
vol.283
道路と税金の
問題について考える Part1
ニュース番組で常に話題になっている「道路と税金」の問題。特に昨年末からマスコミをにぎわしているのは『道路特定財源の一般財源化』の議論。「道路利用者が支払った税金が余っているので道路整備以外のものにも使えるようにしよう」というのが一般財源化推進派の主張だ。本当に道路特定財源の一般財源化はするべきなのか、日本における道路整備の実情と、道路特定財源の使い道を検証してみよう。
道路特定財源ってなに?
道路のために道路を使う人が納める税金
特定財源は、あらかじめ使い道が決められている税金のことで、道路特定財源は道路や橋をつくったり、交差点の改良、歩道の整備やバリアフリー化から除雪まで、速く安全に走れたり、安心して歩ける道路のために幅広く使われている税金のこと。
この税金を納めるのは、自動車を買ったり保有している人、ガソリンを買う人など、道路を利用する人に限られている。都会で生活していてバスや電車しか乗らない人は「自分には関係がない」と思うかもしれないが、バスやタクシーを利用していれば、間接的に負担していることになる。
現在の道路特定財源は、最も歴史が古く、昭和24年に創設された揮発油税(ガソリン税)から、43年創設の最も新しい自動車取得税など、8種類の税金で構成されている。
こうした税金がつくられるまでの日本の道路は、ボロボロだった。昭和30年代前半では、国道でさえ80%以上が舗装されず、いたるところ穴だらけで、雨が降ればぬかるみが続いていた。暮らしやすく、豊かな日本にするために道路整備を急がなくてはならないということになっても、肝心のオカネがない。そこでつくられたのが、通行料金を徴収する有料道路制度と特定財源だった。
安定した予算を確保することができ、計画的な道路ネットワークの整備が本格的に始まった。東名高速道路(昭和44年に一部開通)などの有料道路や国道などの幹線道路が建設され、暮らしに密着した生活道路も整備されていったのだ。
欧米でも採用されているフェアな税金
道路特定財源は、今年度約5兆7750億円の税収が見込まれている。日本の世帯数は約5000万世帯なので、単純計算では1世帯当たり年間11万7000円の負担になる。ただ大都会と地方都市では、自動車の利用頻度や走行距離が違う。例えば1世帯当たりの自動車保有台数・年間走行距離は、東京都区部が0.50台・3万4089km、兵庫県豊岡市は1.53台・1万6425kmで、負担額は約3万4000円と12万2000円となる。
自動車を多く使えば、それに比例して納める税金も多くなるこの制度の仕組みは、たいへんフェアなものであり、「受益者負担」の原則に合致していることから、欧米でも幅広く採用されている。
全国で納入された特定財源の税金は法律で決められた配分によって、国と地方(都道府県と市町村)の予算に組み込まれる。平成18年度では、国に3兆5429億円、残りの約2兆2321億円が地方に配分される予定である。
今話題の「一般財源化」ってどういうこと?
道路が無くては暮らせない
一般財源化とは、この8種類の税金(またはその一部)を、道路以外にも使えるようにしようということだ。政府と自民党は、昨年12月に「一般財源化を図ることを前提とし」「理解を得つつ具体案を得る」という基本方針を決めている。
ご存じのように、現在国の財政は大赤字で、借金もたくさんある。その一方で少子・高齢化が進み、政府はオカネさえあればやりたいことがたくさんある。そこで狙われたのが、道路特定財源というわけだ。
「道路のための税金」を、その時代の都合で安易に変えてしまうことは、約束違反。それを知った上で、一般財源化に賛成する主張にはいろいろな意見があるが、主なものは、1.全国の道路は整備されたので、役目は終わった。2.財源が確保されていると、アクアラインや過疎地の高速道路など無駄な道路をつくりやすい。3.特定財源は余っている、などなど。
道路特定財源って余っているの?
