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vol.294
(2007.02/19-02/25)
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写真:加藤大毅
MOVIE vol.294

INTERVIEW
黒沢清がかつてない“恐怖”を描く! 

映画『叫(さけび)』
役所広司

『CURE キュア』『カリスマ』『ドッペルゲンガー』…世界の映画人からも絶賛される黒沢清監督作品の数々。それらの作品で主演を務め、独特な黒沢世界を表現する、まさに黒沢組に欠かせない俳優といえばこの人、役所広司だ。新作『叫(さけび)』は、これが監督と7度目のタッグとなる。ある意味、誰よりも黒沢作品に魅了された俳優・役所広司が、その魅力を語る!

恐怖映画を見て“おお!”って怖がる自分が、またおかしいんですよね(笑)

『CURE キュア』より10年に渡って“黒沢ワールド”で表現し続けた役所広司だが、本作は彼の目から見てもかつてない黒沢作品になったという。

「黒沢監督の作品は以前からホラーというジャンルに入れられることが多かったんです。監督ご自身は、自分はホラー作家ではない、と言っていたんですけどね。ところが今度は“恐怖映画”を作る、というところからスタートしているんですよ。だから、葉月里緒奈さんが演じる幽霊も登場するんですけど…」

 役所演じる刑事・吉岡は、担当する殺人事件を追ううちに、自分が罪を犯しその記憶を封じてしまったかのような感覚にとらわれていく。しだいに精神的に追い詰められている吉岡は、ついに不気味な幽霊の叫びを聞いてしまう―。これまでの黒沢作品にも“幽霊”という存在は登場したが、それは決して“恐怖”を表現するためだけの存在ではなかった。しかし本作では、主人公は圧倒的な恐怖と遭遇してしまう。

「これまでの作品は心理的な怖さが強かったですけど、今回は幽霊の出方があからさまになりましたよね(笑)。でも、黒沢さんの映画というのは“出てくる”前とか気配のとらえ方が、カメラワークとして怖いんですよ。ただ、僕たちは現場で働いている人間だから、その場ではどうなるのかが分からないんです。なので後から見てすごくびっくりしたりすることがよくありますよ。今回も、葉月さんの“叫び”がどういう恐怖感を出すのか、現場ではまったく分からなかったですからね。実は、監督によく“どれくらいおびえればいいんですか”って尋ねたりしていたんですけど、監督は“普通におびえてください”って(笑)」

 そもそも“怖い映画”は好き?

「実は僕、普通に恐怖映画を見ていても笑ってしまったりするんですよ。清水崇さんの作品とかでも驚いて“おおっ”とかおびえながら、つい笑っちゃうんです(笑)。で、怖がっている自分がまたおかしくて。実は怖い映画の撮影現場って、けっこう笑いが絶えないんですよ。壁から出た幽霊なら壁から帰れよ!とか、みんなで言い合ってたりするんです(笑)」

 黒沢組に欠かせない俳優となった役所にとって、黒沢作品で演じる楽しさとは。

「黒沢作品に出演する楽しみはね、脚本を読むと“これはどんな映画になるんだろう”と考えさせられるので、そこを自分なりに考えて埋めていく、ということですね。台本に書かれていないことを自分なりに埋めていくというその作業が、とても面白いんですよ。大変といえば大変だけど、面白い。同時に、それは黒沢作品を演じるにあたって、大事なことでもあると思います」

 長年タッグを組んできた2人。ちなみにプライベートではどんな付き合いを?

「実は、監督と仕事抜きで会ったことがないんですよ(笑)。現場ではいろいろおしゃべりもしますけどね。でも監督は撮影中は絶えず何かを思考している人なので、あまりお邪魔しないようにしてます(笑)」

 現在、アメリカアカデミー賞で大注目されているのが、ブラッド・ピットとともに役所が出演する『バベル』。役所は助演女優賞ノミネートの菊地凛子の父親役。

「アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥという素晴らしい監督のもとで仕事ができたということがまず、うれしかったですね。この壮大な話がどういうふうに映画になるんだろうと、一観客として楽しみでした」

 もはや海外でも注目される日本人俳優の1人だが、今後は。

「まあ、外国の映画でも興味がわけば出演したいなとは思うんですけど、実は積極的に出たいというわけでもないんですよね…。海外作品に参加すると、すごく時間がかかりますし(笑)」

 最後に、読者にメッセージを!

「黒沢監督の作品というのは、誰もが持っている闇のような部分を、ずるずると引き出してしまうようなところがある。今回の作品では、忘れられたり、見捨てられた海や死者の恨み、復讐、悲しみ、叫びが描かれていくので、その部分の恐怖を味わってみてください。あるいは、笑ってもいいと思うし…多分(笑)」



(本紙・秋吉布由子)

『叫(さけび)』
監督・脚本:黒沢清 出演:役所広司、小西真奈美、伊原剛志、葉月里緒奈、オダギリジョー他 ザナドゥー、エイベックス・エンタテインメント、ファントム・フィルム配給/1時間44分/2月24日よりシネセゾン渋谷他にてロードショー公開 http://www.sakebi.jp/


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