
vol.279
INTERVIEW
『父親たちの星条旗』
ジェシー・ブラッドフォード
クルーで一番愉快なのはクリントなんだよ!
クリント・イーストウッド監督、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮で、硫黄島の戦いを日米双方の視点から、2部作構成で描くというプロジェクト第1作目『父親たちの星条旗』がついに公開。硫黄島に星条旗を立てた6人のうち生還した3兵士の1人レイニー・ギャグノン役を演じたジェシー・ブラッドフォードにその大プロジェクトを語ってもらった。
―オファーを受けて…。
「うれしかった。本当に興奮したよ。僕みたいな若い俳優にとって、一生に一度あるかないかというチャンスだと思ったからね。映画について知ったとき、すごくエキサイティングなプロジェクトだと思ったよ。僕としては何とかオーディションを受けたかった。でも、断わられる確率のほうが多かったから、あんまり結果を期待しないようにはしていたけど(笑)」
―これまでなんらかの形で戦争体験に触れた経験が?
「僕は映画学校に進学したので、これまで戦争とは接点が無かった。でも祖父は2人とも戦争経験があるし、硫黄島で戦った退役軍人の方たちに話を聞く機会もあった。本作に出演するためにいろいろリサーチして、ドキュメンタリーを見たり本を読んだりしたよ。でも、本当に経験したのと、そういうもので知識を得ることはまったく違うと思う。でも僕の仕事は俳優だから、そういう人々を演じるわけで、リサーチをしてできるかぎり理解しようとするけど」
―本物さながらの戦闘シーン。その撮影で感じたことは。
「みんながライフルを持って、あちこちで撮影用の爆発が起こって、アドレナリンが出っ放し(笑)。それでもやはり安全だってことが分かっているから本物の海兵隊員の心情に至ることはできないだろうね。それでも、自分のなかで大きく変わったことがある。本当に戦場に行った人たち、国のために犠牲を払って戦争に行った人たちに、深い尊敬の念を抱くようになった。もちろんこれまでもそういう人たちには敬意を払っていたけど、この映画に携わったことで、寒気を覚えるくらいの感情を覚えたんだよ」
―監督について。
「クリントは、あれこれ命令をするタイプではなくて、大抵のことはそれぞれに任せてくれる。非常に俳優を信頼してくれる監督なんだ。クリントが僕らに寄せてくれる信頼感をひしひしと感じられて、僕たちも自分に自信を持てるようになった」
―クルーで一番愉快な人は?
「ハンセン役のP・ウォーカーやライアン・フィリップもかなりおもしろいヤツだよ。でも僕が思うに一番はクリント・イーストウッドだね! とにかく素晴らしいユーモアの持ち主。でも彼はそれを非常に静かに表現するものだから、注意深く聞いてないと聞き逃しちゃうけれど(笑)」
―レイニーは英雄だと思う?
「彼は志願して海兵隊に入っているんだ。だからある意味では、その時点で英雄だったといえると思う。ロサンゼルスで、あるインタビュアーから“あの3人のなかでレイニーが一番、自分を英雄だと思っていたのでは?”という質問をされた。僕は、それは絶対無い、と答えたよ。タイムズスクエアのシーンで語るとおり、彼は本当の英雄は硫黄島で命を落とした兵士たちだと思っていたはず。でも自分が生き残れたこと、いきなり英雄視されたことで興奮はしていただろうね。僕は、彼も英雄だと思う。でも彼は自分が英雄だとは思ってなかっただろう」
勝敗や善悪を問うのはナンセンス、戦争の意義について語り合う作品になればいい。そう語るジェシーは、自ら大きな意思を手にしたようだ。

(本紙・秋吉布由子)