余剰というよりシーリングからはみ出したオカネ
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有料道路を除く道路事業の道路投資額 (06年度)
地方の財源は国よりも少ないが、投資額は国よりも多い。国の道路整備は道路特定財源ですべて賄われているが、地方自治体が行う道路整備については、道路特定財源のほかに多額の一般財源を投入し、その費用をまかなっている。
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日本の財政は赤字続きで、収入と支出のバランスをとるために、公共事業予算に上限を設けている(シーリング)。道路事業も例外ではないこの制度では、どのような理由があっても一定の上限を超えることは許されない。
しかしながら、道路特定財源は先に述べたように自動車や石油に関する税収なので、毎年それほど増減もなく安定している。この安定が道路の長期計画を実行可能にしていた。しかし、シーリングが低くなるとその分見かけ上の余剰分が発生してしまう(平成18年度で6563億円)。道路の新設やメンテナンスなど、やらなくてはいけないことがいろいろあって、しかも安定した収入があるにもかかわらず、見かけ上の「作られた余剰」によって道路特定財源が一般財源化されようとしているのだ。
シーリングは財政支出を抑えるには有効な方法かもしれないが、必要な事業と不要な事業を選別しないため、歪みが生まれる。
限られた大切な国の予算を、どのようにして使ったらベストなのか、もっともっと議論が必要だ。
本当に道路は必要ないのか
今、日本には7000万台の自動車が走っており、日々の生活には自動車は欠かせないものとなっている。これまでは道路を作れば地域は発展し、すべてがよくなるだろうという神話のもとに道路整備が推進されてきた。しかし社会ニーズが変化し、道路だけで経済成長がもたらされるわけではないといわれている現在、余分な道路は要らない、という批判は甘んじて受ける必要があろう。しかし、だからといって道路はもう必要ないと片付けてしまうのは乱暴だ。
今一度、都市部、地方の道路ニーズをふまえ「道路特定財源一般化」の善しあしの判断をする必要があるようだ。
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杉山雅洋(すぎやま まさひろ)教授
早稲田大学大学院商学研究科 商学博士
交通経済学の研究に長く携わる。日本交通学会、理事。
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ホントのところどうなんですか?
早稲田大学教授・杉山雅洋氏
車がスムーズに安全に走るためには、道路整備は必要です。また近い将来、どのような技術革新があろうと、ドアトゥードアのモビリティーを完結させうるのは道路しかないと思います。道路は社会の重要なインフラであり、日本の道路はまだまだ整備が必要です。
「無駄な道路が多すぎる」という意見がありますが、批判の中心点は採算がとれないということでしょう。しかし道路は、採算だけで評価されるべきではないと思います。また歩道の整備や開かずの踏切対策など、安全で安心して暮らすための道路整備も、ガソリン税などがまかなっていることを忘れないようにすべきです。
道路財源になっている税金は、自動車を取得、保有、走行する際に納入する仕組みになっており、受益者負担の原則が貫かれています。つまり大変公平な制度です。税金となっていますが、実態は道路サービスを受ける者の利用者料金であり、市場の論理にも適合していて、安倍首相が受け継ぐことを表明している小泉改革の考えにも一致しているのです。
道路特定財源を一般財源にしようという意見は、昭和40年代からたびたび浮上しています。ただ今回は、プライマリー・バランス(国の財政収支)を改善するために制度を変え、自動車ユーザーだけに負担を求めようとしているわけです。私は、国民に負担を求めるのであれば消費税の税率を上げるべきだという意見です。
アメリカやドイツにも、日本の道路財源と同じような仕組みがあり、道路や公共交通の整備予算をまかなっています。日本ではまだ建設しなければならない道路が数多くあるだけでなく、今後は補修などの費用も増大します。目の前の利害に惑わされることなく、長期的な視野で、正しい判断がされることを願っています。
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税金の無駄遣いを無くすように努力することは絶対必要だが、安易に道路特定財源を一般財源化すると、道路が必要とされている地域の現状に対応できなくなる恐れがある。最近は無駄な道路建設の報道を目にすることが多いため、道路整備は悪の温床、というネガティブイメージばかりが先行しているが、道路本来の重要性をもう一度考えるべきなのだ。
では、生活者に本当に必要とされる道路とは、どんなものがあるだろう。ひとくちに地域の現状といっても、場所によって事情はさまざまであるし、電車の便利な東京にいると、切実な状況が実感できないのも事実。都会と田舎、双方の道路整備需要を調べるため、編集部は取材を敢行することにした。我々が選んだ土地は兵庫県。兵庫県は、神戸を中心とした都会地区がある一方で、日本海に面した温泉街などの過疎地区も持つ、両極混在の土地だからだ。
実際に車を走らせることで道路の状況を調べ、そこに暮らす人々の生の声を聞きたい。本当に必要とされている道路とはなにかを探るため、次号は兵庫県の道路整備の現状と対策についてレポートする!!
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