
vol.292
INTERVIEW
『死ぬまでにしたい10のこと』の監督&女優タッグが贈る、心の再生の物語―”
『あなたになら言える秘密のこと』
サラ・ポーリー
人は、また人を信じたり愛したりできるようになるだと分かった
ゴージャスなブロンドに知的な瞳。カナダの女優サラ・ポーリーといえば、ハリウッドを敬遠する知性派にして個性派な俳優としても知られるが、良質なミニシアター作品が好きな人たちにとっては、とても評価の高い人気の女優だ。オードリー・ウェルズ監督の『写真家の女たち』や、アトム・エゴヤン監督の『スイート・ヒア・アフター』などで、見事に難役をこなしてきた。そんなサラの代表作の1つが、イサベル・コイシェ監督作『死ぬまでにしたい10のこと』。死期が間近に迫った女性の姿を追った本作は、日本でも大ヒットを記録した。
「実は、そのときに監督から“あなたのために作りたい映画があるの”と聞かされていたの。こんなにすぐに一緒に仕事ができるなんて思ってもいなかったからとてもうれしかった。2度目となると、さすがに言葉が要らなくなってきて。監督の手振りで“ああ、そういうことね”みたいな(笑)。日ごろは2人ともとてもおしゃべりなんだけど、現場ではほとんど話す必要がなかったもの」
本作はサラが再びコイシェ監督と組み、新たに描く“魂の再生”の物語。今回、サラが演じる主人公ハンナは、悲しい過去を持つせいで人と打ち解けようとせずに日々を生きる女性だ。
「“あること”が起こるまで、彼女は本当に生きることを謳歌していた人間だった。でもそんな人生が、ある日ガンと押さえつけられて粉々にされてしまったの。演じるにあたって、彼女は、もともとは生きることを楽しんでいた女性なんだという位置から始めたわ」
ハンナは海に浮かぶ油田採掘所で、怪我人のジョセフを看病する仕事に就く。その患者というのが『ミスティック・リバー』のティム・ロビンス演じるジョセフだ。
「ティムはもちろん素晴らしい俳優。彼がいなかったらあんなふうにはできなかったと思う。普段の彼はとてもファニーな人よ。物事を斜めに見ているところが勉強になったわ…エッジはなかったけど(笑)」
彼は怪我で視力を失っているためハンナにいくつもの質問をする。名前は? 結婚は? 好きな食べ物は…? しかしハンナは自分のことを知られることを異常なまでに嫌うのだ。
「結局、ハンナは囚われてしまった人なんだと思う。そういうふうに生きることで、自分を解放してしまうと危ない、嫌な目に遭う気がするという不安から逃れようとしているのね。だから小さくなって生きていくことしかできない女性なの」
食べ物の味を楽しむことすらできなくなったハンナには、誰にもいえない悲劇的な過去がある。サラはそんな背景に向き合い、ハンナを演じていった。
「こういう役の場合は、とても責任が大きいと思う。だからハンナと同じような悲劇を体験した人や専門家に会って話を聞いたり、関係する本を何冊も読んだ。結局、そうすることしかできないから」
『死ぬまでにしたい10のこと』では、死を目前にした女性の人生の再発見が描かれた。本作で描かれるのは、ヒロインの壊れた心が再生していく姿だ。
「私がイザベルがすごい監督だと思うのは、本当につらい話を描いていても、見た人に“人生ってそんなに捨てたものじゃない”と思わせてくれる…そんな部分があるということなの。そこを皆さんにも、ぜひ気づいてもらいたいと思うわ」
日本でも『アボンリーへの道』などで知っている人も多いはずだが、もとは子役として注目を集めたサラ。しかし女優を続けるつもりはなかったのだとか。
「作家になろうとか思っていたわ(笑)。でも18歳ぐらいのときに、映画というものが思いもよらず、すごい力を持っていて奥深いものだと気づかされた。『スイート・ヒア・アフター』のときよ。自分が言ったことに、人が耳を傾けてくれるという経験を始めてしたの。それがやはり、女優をしようと意識する大きなきっかけになったと思う。ここ2、3年、ようやく自分もこの仕事を続けてきてとても幸せだって思えるようになった(笑)。でも俳優も監督も経験して、主観的なことを語れるチャンスがあるのは、俳優よりもやはり監督の仕事だなと感じるようになってるけれど」
前作でも多くの女性の共感を呼び、心を癒してくれたサラとコイシェ監督。
「ハンナを演じてみて、やっぱり人間のキャパシティーってすごいんだなと思った。つらい体験をしても、生き抜くだけじゃなくて、また人を信じられるようになるとか、人を愛せるようになる…そういうことがちゃんとできるようになっていくんだなって。できることなら、多くの人がそうであってほしい」
サラと監督の再タッグ作は、切なくも優しい祈りに満ちた作品となった。

(本紙・秋吉布由子)
| サラの“癒し”のコツは、と尋ねると「友達と話すことかな。でも悩むときって、必ず理由があるはずだから、そこから目をそむけないで、自分を信じて直視してみるということしかないように思うわ」。ティーンのころから政治や平和運動にも強い関心を抱いてきたサラらしい、力強い励ましの言葉だ
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