
vol.280
未履修救済案−実質50時間補習で決着
全国の高校で必修科目の未履修が発覚した問題で、政府は1日、上限70時間(2単位、1時間は50分授業)の補習を条件に卒業を認める原則を確認したうえで、学校の裁量で実質50時間の出席でも卒業を容認する方向で合意した。救済策をめぐる政府、与党の調整は事実上決着した。受験に必要な内申書については、実態を反映したものを提出するよう高校に求める通知を出す。
政府の救済策は、補習を冬休みと春休みに各20時間、2学期から3学期中に30時間の計70時間とする方向だった。だが、公明党が「冬休みの補習は受験前で生徒の負担が大きい」と主張。50時間程度の補習で卒業できるよう求めていた。自民党内には救済案を尊重する意見もあったが、与党の協議で補習時間の短縮を求める方向で一致。伊吹文明文部科学相に要請した。
与党協議後、伊吹文科相は「原則(70時間)は崩さないが、病欠など単位認定に必要な出席で履修と見なすとか法的根拠はある」と言及。政府筋も「こちらから(積極的に)50時間とは言えないが、文科省側も(70時間の)3分の2の出席で単位が取れるとしている」と述べ、原則70時間を維持しつつも50時間程度の出席があれば、校長の柔軟な裁量で卒業可能となることで事実上、決着したことを明かした。
文科省によると、履修不足の時間数は70時間以内の生徒が約6万人と最も多い。一方で「指導要領通りに履修していた生徒とのバランスが必要だ」(伊吹文科相)との認識から、70時間を上限とする補習による救済案を検討していた。補習だけで卒業要件を満たせない生徒には、リポート提出などを課し、それでも卒業要件を満たせない生徒や未履修のまま卒業した既卒者には、行政事件訴訟法の「事情裁決」と呼ばれる例外的な規定を適用し救済を図る方針だ。
未履修でついに自殺者
30日午後4時すぎ、茨城県大子町左貫の山林で、一部の教科の未履修が発覚した茨城県立佐竹高校(同県常陸太田市稲木町)の校長、高久裕一郎さん(58)が木の枝に掛けたロープに首をつって自殺しているのを大子署員が発見した。調べによると、高久さんは29日から行方不明になり、家族が30日昼ごろ、大子署に捜索願を出した。現場は高久さん宅から約2キロの山林。入り口には高久さんの車が止めてあった。
同県教育委員会は31日、高久校長が残した5通の遺書のうち、遺族が公表を認めた1通の内容を公開した。遺書はA4判の原稿用紙1枚で、「生徒の調査書、成績表については、生徒に瑕疵(かし)はありません。生徒に不利益にならない御処置を、一命を副えてお願い致します」などと書かれており、未履修問題への対応が高久校長の自殺の一因になったことが明らかになった。