今週のTOKYO HEADLINE
vol.283
(2006.11/27-12/03)
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TOKYO CULTURE vol.283

サウンドで描かれる幻想的世界

モグワイ
スチュアート・ブレイスウェイト

モグワイは、スコットランド・グラスゴー出身のロックバンドだ。とはいえ、音は一般に広く認知されているロックとは少し違う。なぜなら彼らの作品はほとんどボーカルレス。つまり、インストルメンタルミュージックなのだ。バンドを結成してから10余年。当初は“その他”的な扱いだった彼らのサウンドは国境を越えて愛されている。「言葉がなかったからこそインターナショナルバンドになれた」。来日公演中のスチュアート・ブレイスウェイトに聞いた。

“インストルメンタルのデメリット? ラジオでかけてもらえないことだね(笑)”
一スチュアート・ブレイスウェイト

 モグワイは体感するバンドだ。もちろん自室でじっくりと聞き入るのもいいのだが、轟音と静寂が波のように寄せて返すライブパフォーマンスは別ものなのだ。

 11月11日、新木場COAST。ちょっとだけ頭も寂しくなってきたモグワイのメンバーは、ストロボがバチバチとたかれるなか、鼓膜がビリビリするノイズで会場をシーンとさせていた。ハリを落としても聞こえそうな静けさ。呼吸することさえためらうような緊張感が漂う。それはまた、心地よい空間なのだけれど。

 開場まであと30分となったころ、ギタリストのスチュアート・ブレイスウェイトはバックステージで取材を受けていた。「セルティックスカラーだね」と声をかけるとスチュワートが胸を張って微笑む。中村俊輔が所属することで知られるセルティックスは、昨シーズンはリーグ優勝を果たし、現在もリーグ1位とすこぶる調子がいい。「明日も試合があるんだ。ライブもあるんだけど(翌日は恵比寿リキッドルームで公演)、どうにか見られそうだよ」

 今年3回目の来日。1度目は3月にリリースされたアルバム『Mr.Beast』のプレビューで、2度目はフジロックフェスティバルだった。いつものことだが、この日も会場は満杯で、階段にも、2階席にも少しでもメンバーの姿を拝もうとスペースを探す人でいっぱい。平均年齢層はメンバーと同世代の30歳以上という感じで、記者が彼らのライブを初めて見た90年代とは違って女性の姿も目立つ。

「最初は野郎ばっかりだったし、僕らがやってるのもインストルメンタルだからお客さんもあんまりいなかった。メディアからも注目されるようなこともなかったね。でも、ただずっとそれをやってきて、知らない間にインターナショナルなバンドとして認識されるようになってしまった。インストルメンタルって言葉がないから受け入れられやすい。ただ、ラジオでかけられにくいっていうデメリットはあるけどね、僕らの曲は長いし(笑)。それで…何だっけ、女性のファンの話だ。それはどうしてかっていえば、僕たちがフェミニンな音楽をしばらくやっていたからじゃないかな。ここのところ作品が静かなものになっていて、周囲から、プロデューサーもその1人なんだけど、ライブとアルバムのサウンドに差がありすぎるって指摘されることが多かった。自分たちも同じように思うところがあったのは確かで。それで『Mr.Beast』は、ライブに近い音のものを作るのもいいんじゃないかと思って作ったんだ」

 記者が『Mr.Beast』を聞いたとき、97年のレディングフェスティバルでのパフォーマンスがフラッシュバックした。破れそうになる鼓膜もさることながら、ギターが壊れてしまうのではないだろうかと心配するほどのノイズ、立ち尽くす観客。衝撃だった。その衝撃はゆっくりと時間をかけて、国境を越え、文化を越えた。今見回してみれば、国内にもモグワイが切り開いたサウンドをプレーするバンドがいくつか存在している。

「そういうバンドが増えてきたのはうれしいこと。これからも刺激を与え続けられるように頑張っていかないといけないって思う。僕らは…といっても、実務をやってるのは1人なんだけど、ROCK ACTIONっていうレーベルもやっているんだ。レーベルを通じても刺激を発信していきたいね」

 世代や国境だけでなく、モグワイの音楽は違う表現とも手をつないだ。この7月に公開、DVDも発売されたばかりの映画『ZIDANE : ジダン 神が愛した男』(ダグラス・ゴードン&フィリップ・バレーノ監督)で、全編のサウンドトラックを作曲、演奏している。モグワイが映画のために曲を書き下ろしたのは初めてだ。

「監督のダグラス・ゴードンが曲を書いてくれないかって言ってきたんだ。彼とは同じグラスゴー出身なんだけれど、今アメリカに住んでいるから接点がないんだよ。グラスゴーを捨てた男なんだ!(笑)それはさておき、彼の作品を見て、話を聞いて、僕らがやりたいことと通じるところがあると感じたし面白いことができそうだと思って参加することにしたんだ。もちろんジダンはいい選手だしね」

 ときどき捩れたユーモアやちょっとした毒舌も交じりつつのインタビュー。あっという間に時間が過ぎて、間もなく開場時刻だ。サウンドチェックの音もライブ前のSEに変わって、ざわざわした会場の雰囲気がなんとなく伝わってくる。

「日本公演が終われば、今年のライブは終わり。クリスマスは奥さんと一緒に過ごすよ。そうだ、日本でクリスマスプレゼントを買えばいいね……。今ね、どうにかしてPS3を手に入れられないかって頼んでるんだ……どうにかならないかな。奥さんの前に、自分へのプレゼントだよ(笑)」

 そう言うと、スチュアートはすっくと立ち上がり、最後のインタビューのために階段をトットットと登っていった。



(本紙・酒井紫野)

Mr.Beast hostessより発売中 2500円(税込)
迫力のライブにより近づけたという最新アルバムは必聴!
ジダン 神が愛した男 hostessより発売中 2415円(税込)
「ジダンはいい選手だったよ」とスチュワート。


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