
vol.298
東証が日興の上場維持決定 疑問残る判断
東京証券取引所は12日、利益水増しが発覚し、上場廃止の可能性がある「監理ポスト」に割り当てていた日興コーディアルグループの株式について、上場を維持すると発表した。会見した東証の西室泰三社長は、日興コーデの不正会計について「組織的、意図的に行われたとまではいえない」と指摘。不祥事で上場廃止となった西武鉄道やカネボウなど過去の事例とは異なると説明した。
大阪と名古屋の両証券取引所も同様の措置を取ることを決めた。 東証は、日興コーデが提出した平成17年3月期と18年3月期の有価証券報告書の訂正報告書を調べたほか、日興関係者への聞き取り調査を実施。東証の上場廃止基準である「有価証券報告書などに虚偽記載を行った場合でその影響が重大」とのルールに照らし合わせた結果、「上場廃止相当とみられるまでには至っていない」(西室社長)と結論づけた。
「疑わしきは罰せず」
組織ぐるみの不正関与を明らかにできなかったのが上場廃止見送りの最大の理由だが、金融庁が5億円の課徴金を課した不正会計がなぜ上場基準に抵触しなかったのか。東証の判断は疑問を残した。日興コーデは米大手金融グループのシティグループ傘下入りで合意しており、外資による完全子会社化の回避や証券市場の安定を優先したなどの思惑が見え隠れする。
今回の東証の判断は、政府・与党内の“外資アレルギー”に配慮したとの見方もある。米シティは日興コーデに対し、株式公開買い付け(TOB)で最大で全株取得する意向も示していた。このため、「日興コーデの上場を維持させることで、シティの完全子会社になるのを避けたのではないか」(中堅証券会社幹部)という。
東証は米国など海外の証券取引所と相次いで提携し、透明性を高めることで外国企業の上場を呼び込むなど国際化を進めている。東証の西室社長は政府など外部からの圧力は一切なかったと否定しているが、今回の上場維持決定が今後の東証の信頼性や国際化に影を落とす事態は否めない。
シティが1株1700円でTOB
シティグループは14日、日興コーディアルグループに対するTOBを実施すると発表。日興コーデ株の50%超取得が目標で、TOBが成功すれば日興コーデを子会社化する。また、TOB開始に向けて日興コーデは、不正会計の舞台になった子会社が一部投資先から資金回収を検討していることも明らかにした。買い付け価格は日興コーデの1株当たり1700円で、TOB期間は4月26日まで。日興コーデ株の上場廃止を見込んで、TOB価格を1350円としたが、東京証券取引所が上場維持を決めたのを受けて引き上げた。