今週のTOKYO HEADLINE
vol.283
(2006.11/27-12/03)
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写真:加藤大毅
MOVIE vol.283

INTERVIEW
出演映画40本! 若きベテラン俳優が、話題のイーストウッド作品出演エピソードを語る!

『硫黄島からの手紙』
加瀬 亮

彼が美しい演技をしている…そういって監督はすぐにカメラを向けたんですよ

「言葉は問題ではなかったと思いますよ。それよりも目を合わせて意思を伝えるということのほうが大事じゃないかな」

 そう語るのは、クリント・イーストウッド監督が、アメリカと日本それぞれの視点から、2部作構成で硫黄島の戦いを描くという壮大なプロジェクト、第2部『硫黄島からの手紙』で、渡辺謙、二宮和也らとともに出演した加瀬亮。

「いつも役者の側にいてくれる人なんですよ。…でも映画の話をしたことってあまりないんですよね。僕は子供のころシアトルに住んでいたんですけど、監督もそうだったので、そのころに働いていた工場のこととか(笑)」

 近年、日本の役者たちは次々と世界的作品に進出している。そんな中、加瀬がすぐ側で見た“世界的監督”イーストウッドの姿とは…。

「役者のことがよく分かっている人なんですね。自分が役者をやってきた経験があるから、監督であってもすごくよく役者をカバーしてくれる。だから僕たちは本当にやりやすかった」

 それを示すこんなエピソードがある。

「僕もびっくりしたんですけどね…。普段から、本番に向けて演技の感情を自分でコントロールしていくんですけど、たまたま本番前に“ああ、今イイ感じだなあ”という瞬間がきちゃったんですよ。そうしたら監督がすかさず“今こっちで美しいことをしているから撮ってくれ”と言ったんです。Beautiful…美しいって直訳すると不思議なんですけど(笑)。本番で同じことができたか分からないから、その瞬間を撮ってくれると気づいてすごくありがたかった。本当によく見てくれているんですよね。もちろん、僕に限らず他の人たちのことも同じように」

 普段の監督を加瀬はこう語る。

「よくジョークを言って、ナッツを食べている人(笑)。…全部が穏やかな人なんですよね。洋服にしてもブランドなんて着ないし、家族と穏やかに過ごしていたり…そんな印象ばかりでしたね。そんなだから、現場はすごく心地よかった…とても静かで(笑)。二宮君も言ってましたね、すごく静かだなあって。監督が言うには、“西部劇をやったとき、馬を怯えさせないように静かにする必要があった。馬はとてもナイーブだから。でも監督をやっていて気づいたのは、馬よりも人間…役者のほうがナイーブだ”と」そんなエピソードはつきない。

「スタッフの人に聞いたら、監督の場合、食事の事情も他の現場とは違うんだそうですよ。普通はエキストラさんたちと僕たちの食事内容は違うとか。でも監督の現場って、みんな同じなんです。そういう姿勢が、すごく心地いいんですよね」

 今回、加瀬が演じたのは二宮演じる主人公・西郷と行動をともにする新入りの兵士・清水役。

「戦争のことをよく分かっているわけじゃないけど、始めた人たちには“ちょっと待ってくれ”と言いたいですね。今回、清水を演じることで戦争を疑似体験したわけですけど、撮影前にいろいろ資料を読んでいたのに、そんなことは全部吹っ飛んで、結局感じたのは“怖い”とか“死にたくない”という感情でした。本当に、この思いだけは忘れずにいようと思います。あの時代で男らしくないとか女々しいとか言われてることは、今の時代ならカッコいいことなんですよね。くよくよするなって言うけど、きちんとくよくよすることが大事。それを、清水を通して感じてもらえたらうれしいですね」

 彼はこれまで40本もの作品に出演してきた若きベテランだ。

「仕事好き? いや、僕は“休み好き”ですよ(笑)。長い休みをもらうと旅行に行くんです。短いときはキャンプとか」

 映画好きな人なら彼の名バイプレイヤーぶりはよく知っているはずだが、主要キャストを務めた本作に続き、2007年には周防正行監督の最新作『それでもボクはやってない』などの主演作が続く。

「主演も脇役も、ぼくにとってはあまり変わらないですよ。要はその映画がきちんとしてることが大事で、自分が主役かサブかは関係ないんですよね。映画が良ければ全員“勝ち”だし、悪ければ全員“負け”(笑)。でも、主演のほうが楽だと感じました。みんなが立ててくれるし、協力してくれる。しかも現場に長いこといられるから、雰囲気もしっかりとつかむことができる。小さければ小さい役ほど難しいですね」

 そんな加瀬は、本作を戦争映画とは位置づけない。

「この作品は戦争映画というよりも“人がやってしまうこと”を描いているんじゃないかな。監督の作品はそういうところがあると思う。西部劇であれ、『ミリオンダラー・ベイビー』のような現代劇であれ。善悪でなく、人間が持つ業のような何か…。答えじゃない。いつも問いかけているんです」

 その穏やかな問いかけこそ、役者たちへの最大の演出法だったのかもしれない。



(本紙・秋吉布由子)

『硫黄島からの手紙』
監督:クリント・イーストウッド 出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童他 ワーナー・ブラザース映画配給/2時間21分/12月9日より丸の内ピカデリー1他にてロードショー公開 http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/


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