

vol.290
TOKYO CULTURE EXTRA
舞台の醍醐味はそのライブ感にある。役者のコンディション、お客のノリ…一度として同じ瞬間には立ち会えない。舞台上と客席が一体となって素晴らしい劇空間が出来上がるときもあれば、ちょっとしたコンディションの狂いで思うようなパフォーマンスができない場合もある。その刹那感とドキドキ感がたまらない。そんな刺激を僕たちに与えてくれる舞台は麻薬、そして観客は目撃者。ちょっと気になる舞台をHEADLINE編集部得意の独断と偏見でピックアップした。ま、何かの参考までに。
舞台は麻薬、観客は目撃者
今、劇場がおもしろい
古く、演劇は体制に反する若者の表現の手段として存在した時代があった。世間の“まっとうな”人たちから疎ましく見られていた時代もあった。そんな時代を経て、今ではエンターテインメントの1ジャンルとして立派に確立しているようだ。良質なデートスポットとしても…。そんななかでいろんな意味で危険なムードを漂わせる劇団もなかにはある。三浦大輔率いるポツドールという演劇ユニットはまさにそう。かつて「セミドキュメント」といわれるスタイルで、多くの称賛と同時に非難と罵声も浴びた。しかし昨年、正直みんなが驚いた、いや本人が一番驚いた、演劇界の芥川賞と呼ばれる岸田國士戯曲賞を受賞。世間がやっとポツドールに追いついた。
ポツドール『激情』 主宰・三浦大輔インタビュー
ドキュメンタリーからリアリティーのある虚構へ
ひとまず「セミドキュメント」に触れておこう。2000年に上演された『騎士クラブ』から2002年の『熱帯ビデオ』までの再演を含む5公演で用いられた手法で、演劇的なものを排除し、「リアル」を徹底的に追求したもの。取り扱うテーマがエロ・グロ・アウトローだったものだからドキュメンタリーとして提示されるものは壮絶な内容であった。全てのステージの中身が違うという公演もあったという。
「ポツドールを立ち上げたころは割と普通のことをしていたんです。でも途中で、大きな声を出したり、派手な照明効果を使ったり音楽ガンガン流したり、そういう演劇的な手法が恥ずかしくなっちゃったんですよね。それでどんどんそぎ落として突き詰めていったらドキュメンタリーになっちゃったんです。じゃあ演技しなくていいんじゃないか、演技しない状態が一番面白いんじゃないかと考え出したのが『騎士クラブ』以降の時期ですね」
2001年の『身体検査』では一気に「完全ドキュメント」へ。
「身体検査から3本は脚本がないんです。稽古らしい稽古もしない。その代わり舞台に上がったときにその場を面白くできる訓練のようなことをするんです。これはエチュードとも違います。1回やったことをやったのではドキュメンタリーにならないので」
セミドキュメントの時期を経ても、三浦の試みは続く。2004年の『ANIMAL』では1時間の上演時間中、大音響で音楽が鳴りっぱなし。台詞なんて聞こえやしない。昨年の『夢の城』では戯曲賞受賞後第一作でありながら無言劇。戯曲賞作家の作品を期待して足を運んだ観客をあ然とさせた。
「ボクの中にもいろいろな危惧はあって…一応、順番にやっているつもりではあるんです。『夢の城』で“これはいかん。客がついてきてない”と思いまして(笑)。次の作品の『恋の渦』ではエンターテイメントを意識してつくったり。実験的なことの後には少し一般的な手法に戻そうかなと。そういう気配りはしてて(笑)。まあ、あとは実験的なことにちょっと飽きてきた部分もあるんですけどね。やり尽くしたというか。最近はシフトチェンジを徐々にしていこうかと思ってます。もう少し幅広く、間口を広げてみようかと(笑)。もちろんポツドールらしさ、色を消してしまっては意味がないので、それを消さずにという意味ですけど」
これだけやると批判されちゃうなという予感もあるだろう。
「やりすぎてるなという自覚はないんです。自分的にはエンターテイメントだと思って作っているんで、批判覚悟というスタンスではないんですよ。でも初日明けて“えらいことしちゃったんだなー”ということはあります(笑)。『夢の城』なんて、絶対大丈夫だろうと思っていたんですけど、大丈夫じゃなかった。岸田賞直後ということで注目されてましたから、結構いろんな批判を浴びましたよ」
ポツドールの舞台は観客側も能動的でなければ多分面白さは伝わらない。ちょっとばかりお客に不親切なところがあるかもしれない。もっともお客に親切な芝居が面白いわけじゃない。
「お客に不親切にしているつもりはないんですが、自分が芝居を観て面白いと思うところは多分他の人とちょっと違ってて、そこを突き詰めすぎるとお客さんが不親切に感じてしまうんでしょうね。賛否両論の意見が飛び交うときなんて、なんでそんなに怒っているのかなと正直思います。まあ、それがいいこととは思わないですけど」
最近の作品では「セミドキュメント」での経験を生かし、「リアリティーのある虚構」というフレーズに片足を置く。そんなわけだから岸田戯曲賞の受賞もある意味納得。そして今回『激情』の再演で本多劇場へ進出。毛皮族の看板女優の町田マリーが客演することでも大きな話題を呼んでいる。
「初演ではまだまだできること、やり残したことがたくさんあって悔しい思いの残っていた作品なんで、本多劇場でその点がうまくできればとは思います」
