
vol.285
INTERVIEW
塚本晋也演出 舞台「哀しい予感」で主演
市川実日子
ドラマやスクリーンのフレッシュな演技が印象的な、女優・市川実日子が期待で胸をワクワクさせている。年明け1月5日に幕を開ける舞台「哀しい予感」に主演、約3年ぶりに舞台に立つ。演出は、映画監督の塚本晋也氏。市川は「自分の人生においてひっかかる、記憶に強く残る作品になりそう」とさわやかに燃えている。
“この作品には、あまり見たことのない自分の力が必要な気がするんですよね”
第一印象は笑顔が素敵。テレビやスクリーンなどで、どこかブスッとした表情であまり感情表現が上手くない女の子を演じている印象が強い市川実日子だが、インタビューを受ける彼女は、考え込んだり顔をクシャッとさせたり、体をねじるようにしてカラカラと笑ったりと表情豊か。笑い声も笑う顔もとてもチャーミングな人だ。
インタビュー当日は、来年1月5日に初日を迎える主演舞台『哀しい予感』の初めての稽古だった。市川にとって3年ぶりの舞台。よしもとばななの原作を、『ヴィタール』や『悪夢探偵』の塚本晋也が演出するということで、注目もされている。この日は、取材も含め稽古場に朝10時から夜7時までこもった。
「セリフや言葉が何を意味しているのか分からなくても気持ちは伝わる、歌手がライブで気持ちよく歌う感じで演じてほしいと、最初の本読みで塚本さんに言われたんですよ。その時はおっしゃってる意味がよく分からなかったんですけど、今日の稽古でなんとなく見えてきた感じがします」
いわゆる中流家庭で幸せな生活を送っている少女・弥生が、おばを訪ねたことで、誰からも知らされていなかった自分の過去や失われていた子供のころの記憶と向き合っていくというストーリー。ドラマティックな出来事はいくつも用意されているが、劇的というよりは淡々と過ぎていく。
「初めて原作を読んだのは中学生のころだったと思います。同じころに『TSUGUMI』や『キッチン』も読みました。それで、今回舞台のお話をいただいて、『哀しい予感』は原マスミさんのカバーは覚えていたんですけど、ずいぶん前のことなのでストーリーがちゃんと思い出せなくて…。あらためてもう一度読み返してみました。そしたら、自分が弥生をやるんだと思いながら読んでいたせいか、5行ぐらい読んだところで泣いてしまって」
明るい笑顔で語る市川だが、しばらくの間は、緊張に押しつぶされそうなときもあったという。
「初顔合わせが9月だったんですけど、その時にすごく緊張したんですよ。その緊張がその後も続いて、『どうしよう、私大丈夫かな』と毎日毎日思ってきました。他の事をしていても、ずっと舞台のことが頭にあって緊張がとれない時期が1カ月ぐらい続きました。でも、さすがにそれは良くないなと思って11月は一切考えるのをやめたんですよ(笑)。そしたらずいぶん楽になりました」
資料によれば、塚本は「初版のハードカバーを何度も読んで、完璧に作品に惚れてしまい」、いつか映像化したいと思っていたという。塚本が愛を注ぐ作品だけに、期待も大きいのだろう。
「そういうプレッシャーというのはあまりない人ですけど、でも、ここ1カ月考えることを辞めていましたし(笑)。こうなるんじゃないかとか自分だけでどんなに考えても、稽古が始まらなければ分からないこともありますし、稽古に入れば変わることもありますから。今日も、作品や脚本から感じる光が塚本さんと私では微妙に違っているのが分かったんです。私は昼間の光をイメージしていたのに、塚本さんは夜の時間帯にビカッとひかる光だという具合で。気持ちの高さが違うんです。塚本さんの演出は、人を思う気持ちを前に出されていく感じとでも言ったらいいんでしょうか。どんなふうに出来上がっていくのか楽しみですね」
初日まで1カ月を切った。今年はクリスマスもお正月も返上で『哀しい予感』に専念する。
「私、全部が終わったとき、2カ月後が楽しみなんですよ。いずれにしろ公演は終了していて、自分が何かを見た、何かを知った後だと思うので。どうなっているのかなあと。この作品は、今まで見たことない自分の力が必要な気がしているんです。もちろん私も頑張るんですけど、塚本さんや共演者の方がいて、今まで自分が知らなかった何かを引き出してくれるんじゃないかなと。この作品は、私の人生において、記憶に強く残る特別なものになるという予感はしています」
舞台『哀しい予感』で成長の予感? 公演は1月5日から本多劇場で。

(本紙・酒井紫野)
| 市川実日子(いちかわ・みかこ)1978年6月13日、東京生まれ。10代から雑誌「Olive」の専属モデルとして活躍。00年に『タイムレスメロディ』で女優としてデビュー。出演作には、映画『キューティーハニー』、映画『いま、会いにゆきます』、映画『嫌われ松子の一生』。ドラマも『すいか』、『喰いタン』などに出演している。今後の公開される映画作品には『世界はときどき美しい』、『ユメ十夜〜第5夜』、『吉祥天女』がある。
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梅田芸術劇場
映画監督舞台演出シリーズ第2弾
『哀しい予感』
原作:よしもとばなな 演出:塚本晋也 出演:市川実日子、加瀬亮、藤井かほり、奥村知史 他
【公演日】1月5日(金)〜21日(日)※9日(火)、15日(月)は休演【会場】本多劇場【料金】7800円(税込)【問い合わせ】梅田芸術劇場 06-6377-3888【URL】http://www.umegei.com/s2007/yokan.html
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