育しており、観測ルートでその高さを観察できる。
幸田露伴が「遊行雑記」のなかで“家もなく人も無く草もなく…”と記している能代の海岸。しかし現在、その同じ場所には、南北約14キロメートルにもおよぶ雄大なクロマツの防風林が広がっている。かつて砂浜だったことを思うとその光景はさらに美しく目に映るのだ。
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