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vol.282
(2006.11/20-11/26)
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写真:加藤大毅
TOKYO CULTURE vol.280

06年上半期の超話題作『嫌われ松子の一生』がDVDリリース!

中島哲也監督

「『松子さんはどんな感想を持つんだろう』なんて思いながら作っていました」

 5月に劇場公開され、一大ムーブメントを巻き起こした映画『嫌われ松子の一生』は、主人公・川尻松子がさまざまな男と出会い、坂道を転げ落ちるように不幸になっていく物語だ。

 そのストーリー展開はいたってシンプル。しかし暗いタッチで物語が綴られていく原作とは対照的に、メガホンを取った中島哲也監督は、松子の生涯をコミカルかつポップな超ド級のエンターテインメントに変貌させた。

 まさにマジックとしか言いようのない大仕事。ところが中島監督は原作を読んですぐに「映像がワッと浮かんできた」というから、“天才”の枕詞はダテではない。

「僕は原作を女性の苦労話というより、冒険譚みたいな気分で読めたんです。ファンタジーや童話というのは、例えば女の子が冒険の旅に出て、いろんな国をめぐって、いろんな魔女に出会って、最終的にはお家に帰るというようなベースラインがありますよね。それと行われていることはまったく違うけれど、ファンタジー、童話のベースラインと松子さんの人生って、実は似ているんじゃないかと思った。だからこの映画でアニメーションやCGを入れたり、歌ったり踊ったりするというのは、僕の中ではいたって自然なことでしたね」

 原作を読み、自ら映画化を提案したのは『嫌われ松子の一生』が初めてだったという中島監督。それほどまでに「川尻松子」との出会いは運命的だった。前作の『下妻物語』と比べ、撮影時間はおよそ倍。映像の合成と音楽に関しては5、6倍の労力がかかったという。それでも中島監督は「彼女(松子)に会いたい」という一心で作品作りに没頭した。

「つらいけど面白かったですよ。最初に方向性を決めた時点から、ものすごく大変な映画を作るんだっていうことは分かっていましたから。予想通りつらい作業にはなりましたけど、僕自身は結果が分かっているものより、難しいものを試行錯誤しながら作っていくほうが好きなんですよね」

 物理的な作業量はもちろん、「中途半端に作ったら松子さんに悪い」という思い入れも加わり、中島監督の代名詞でもある“厳しい演出”は、後に語り草になるほど凄みを増した。

「松子さんが“知り合いの誰か”という感覚でしたね。『松子さん、この映画を見たらどんな感想を持つんだろう』なんて思いながら作っていましたよ。演出に関しては、僕は絵コンテ通りに撮れないと嫌だとか、俳優さんをいじめようとか、そういうつもりは全然ないんです。ただ僕の懐が狭いというか(笑)、どの俳優さんも『監督がずっと怒鳴り散らしている現場は最近ない』っておっしゃってましたよ」

 中でも主演・中谷美紀との“バトル”は、単行本にもなるほど壮絶を極めた。しかし当時の状況をうれしそうに振り返る監督の表情からは、ぶつかり合いながらも最高の作品を作り上げた充実感が漂っている。

「たぶん最後の10日間ぐらいは『早く終われ』っていうことばっかり考えてたんじゃないでしょうかね。僕は面白いので何度でも一緒にやりたいと思っていますけど、中谷さんは『二度と出ない』とおっしゃっていましたよ。愛情の裏返し? それにしたって、あんなにいやだって言うことはないと思いますけどね(笑)」

「次はもっとニコニコしないと、俳優さんが出てくれなくなります」と苦笑いしながらも、中島監督は次回作も“ハイテンションな映画”になると予告する。

「こういう映画を作ることに意味はあると思うんです。そもそも“実写”“アニメ”みたいに分かれていることが実はおかしいじゃないですか。映画作りはもっと自由になるべきなんです。そんな垣根は関係なく映画を作る人が増えてほしいですし、僕がそういうきっかけになれたら面白いという思いはありますよね。ただ体力的にはほぼ限界というか、この作風でこのまま作ってたら死んじゃいますよ(笑)。いま僕は47歳なんですけど、50歳を過ぎたら路線も作風もガラっと変えようかと思っているところです」

 そうは言うものの、「簡単なものは刺激がなくて飽きちゃうんです」と中島監督。稀代のクリエイターはこの先もきっと、スタッフ、キャストを震え上がらせながらもエポックメイキングな作品を生み出し続けるに違いない。



(文/本紙・小池龍之)

『嫌われ松子の一生』
 リリースに際して音楽や色の調整をやり直したというDVDにも、中島監督のこだわりは満載されている。 「今回は相当いい感じですね。劇場で見ても分からないところなど、細かいディテールも含めてDVDを楽しんで頂けると思いますよ」  さらに“愛藏版”では、壮絶な撮影現場の一端がうかがえるメイキングも収録されている。 「撮影現場は楽しくないんだなっていうことが、すごく伝わると思います。『自分はこんなに怖い顔して怒ってるんだ』ということが分かりましたよ(笑)」

販売元:アミューズソフトエンタテインメント 発売中 通常版3990円、愛藏版/初回限定生産6090円(ともに税込)


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