ポツドールの舞台には、エロ、暴力、覗き見といったような生々しい人間の本質的なものが詰まっている。目を背けるための理由がごろごろ転がっている。しかしこの『激情』もそうだが、昨年11月に上演しTHEATRE/TOPSを連日超満員の観客で埋めた『恋の渦』などは会話劇としても十分成り立っているわけで、エログロというキャッチコピーだけで敬遠するのはいかがなものかと思う。予定調和の段取り芝居とか優等生的な演劇を見飽きた人は見に行くがいいさ。

(本紙・本吉英人)
| 「激情」…男女間でいくら信頼関係を築こうとも、人は絶対に裏切る。しかもどうということのないきっかけで――。2004年、下北沢の駅前劇場で初演。“裏切り”をテーマに閉ざされた田舎町で繰り広げられるどうしようもなく虚しい愛憎劇。2004年秋にはフジテレビ系「劇団演技者。」(主演:森田剛)でテレビドラマ化。【日時】3月4日(日) 〜11日(日) (開演は4日19時、5〜9日19時30分、土日14時30分/19時、11日17時。開場は開演30分前)【会場】本多劇場(下北沢) 【料金】全席指定 前売3900円、当日4400円。当日券は開演60分前から発売。1月21日(日)からチケット発売中。【問い合わせ】ポツドール(TEL 080-5487-3866 [HP] http://www.potudo-ru.com/)【脚本・演出】三浦大輔【出演】安藤玉恵、米村亮太朗、町田マリー(毛皮族)、古澤裕介、小林康浩、脇坂圭一郎、玄覺悠子、井上幸太郎、仗桐安(RONNIEROCKET)、鷲尾英彰、美館智範、河西裕介 他
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話題のロックミュージカルで劇場が近くなる!
ここ数年で上演作品の数がグッと増えているのが、ロックミュージカルと呼ばれるミュージカルだ。国産、外国産、さまざまな国籍の作品が一気に日本の劇場に流れ込み、愛されている。
ロックミュージカルが人気を集めているのは、ストーリーや演出の素晴らしさはいうまでもないが、いろいろな楽しみ方ができるから。ギター、ベース、ドラムといったミニマムな構成での迫力たっぷり生演奏で舞台はさらにヒートアップ、それが知っている曲なら否応なくエキサイトしてしまう。いい例が、クイーンの名曲で綴られる『WE WILL ROCK YOU』。テンションを挙げた観客が2度、3度と劇場に足を運んだ。今年、公演される中川晃教主演のTHE WHO'S『TOMMY』も同様で、ピート・タウンゼントのように腕を大回転させる観客もいるかもしれない。
話をロックミュージカルの魅力に戻すと、より音楽を中心に据え、セリフが比較的抑えめなこともある。ミュージカルの「いきなり歌いだすときに違和感」が苦手という人がいるが、それがロックミュージカルでは限りなく少ない。今年、山本耕史主演で上演される『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、興味をひきやすいストーリーもさることながら、セリフと歌が一体化している。
日本でも広く浸透したロックミュージカル。2007年は完全に定着する年になりそう。まだ未体験の方は一度は見ておくことをオススメする。
| ロック・ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ツアーファイナル公演【日程】4月7日(土)、8日(日)【会場】東京厚生年金会館【料金】S7500円、A6000円(税込)※1月28日(日)チケット発売【問い合わせ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 【URL】http://www.hedwig.jp/
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| ロック★オペラ THE WHO'S『TOMMY』
【日程】3月12日(月)〜31日(土)※19日と26日は休演【会場】日生劇場【料金】S1万2000円、A9000円(税込)【問い合わせ】キョードー東京 03-3498-9999【URL】http://www.kyodotokyo.com
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現地の熱気をそのままにブロードウェイ作品上陸
日本版の上演が予定されているロック・ミュージカルの名作たちだが、外国人キャストによるブロードウェイのそのままの雰囲気を感じられる作品も目白押しだ。
まもなく公演がスタートする『CHICAGO』はミュージカルの代名詞的な作品。日本公演では元バックストリート・ボーイズのケヴィン・リチャードソンが弁護士役で出演することが決定している。
| ブロードウェイミュージカル シカゴ
【日程】2月8日(木)〜3月4日(日)※13日、19日、20日、26日、27日は休演【会場】日生劇場【料金】S1万3000円、A1万1000円、B9000円(税込)【問い合わせ】キョードー東京 03-3498-6666【URL】 http://www.chicago2007.jp/
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ダンスで盛り上がれ!
パフォーミングアーツでは、パッションあふれるアクトが話題を集めることは間違いなさそうだ。 おじさんもおばさんも芸能人も夢中になって楽しめる『フロアプレイ』はいかが? カップルダンスの魅力が詰まった作品で、サルサやスウィング、ジルバ、ルンバ、タンゴなどを迫力たっぷりに見せてくれる。また、圧倒的なパフォーマンスで日本にも多くのファンを持つ、アントニオ・ガデス舞踏団のフラメンコも見逃せない。
| 『フロアプレイ』【日程】3月20日(火)〜30日(金)※26日は休演【会場】Bunkamuraオーチャードホール 【料金】S1万1500円、A9500円、B7500円(税込)※4歳未満入場不可。【問い合わせ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337【URL】http://ktv.jp/fp/
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| アントニオ・ガデス舞踊団【日程】カルメン:2月24日(土)、3月9日(金)、10日(土)、11日(日)、17日(土)血の婚礼/フラメンコ組曲:2月25日(日)、3月6日(火)、7日(水)、13日(火)、14日(水)【会場】Bunkamura オーチャードホール【料金】S1万2000円 A1万円 B8000円 C6000円 D4000円(税込)【問い合わせ】ジャパン・アーツぴあ 03-5237-7711【URL】http://www.japanarts.co.jp/html/antonio_gades/
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今年活躍が期待される人々
かな〜り独断と偏見にはなってしまうのだが、今年気になる、もしくはみんなに見てほしい役者とか劇団をピックアップしてみた。
まずは役者から。ヘッドライン編集部的には毎年、今年は今年はと言い続けていた『猫のホテル』の池田鉄洋を押したい。ただいまフジテレビ系で火曜の夜10時から放送中のドラマ『秘密の花園』出演中。4月には猫のホテルの本公演『苦労人』(三軒茶屋・シアタートラム)が控える。『劇団鹿殺し』のオレノグラフィティも気になる。本公演での派手な動きと対照的に客演先での抑えた演技も印象的。
いまさらここに挙げるまでもないが、今年舞台での活躍が期待されるのが、森山未來とソニン。もともとステージパフォーマンス出身の森山はドラマなどで活躍する一方で、舞台では華麗な動きで観客を圧倒し続けている。苦労人の印象も強いソニンは、ドラマ『高校教師』(03)に始まり、舞台『8人の女たち』(04)や映画『空中庭園』(05)、現在は宮本亜門演出のミュージカル『スウィニートッド』と演技や舞台に活動の重点を移している。2人は、5月に東京グローブ座で行われる『血の婚礼』(白井晃台本・演出)に出演する。
劇団では『イキウメ』という名前を覚えておいてほしい。作・演の前川知大の取り上げる題材はオカルトチックなものが多いのだが、見終わった後、ごく自然に“ありうること”として認識させられるほどに、巧妙にそしてぐいぐいとストーリーに引きずり込まれる。新宿御苑前にあるサンモールスタジオをホームグラウンドに公演を続けてきたが、同所での公演はすでにチケットが入手困難な状態。3月には『狂想のユニオン』で吉祥寺シアターに進出。
『黒色綺譚カナリア派』の主宰・赤澤ムックの紡ぎ上げる切なげで残酷な世界は、「耽美」という言葉ではくくれない。女優としても今年は積極的に活動してくれそう。2月8〜13日にザムザ阿佐谷で『繭文〜放蕩ノ吊ラレ作家〜』を上演。
ちょっと変わったところで『ハイバイ』という劇団もあげておきたい。つまらないコントを「シュール」という便利な言葉でごまかしてしまう風潮というかそういう人たちに見てほしい劇団。前回公演では本公演の前に「プレビュー公演」を行って観客の意見を取り入れるという手法を取った。作品の完成度を高めるためのアイデアで、大きな効果があった。
常に安定して良質な作品を発し続ける『ONEOR8』。主宰の田村孝裕は昨年は本公演の合間に多くの作・演をこなした。「日常を描く芝居」と類される劇団の中でも飛びぬけた存在。今年は本公演は秋までお預けなのだが、5月に『ONEOR8プロデュース』として劇団の男優陣による『コルトガバメンツ』を上演。
そして現在早稲田大学の演劇研究会でただひとつのアンサンブルである北京蝶々。昨秋の公演『物々交換』では直前の早稲田祭で実際に物々交換マーケットを開いてみるなど、その独自の発想に今後も注目したい。
劇場によるさまざまな企画公演も面白い。「各地のカンパニーが当たり前のように東京公演をできる環境作り」を目的として開催されるこまばアゴラ劇場の「冬のサミット2006」はその目的の通り日本中の劇団を東京にいながら観劇できる。今年は3月11日まで。
『佐藤佐吉演劇祭』、作家にスポットを当てた『王子トリビュート』など一風変わった視点を持つ王子小劇場、秋の名物企画ともいえる三鷹市芸術文化センターの『MITAKA“Next”Selection』では常に良質の作品を見せてもらっている。
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